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第22話 VS【自由龍】バイトドラセ 肆

「センちゃん!?って、うわっ!」


死んじゃったと思ったセンちゃんがなぜか生きていて、あのバイトドラセ(化け物)に対する最後の追い込みをすることになった。

でも、その要であるセンちゃんがどこかには走り去っていく。その背中に向かって声を掛けようとするが、突進によって阻まれてしまった。


「ユカリ、今は集中しろ! センには策があるって言ってんだ! 俺らに出来るのはアイツが戻ってくるまで信じて耐えることだろ!」


カゲにそう言われ、渋々ではあるが意識を切り替える。視線の先には体勢を立て直したバイトドラセがいた。もう一度こちらに体当たりでもするつもりなのだろうか。そうなったらまた避けるだけだけどね。ただ、《《避けるだけ》》。それしかできないのが悔しい。

一応、私がタゲを取り、カゲが後ろからチマチマと狙撃を繰り返して、少しずつだがダメージを与えれてはいる。

でも、やっぱりセンちゃんと比べると全然。それこそ雀の涙レベル。だから、


「早く戻ってきてね!」



――――



いきなり戦線離脱をしてしまったことを二人には申し訳なく思いながら、森のある方向へ駆け抜ける。

少しすると二つの人影が見えてきた。この付近にいる人影は彼女たち、ハマ・トゥ殿とロ殿だけ。とにかく今は二人のところに向かうとするかのぅ。


「センじゃないか!? 一体どうしたんだ? 【自由龍】は?」


「彼奴にはいいようにやられておるところでのぅ。ブレスで炭にされてもうたわ。」


「炭って、大丈夫だったの!?」


ロ殿が肩につかみかかってきたので何とかだったことを伝え本題に入る。


「それで、儂がここにおる理由じゃが、消し炭になったときにトゥ殿から送ってもらった太刀が溶けて待ったんじゃ…申し訳ない。」


「そうか、太刀はアイツのブレスを受けたんだからいいさ。」


「そう言ってもらえるとは、有り難い。それで無理を承知で聞くんじゃが、代わりとなるものはないか?」


儂の言葉を聞いてトゥ殿は「どうだったかな」といい、馬車の中をみてくれた。

少しして、中から顔を出したと同時に大きな鎌を取り出した。


「殺意マシマシの禍々しい鎌じゃのぅ…」


思わず言葉が溢れる。大鎌の全体が紅に染まっており、刃には血のように濃い深紅の渦の文様が浮かび上がっていたからだ。


「太刀とだいぶ違うが、コレならアイツに大きな傷を与えれると思う。今のオレの手持ちの中じゃ、一番いいもんだ。」


《《一番》》とな。確かに鎌だと、ダメージを与えるには十分なはずだ。


「でも、センは扱えるの?」


「一応はの。しかし、大鎌を使うのは久しいのぅ。」


「ならいいけど…」


別ゲーでメインウェポンを大鎌にしていたことがあったため、ロ殿の心配は問題無い。


「では、申し訳ないが借りる。」


「おう、ソイツでヤツを八つ裂きにしちまいな!」


その声に答え、二人のいる場所に駆ける。

しかし、こんなこともあるとは。いや、こういった可能性も考えられたクエスト(依頼)だったのだろう。まったく、儂らの親は凄いものよ。

そんなことを考えているうちに緑色の巨体が暴れているのが見えてきた。



――――



センがこの場を離れもう5分程がたったはずだ。正直この短時間でもきつい。俺はダメージを受けないで済んでいるが、ユカリはそんなことはなくHP、MPどちらも大きく消耗してしまっている。


「ユカリ、まだいけるか?」


「手持ちポーション両方ラス1!」


手短でなおかつ分かりやすい返答。しかし、ラス1となると厳しい。2分も持てばいいほうか?


