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呪人・廻《カースマン・カイ》  作者: さばみそ
第七章
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予定調和

「お? 結界が消えてる」

タケトが戻ると狒々だけではなく結界もキレイに消えていた。アイが解析し、解除したためである。もっと言えば整地までされていた。

「遅いわよ」

「私の能力ならば7分で殲滅。及び12分で解析。解除に3分もあれば余裕なのです」

「てことは、俺は20分以上かかっちゃったか。それは申し訳ない」

「正確には36分26秒です」

苦笑いし頭を掻くタケト。いつも通りの振る舞いなのだが、勘の鋭い二人は何となく違和感を得る。

「何かあった?」

「ん?」

タケトは先程までのことを思い出す。



「テメェの想像通り、俺は使いっぱしりの鉄砲玉みてぇなもんだろよ。だが、俺にも誇りっつーもんがあるんだわ。我が身かわいさでヘラヘラ喋るつもりはねぇ。何も言わねぇ。殺せ」

玃猿はそう言うと、ダラリと力を抜いて目を閉じた。

「…そうか」

タケトは玃猿に近づき、そして左腕を振り上げる。

「さようなら」

玃猿の首が落ちた。

「ちゃんと選んではいる、か」

玃猿の体が黒い靄となり消滅した。それを見届けると、感傷に浸ることもなくタケトは足を動かす。手を強く握りしめながら



「別に。強いて言うなら、ちょっと手強い敵だったかな」

「本当ですか? 私の戦力分析ではタケト優勢。敵に戦況を覆せる能力があったのならば情報共有求む…」

「アイ、落ち着きなさい。それは後よ」

更に勘の鋭いミサトがアイを制した。互いに視線を交わす。その意味の理解は、まだアイには難しい。

「先ずは甕丸様たちの所へ戻って報告だ」

「了解であります」



「お疲れ様」

「うむ。御苦労であった。地脈も正常に戻りつつあるのを感じるぞ」

洞穴の中は社の前。結界は消え、地脈に干渉していた猿達もいなくなり、甕丸様はご満悦だ。心なしか洞穴内は先刻よりも明るく感じる。そして甕丸様はヤマトがどこからともなく用意したお茶と菓子を堪能しているのだが、いったいどうやって飲んでいるのだろう…

「あら?結局、地脈の異常の原因は猿だったの?」

「うん。帰り道に調べてきた。大きな土砂崩れ等は確認できず。その代わりに変な陣を見つけた。たぶん地脈をいじって、流れ出た力を吸収する感じだったのかな? それを修正するために地脈が乱れ… そんなところだと思うよ」

なるほどと頷く甕丸様とヤマトだったが

「そういうものは知らせてほしいです!」

と学習意欲が逞しいミサトとアイに責められた。だが、そのままの状態にしておくのは危険すぎる。地脈が完全に分断されてしまってからでは遅いのだから。それに

「うーん… この先の話は… ここだけに留めてね? もちろん協会には持っていくけど…」

一瞬、皆がちょっと不満げな顔になる。が、直ぐに察してくれたようで

「了解したよ。協会から協力要請があるまでは僕の胸にしまっておくよ」

「アイ、プロテクト」

「了解なのです」

「ありがとう。で、あのボス猿の正体からなんだけど…」



「とまあ、そういうわけでさ。確定ではないけど、俺の予想ではあーゆーのが各地に潜伏してて…」

「地脈、すなわち龍脈を破壊、もしくは改変せしめる、か」

「破壊?改変ならともかく、そんなことして得があるのかしら?というか、そんなことが可能なのかしら?」

タケトとヤマトが目配せをし、タケトが引き続き説明をしていく。

「地脈を壊れれば、溢れ出る膨大な力で地殻変動やあらゆる生命の暴走、妖怪変化の大量出現。それが伝播していき日本全土に、果ては世界中に広がっていく」

「ヤバいのです!」

「だいぶ大事になってきたのぅ」

「まぁ、それはあくまでも最悪の場合ね。地脈にも自己修復能力はある。多少のケガなら直ぐに治る。でも…」

「もったいぶらない!」

お茶で喉を潤すタケトをミサトが一喝。一息つきそこなったタケトは咳き込み、危なくお茶を盛大に噴射するところだった。

「…ふぅ、はいはい。んじゃ、続きね。地脈とは、まぁすごく大きな河だと思ってもらっていい。膨大なエネルギーが流れる大河。それをさっきの結界のように支流を造り、力を奪い続けていたら? それが至るところで行われていたら? 本流は痩せ細り、本来はうねり暴れてもいずれは落ち着き、新たな流れを作り出す大河も、干上がってしまえば工事は簡単。好き勝手に作り替えることが可能になる」

