各々自惚れるがままに
「っらあああ!!出し惜しみ無しだあああ!!」
剃り込み金髪は呪力弾を十個出してみせた。
「だろうね。おそらくそれぞれの指がそれぞれの弾に対応しているんだろ? 脳筋で上手に動かせるのかな? 上手に出来たら誉めてあげるよ?」
「いつまでもぉ!んな余裕かましてられっとぉ! 思うなあ!!」
ギュンギュンと十個の弾が飛び回り、呪符を破壊しながらセイヤへと距離を詰める。対して、セイヤは呪符を数枚組み合わせて呪力弾へと集中攻撃するも弾かれてしまう。徐々に数が減る呪符。最初は金髪が動き回避しながら間合いを詰める状況だった。しかし、今は逆にセイヤが回避して間合いを取るようになってきていた。
「はっ!! やっぱり実力差はどうしようもねえなあ!!ざまあねえぜ!!」
「言うだけあってパワーはあるなぁ? だぁが、やっぱりスピードが足りてねえんじゃねえか?ベビー級のプロレスラー様よお?」
激しい打撃戦。両者共に腕っぷしにもタフさにも強い自身があるようで、防御は一切考えていない殴り合い蹴り合い。軽めの音の中に、たまに「ゴッ」と鈍い音が響き、同時に赤く染まった汗が舞い散る。
「何がアドリブよ。所詮そのアドリブも決まり決まった流れがあってこそだろうが。現役バリバリで命かけて毎日殺り合ってる俺らによぉ、アドリブで勝てるわけ無えってんだよお!!」
台詞に合わせた大振りの一発。キョウスケは躱してカウンターを放つ。が、それが狙いだった。カウンターを躱して一歩。キョウスケの足を踏みつけた。その靴の先からは刃が伸びてキョウスケの脛を刺す。
「ぐっ…」
動きが鈍ったキョウスケに鋭いジャブを連発し、最後に一発大きいのを顔面めがけて打ち込んだ。勝利を確信しニヤリと笑うスキンヘッドだが
「な~にもわかってねえなあクソハゲよ。アドリブってのはよ、何も攻撃だけじゃあねえんだぜ? 相手の技をいつどう受けるってのも重要だ。単調な試合ほどツマンネエもんはねえからな」
キョウスケが顔を突いていたスキンヘッドの拳を握った。そしてゆっくりと下ろして、持ち替えながらギリギリと捻り痛めつける。
「いっ!?痛え!痛えって!!」
「レスラーはな、試合中に痛いなんて泣かねえぜ?もちろん盛り上げるために言うやつはいるけどよ」
捻られた痛みから逃げるために自然と後ろ向きに返ってしまい、そのまま地面に倒され押し付けられ捕縛されてしまう。
「ぐあっ!」
「さあ、筋書きの無え試合だ。時間制限も無え。こっからどう面白くしてくれんだい?こっちはまだ技の一つも出して無えんだが?」
「実力差はどうしようもねえなあ!!」
いやらしい笑みを浮かべて叫ぶ金髪。対してセイヤは、やはり呆れた様子で冷静に返す。
「同意するよ。ほんと、実力差はどうしようもないよね。じゃ、右足からね?」
「はあ?」
セイヤの言葉と同時に声が漏れた。セイヤの言葉通りに右足に違和感があったからだ。確認する間も無く、右足に力が入らず膝を突く。
「なんだってん…」
金髪は自分の目を疑った。右足が、足首から先が無くなっていたのだから。正確には、右足首から先は少し離れた場所に転がっていた。
「うあああああ!?」
「うるさいね。たかだか足の一本くらいで。偉そうなこと言ってるけどさ、どうせ弱いものイジメしかしてこなかった口だろ?」
金髪が涙目になりながらセイヤを睨む。そして絶叫した。
「クソがああああ!!爆死ねやー!!」
10の呪力弾が一つになり残った呪符を弾き飛ばしてセイヤを襲い大爆発。周囲は砂ぼこりが舞って視界が塞がれる。
「なっ!?」
「10発しか出せねえなんて、俺は一言も言ってねえぜ?」
金髪は同時に、さらに一発の呪力弾をキョウスケへと飛ばしていた。砂ぼこりもあり、完全に虚を突かれてしまったキョウスケはその弾をモロに顔面に食らう。爆発の拍子に捕縛を解いてしまい、スキンヘッドは解放されて、キョウスケはふらふらと後退りする。
時を同じくして一曲歌い終わったウララ。彼女は静かに状況を見守るように立っていた。
「交代するですか?」
ウララの問いに大きな声が返る。
「「冗談!!」」
セイヤは呪符を展開してシールドを作り爆発を防いでいた。
「やっぱりまとめて一枚壁にするよりも、空気の層を入れて数層仕立てにした方が防御力が上がるね」