「ポーション服用!」


「わかった!」


…さて、これでユカリには後がなくなった。ここからできることは、早くセンが戻ってくることを祈り、それまで耐えること。


「セン。たのむから、早く…」


そう呟くのと残った茂みから一つの影が飛び出してくるのは同時だった。



――――



「遅くなった、すまぬ!」


茂みから飛び出して状況を確認したところ、2人―特にユカリはギリギリだったようで、何とか間に合ったようだった。


「センちゃん!」


「ユカリ! 交代スイッチ!!」


「お願い!」


戻ってきて早々にアヤツとぶつからないかんのか…

そう思いつつも、バイトドラセと正面に据える。

どうせなら限界まで《竜化》してみるかのぅ。

そう考え、《竜化》を発動させる。体の一部に竜の鱗を出せると言っていたが、全身に所々鱗を出すことで、筋力が上がることも以前試してみた時に分かっている。

これを応用し、移動速度を上げて大鎌を振り被りつつ向かう。

その姿を見たアヤツは怯えたかのような目をコチラの大鎌に向け、その感情を振りほどくかのように咆哮した。



――――



「なんだ、あの鎌は…」


俺はセンの持つ真紅の大鎌を目にして、そう零す。

あの鎌は見た目もそうだが、普通ではない何かがあるように思える。そうでなければ、あのバイトドラセが怯えることはないはずだから。


「あの大鎌は、トゥさんの荷物のなかにあったよ。」


「そうなのか?」


ユカリは先ほど目にしたことがあったようだった。

曰く、トゥさんの作品で他のものと同じように運ばれていたのに、やけに派手で気になっていたとのこと。

移動中にちらりと聞いたところ、《《ちょっと特殊な鎌》》で《《簡単に使えるものじゃない》》といっていた、と。

そんな《《ちょっと特殊な鎌》》をなぜ、センが持っているのか?

そんな疑問が浮かんだものの、少し考えるだけで沈んでいった。


「まさか、あの鎌は龍殺しのために打ったのか?」


それが本当なら、あの龍の怯えようもわかる。

あの大鎌を本能か何かで危険と判断しているのだろう。


「このまま押し切れるんじゃないか…」


そんな期待をしてしまうぐらいに形勢が変わったのがわかる。しかし、すぐにその考えを振り払うために頭を横に振る。先も気を抜いたところで危機に陥っていた。だから、期待はしてはいけない。それがフラグとなってしまうから。


しかし、目の前の光景はどうだ。

センは先ほどとは比べようにならない高速で動き回る。その速度は残像が残るほど。その姿はまるで白銀の風のようだった。

セン(白銀の風)が吹くと、脚が切れ、尾が千切れ、翼は破れる。

白銀の風は【自由龍】から自由を奪っていく。

気付くと【自由龍】の残された自由もわずかになる。


そして、白銀の風は首を跳ね飛ばした――



――――



己は何物にも囚われない。場所にも、他のモノにも。もし囚えられる時が来たならば、それは己が【自由龍】ではなくなる時。だから、己はその時が来ることが怖い。

だから、目の前の人間《下等生物》が持つ深紅の大鎌(モノ)を見た瞬間、恐怖した。アレは己から自由を奪うモノだと。




始めはこの森を自由に動き回っていた。

その時、滅多にない面白そうな気配がした。だから近づいてみた。反抗されても叩き潰せばいい。それだけだった。


視界に入った面白そうなものは5つの人間《下等生物》だった。

いや、2つはこの森に存在する鬼人とか言うモノ。

さらに2つは男と女のエルフ(森の麗人)

そして白い人間《下等生物》が一つ。

まったく、可笑しな組み合わせだった。


そこからさらに可笑しな事があった。

何と、エルフ(森の麗人)と人間《下等生物》が抵抗の意思を見せてきたのだ。

普通は逃げるか、息を潜めるものだ。稀に血迷い向かってくるものもいるが。

そうしたモノには興味がない。

しかし、抵抗するものは興味がある。だから、遊んでやる。


だが、結果としてはどうだ。

叩き潰そうとするものの、結局は逃げ回るだけ。それが続き失望し始めた時、岩を砕いた瞬間に右の眼球に激痛が走った。どうやって潰したのかはわからなかったが、目の前のモノの抵抗が実を結び、身体に傷を付けたのが気に食わなかった。


