第2話 母親の言ったことが嘘だと思いたい
「八坂さんの二人もここに住んでもらうことにしたから。」
「は?はぁぁぁあ!?」
母親がほざいているのを気にしないということができずにまた叫んでしまった。
八坂さんの二人、というのは僕の幼馴染の紫音と、翔琉の姉弟のことだ。
二人の進学先は、僕と同じ新居橋高校に通うことになっており、近くのアパートの一室を借りるはずだった。
「その話、いつ決めたの!?」
「今さっきよ。八坂さんも文ちゃんとなら信頼できるって言ったし。」
「……はぁ、わかったよ。それで、いつ来るの?」
「引っ越しの準備自体はある程度して、物は自分たちで運ぶ予定だったらしいわよ。部屋はちょうど、事務所を増やしたかったから良いらしいわ。」
おじさんたちはどんな部屋を与えようとしたんだ、あの二人に。
おじさんこと、八坂 守戸さんは『SBO』の製作会社 ガメーズの子会社 ガメーズプログラムの社長だったりする。
ついでに言うと、ボクの父、如月 紅はガメーズの社長だね。といっても、生活自体は一般家庭と変わらないが。…いや、子供の進学のために家一件買うのはどうかと思うが。
「とりあえず、部屋余っているはずだから、よろしくね☆」
そう言い、母親は帰っていった。
「疲れたから『SBO』は明日からやろう…」
そうして夕食を作って食べてからベットにダイブして眠った。
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次の日の朝、目が覚めた時に元の姿に戻っていないか、という儚い希望を抱いていたが当然と言うように戻っていなかった。
とりあえず、朝メシを食べてそこから『SBO』をしようと思った矢先に、メッセージが来た。
送り主は、紫音だった。
「紫音からだ。どうしたんだろう?」
ボクは直ぐにメッセージの詳細を確認した。
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《紫音》
文くん、女の子になったって?
響子さんから聞いたよ。
すっっっごく可愛いらしいね。
一緒に住むことになるから、そっち行った時に見せてもらうよ!
覚悟しなさい!
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「えぇ…覚悟しないといけないの…」
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《文》
覚悟はいいか?俺はできてない。
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とりあえず、返信を返しておいた。
それはともかく、『SBO』だ。
ダウンロードは、済ませた。後は家庭用VRデバイス【マスタースフィア・ホーム】をつけて、行くだけ。
「ロードオン」
その言葉とともに、ボクはの意識は別世界へと飛ばされた。
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次の瞬間は僕は知らない場所にいた。
「…知らない天井だ。」
…言いたかっただけです。はい。
「旅人よ、気が付きましたか?」
その声を変えたのは、美しい女性…例えるならば、女神様だった。
「ここは?」
とりあえず、定番?の質問をしておく。
「あなたの体と、能力を決める場所、とでも言っておきましょう。」
キャラクリをするわけか。
当たり前だ。これからやるゲーム、『SBO』はファンタジーな世界を冒険できるものだから。
「よくよく考えたら、ファンタジーに銃ってかなり変だと思うのだけれど?」
「…深く考えないでください。」
さいですか。
「とりあえず決めようかな。」
「まずは、種族を選んでください。」
そうして出てきた選択肢は、九つあった。
・人間
・獣人
・魔人
・エルフ
・小人
・アンデッド
・吸血鬼
・機械人形
・おまかせ
・スキャン
「いや、おまかせって…。というか、スキャンとは?」
よくわからない選択肢が2つあったので、特にわからない【スキャン】を聞いてみた。
「スキャンとは、低確率であるユニーク種族への適性を調べるものです。やってみますか?」
「低確率であっても、やってみるのがゲーマーだよね。」
そう言い、ボクは目の前に出てきていたウィンドウの《YES》を押した。
そうして僕の周りを光が包みこんだ。
それから直ぐに視界が回復した。
そして目の前にいたのは、女神様と銀髪の少女だった。
「アバターは、リアルの姿がもとなんですね?」
「はい。細かい所、身長や体重を含めて基本的に旅人の世界をもとにしています。」
「そうでしたか。ところで、ボクの種族なんですか?」
「竜人です。
特徴は、基本的にSTRと、MPが高ことです。そして、このように人型をしていますが、部分的に竜の鱗を出せる《竜化》があることです。」
この説明を聞いて思ったこと。
それは、
「ゲームバランス大丈夫ですか?」
だった。
しかし、女神様の答えは予想通りというか、当たり前なことだった。
「このユニーク種族は、始めた時には他の旅人と同じような能力をしておりますので。」
そうして、種族を決定するか聞かれた。
それに対してボクは、迷うことなく《YES》と答えた。
「では、ステータスの詳しい割り振りをお願いします。」
その言葉の後にウィンドウが出てきた。
割り振りは、HPは固定、残りの4項目か合計で500を超えない様にしなくてはならない、という制限があり、その中で行った。
ーー
HP 380(固定)
MP 150+30
STR 150+40
VIT 100+15
MND 100+15
合計 100/100
ーー
STRを高めにした。これでやりたいことの前振りをすることができた。
「これで。」
「本当にこれでいいですか?」
ウィンドウにある《YES》をおす。
「よろしくお願いします。」
最後になったが、最も大事なことがまだ残っている。
「それでは、これからあなたを《Sword&Bullet Online》の世界でお送りします。最後に、あなたの名前を教えてください。」
そう、キャラクターネーム。
ボクには最初から決まっているもの。
「ボクは、《セン》。」
「《セン》ですね。それでは、セン。自由に冒険してきてください。グッドラック。」
その言葉を最後にボクの視界は、また失われた。
どうも作者です。
やっと《SBO》に入れました。
ここから冒険が始まります。
ちなみに、文ちゃんのキャラクターネームの由来は、文章の英語、sentenceから取りました。
え、会社の名前?
『GAMES』
ほら、ガメーズ。
適当って言うな…