「敵はパワーアップしながら世界を自分たちに都合のいいようにしている、ってわけだね」

ヤマトが合いの手を入れる。つまりはそういうことなのだ。黒幕の存在、各地に潜伏している術師、そして妖怪たち。今回、それが最近のことではなく、もっと昔から行われていた可能性が高まった。誰が何のために、まではわからない。しかし、この予想が確かならば、表も裏も、術師だけではなく神々をも巻き込む戦いになるかもしれない。最も恐れる最悪の、そして最も可能性が高いシナリオなのである。皆もそれを理解した。故に静かになってしまう。

「地球の自然エネルギーが巡る大河… むしろ流れるプールかしら? 水は絶え間なく補充されるとしても、それ以上に奪われ続ければ人は泳げない」

「お、上手い表現だね。そういうことだよ。運営とは異なるモノが不利益な改変をもたらす。と、俺の予想はこんな感じかな。あくまでも最悪の予想。ここで議論したところで何かが進展するわけじゃないし、今は現状の確認まで」

「了解。まったく、とんでもないことになりそうだわ。どちらにしても、作戦に変更は無さそうがさだけど。むしろ、追加で稼げそうね」

ニヤリとするミサト。タケトは協会の懐事情を思い嘆く。

「ほどほどにお願いします…」

「ほっほっほ」


「では、私たちはこれで」

「うむ。此度の働き、まことに大義であった」

「ありがとうございます」

「しかしだ」

甕丸様が急に顔をしかめた。

「お主ら、我を疑うこともなくベラベラと情報を話しておったが、もしも我が黒幕側で猿共を捨駒に使っていた悪神ならば何とした?」

もちろんこのような問いかけをする者が敵のはずがない。しかし、この神はやはり由緒ある大神が式神。人というものが気にかかって仕方がないのだ。愛らしい姿にこの性格。タケトたちはこの社を復興させたいと切に思う。

「ご安心ください」

「む?」

「神々への秘策、持ち合わせております故」

「はっはっは!それはなんとも頼もしい! しかし、神の力、侮るでないぞ?」

「もちろんです」

タケトの力強い返事に甕丸様は機嫌良く笑った。そして

「タケトよ、これを持って行くがよい」

と頭の上に乗っていた石を差し出す。

「これは?」

「分霊たる我が身司る神体、要石の欠片じゃ」

「へ?え!?そんなの受け取ったら!!?」

「安心せい。その更に欠片じゃ。神頼みが必要なになったら、その時には使うがよい。くれぐれも乱用は… と、お主には言うまでもないな」

「はい。ありがとうございます」

タケトは有り難く要石を受け取り、懐に大切にしまう。

(使うって、どう使えばいいんだろ? 使ったらどうなるんだろう? 甕丸様が召還されるの?)

と考えながら。




「という感じですね」

深夜の会長室でタケトはナオズミに報告をする。協会は深夜でも依頼を受けに行く準備をする者、任務へと向かう者、タケトと同様に報告をすべく報告書をまとめている者、と様々に賑わっている。が、社宅という表向きの様相を取り繕うように、昼間と変わらぬ喧騒を結界で覆い隠す協会の外観。

それを可能にするのは、同じく会長室で報告を聞いている結界師ジョナさんの力。

「昔のことがあるゆえ、偉そうには言えぬ立場ではあるが… なんとも外法極まりない結界であるな」

「思っていた通りに、この国は侵食されているわけだね」

「そうなります。が、そういう結界の情報も入手出来たのは良い兆候でしたね。早めますか?」

「いや、焦らずいこう。皆、予定通りだろ?」

「むしろ、よりいい具合に」


三人は無言で頷き、程なく解散となる。


予定通り


それは向こうもこちらも同じこと

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