だから、絶対に叩き潰すことにした。

しかし、ちょこまかと動き回り潰すことができない。

更には、苦手な火も放ち抵抗してきた。

それがより気に入らなかった。

だから何が何でも叩き潰そうとしたのがいけなかった。白い人間《下等生物》の持つ刃で横腹を切られてしまっったのだ。

気が付いてはいたのだ。コレを潰そうとする時は逃げつつも横腹を刃で撫でていたことは。

しかし、切られることは思いもしていなかった。


だから、このモノらは生かしては返さないことにした。

エルフ(森の麗人)は後回しでもいい。

まずは大きく傷を付けた人間《下等生物》からにする。

とはいえ、無理に潰そうとすると切られることは目に見えている。

どうしようか考えていると、顔に跳んでくる。

人間《下等生物》如きに使いたくはなかったが仕方がない。己の息で焼き殺した。

次はエルフ(森の麗人)を潰すつもりであり、向かおうとした。


しかし、人間《下等生物》はどういうわけか生きており、立ち上がった。そして、己のそばから離れると、そのまま走り去った。

エルフ(森の麗人)を残し逃げたと思い、放置した。


エルフ(森の麗人)は抵抗したが己に傷をつけることもできない程にひ弱だった。

だが、なかなか粘り強い。


仕留めきれないでいるとあの白い人間《下等生物》が戻って来た。

その手には深紅の大鎌があった。それを見た瞬間、恐怖した。あれは己を【自由龍】ではなくしてしまう気がするから。

それだけでない。人間《下等生物》と思っていたモノが人間《下等生物》ではなく、竜人《己らに近しい者》だったのだ。

なぜ竜人《己らに近しい者》がそちら側に付く?

そう問うてみたが言葉は通じない。


そして、飛びかかってきた。先とは比べものにならない速度で飛び回り、白銀の風のようだった。

気がつけば、自由を奪われていた。

脚の自由を奪われ。翼の自由を奪われ。

果てには、白銀の風は首の上に来ていた。

やめろ。己から自由を奪うな。

そう懇願するが、聞き入れられることはない。それでも懇願しようと声を挙げる。

やめ──

しかし、その声を言い切ることはできなかった。



この日【自由龍】は自由を奪われた。



────



「仕留めたかのぅ?」


ヤツの首を跳ねた直後、《竜化》が解かれた。

《竜化》には時間制限があり、今は連続で30秒しか使うことができない。7分のクールタイムもある。

まあ、その辺りは今は置いておこうか。

今一番恐れていることは、首を刎ねても一度は復活することだ。


この事を警戒していたが、復活すら気配はない。

その直後、アナウンスが入った。


〘BATTLE END!!〙


それを聞いても少しの間は動けなかった。


「終わった」


カゲがそう口にしたのをが聞こえた。そこから少しずつ、実感する。

自分の手でこの化け物の首を落としたことが信じられない。

ひとまず、トゥ殿と合流する。


移動中に全体アナウンスがかかる。


〘『レリベルティ大森林』AREA BOSS【自由龍】 バイトドラセ が討伐されました。これ以降は遭遇率が大幅に低下します。〙


全体アナウンスがかかることに驚いたが、誇らしいことだと思い、そのままにした。



――――



全体アナウンスがかかった時、この世界に衝撃が走った。


ある者はこの事実に驚き、またある者はこの栄光を讃えた。このような人物が殆どだった。

しかし、全員がそうではなかった。


リーンの町の外れにある小屋の暗い部屋で一人の男が暴れる。


「なんで、俺よりも早くエリアボスが討伐されてるんだよッ!! 一番は俺だったのに! ふざけんな!!」


怒りに体を任せ、物を投げ、壁を殴る。そうすれば、当たり前だが部屋は元の状態に戻らなくなる。しかし、そんなことは気にしていないようで暴れ続ける。

それでも怒りは収まらず、いつしかその矛先は見ず知らずのエリアボス討伐者に向く。怒りというよりは憎しみだろう。その感情の吐き出し口は無く大きくなるばかりだった…

バイトドラセ戦を終わらせることができました。なんというか、ちょっと無理やりな気もしますが…

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