えっ?
空がオレンジ色に染まる頃、私は悠斗に呼び出された。
そこは私達が幼い頃からある、思い入れの深い近所の公園だった。
悠斗と初めてで出会ったブランコ。影が見えなくなるまで遊んだ滑り台。入学式や卒業式で写真を撮ったベンチ。
幼い頃からの思い出が詰まった、私達にとっては大切な場所だ。
「ねぇ……用事って、なに?」
「うん……あのさ、菜々花にどうしても言いたいことがあって」
普段通りに問いかける私。ただ、いつになく真剣な眼差しを向けてくる悠斗に、心臓が跳ね上がってしまう。
「えっと……それって……」
鼓動が暴れて胸が痛い。私の周りだけ空気が無いのか、息がしづらい。視界がぼやけて、彼の姿が掠れてしまう。
「うん……実はね……」
悠斗も忙しなく目を泳がせている。ゴクリと唾を飲み込むと、意を決したように持ち上げた封筒を差し出してきた。
「これっ! 菜々花のクラスの安藤さんに渡してくれないか!」
オレンジ色が濃くなる中、夕日に負けじと悠斗の頬がポッと赤く染るのだった。
「こんなこと、菜々花にしか頼めないんだ。じゃっ、お願いねっ!」
それから少しはにかんだ悠斗はクルリと反転し、こちらに笑顔を向け手を振りながら去っていった。
翌日の夕方、ひとり下校していると公園の前で悠斗に呼び止められた。
「菜々花! 昨日の手紙、安藤さんに渡してくれた?」
「ううん! 適当に破いて、その辺に捨てちゃった。じゃぁねぇ!」
こうして私は悠斗を見ずに、右手だけをヒラヒラと揺らしながら夕日に向かって歩き出したのだった。
「って事がね、昔ここであったのよ」
「うわぁ……無いわぁ……お父さん、馬鹿じゃない?」
「いや……面目ない」
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