「ざっけんな!んな時間がどこにあったよ!?」
「ん?時間なんていっぱいあったじゃない。あんなノロノロのヘボ弾。まさかのもしかして、自身ありだった?」
セイヤの挑発に金髪が血を流す程に歯軋りする。
「バカにしやがって…」
キョウスケサイドもスキンヘッドが納得いかない顔で叫ぶ。
「モロに食らったはずだろが!?化物かテメエ!」
「モロに食らったってか、おいしく食らってやったぜ?」
歯を剥き出しに豪快に笑う。その口からはたしかに煙が漏れており、少なくともマジで呪力弾を噛み潰したのが見てとれた。
「化物め…」
「おい!!」
「おお!!」
金髪が呼び、スキンヘッドが応える。二人は集まり、金髪は何かの呪を唱えた。そしてスキンヘッドが腕を天に翳すと、何かの陣が浮かび上がり、其処から大きな武器が現れた。
「呪具召喚… この波長は、破軍か?」
タケトの呟きに呼応するように巨大な武器を手に取ったスキンヘッドは口上を述べる。
「我が手にあるは、伝説の呪術兵器が一つ。破軍は大槌! 一振で大地を割ると伝わるその力、貴様らの体で篤と味わえ!!」
振り下ろされる大槌をキョウスケが腕をクロスして止めようとする。が、セイヤが呪符を飛ばして爆発でキョウスケを弾き飛ばす。
「ってえな!?」
「あれ?お礼は?」
「ああ助かった。ありがとよ」
キョウスケがさっきまでいた場所は、轟音と共に大きく陥没していた。隣のタケトが作った穴よりも一回り大きい。まともに受けていたら五体無事とはならなかったはずだ。
「つーか、被害者らは?」
「僕のベッドで守ってるので大丈夫。もしもの時はタケトさんがいますし」
(うーん、信頼されるのは嬉しいけど、今はけっこうしんどいなぁ)
弟子の言葉に嬉しくも複雑な気持ちになるタケト。聞き取れない程の何事かを呟いて、再び目を閉じて休息に入り、傍らにいたウララは頷いて二曲目を歌い始める。
「おらよ!」
頭上で大槌を回転させて、勢いを付けて袈裟に振り下ろす。二人は飛び退くも、大槌が起こした暴風で動きを制限され、また大槌によって抉れた土砂が弾丸となって襲い掛かる。
「くそっ!」
「やれやれ、まいったな」
セイヤは呪符で被害者たちを守らねばならず、キョウスケもまた、そんなセイヤをサポートせねばならない。対して敵側は金髪が後方から呪力弾を飛ばして援護しつつ、スキンヘッドが大槌で強烈な一撃を放つ。守るべき対象が動けない以上、大槌の影響を考慮して回避には制限が設けられ、どうしてもダメージを受けてしまう。反撃に出ようとしても、被害者たちが狙われ守りに戻らねばならない。
「ならば… 一発かましてきてください!」
セイヤが言うと光がキョウスケを包んだ。と同時にキョウスケは走り出す。セイヤの呪符がいつの間にかキョウスケを纏っていたのだった。爆発的な加速に呪力弾も大槌の一撃も間に合わない。精密操作と超重兵器、その初動の僅かな隙を狙った強襲。強烈なエルボーがスキンヘッドの横っ面に入った。
「ブホァ…」
「テメエ!? 後悔しやがれ!!」
金髪は呪力弾を3発、被害者たちの方へ飛ばす。が、セイヤがその全てを一枚の札だけで撃ち落とした。
「三枚の御札って昔話があるけど、この程度の災いは一枚でもお釣がきてしまうね」
「いや、それよりもこれ!すげえな!新コスチュームにしたいくらいだぜ!?」
余裕たっぷりに挑発するセイヤ。そして、興奮気味に話すキョウスケ。キョウスケを包んだ呪符は、頭部はリングに上がる時の雷獣を模したマスクの形を成し、胴体はというと某戦隊ヒーローのようなカッコいい?姿になっていた。
「特別サービスですよ。けっこうコスパ悪いんで」
「くあああ!必殺技名とか叫びてえ!!」
「いいんじゃないですか? 遊び心って大切ですし」
それではどんな感じにしようか?と相談に入る二人の隙を、敵の二人は怒りでいっぱいになるも見逃さない。今度は立ち位置を変えて、金髪が前で呪力弾を展開し防御態勢。後ろでスキンヘッドが大槌で中距離攻撃。衝撃波がウララとタケトを襲う。
「女のバフが無けりゃあよ!」
「それに白の首を取れれば値千金。十分過ぎる報酬になるぜ!」
タケトがふぅと一息つく。それが合図のようにウララがとびきりの笑顔でキメポーズ。
と、世界が割れる。




