穏やかなまどろみ
想像してみてほしい。
晴れた日の昼下がりに、柔らかな日差しが差し込むリビングで、座り心地が良くてお気に入りのソファに腰掛けていたら。
人は、どうするだろうか?
私は……
「ヨル、ヨル〜?……ありゃ、ここにいたの。寝てるし〜」
「うー……?イオさん……?うん、寝てた……」
「ふふふ、まだ眠そうだねぇ。目がとろんとしてるよ」
お昼寝を、していた。
「……だって、ぽかぽかして気持ちいいし……今日はやることもないし……」
「うんうん、いいと思うよ〜。眠いときは寝るべき。この世の真理のひとつだよね」
「真理……そう……ヒトの心から生まれた貴方が言うなら間違いないね……」
この世界のドラゴンを始めとしたいくつかの存在は、ヒトの思い……もっと言うなら、人々の抱く特定の概念、想像やそれに対する感情の累積から生まれるものらしい。
寝ぼけた頭で、以前イオさんから聞いた知識を思い出す。
例えば、天を駆ける駿馬だとか。
例えば、空を覆い尽くすほど巨大な竜だとか。
「そうそう。まあ、わたしはヒトの想像、ひいてはそれに対する恐怖から生まれたわけだけど……うん、ヒトの心から生まれた、か。それはいいね」
「………………うん……」
「あれ、まだ眠いかな?ふふ、なら今日は寝倒す日にしちゃうといいよ」
「ん、……………」
「うん。おやすみヨル」
良い夢を。
柔らかなその声は、恐怖から生まれた存在のものとはとても思えないほどに。
優しい色をしていた。