29話 3人1組
魔法クラス27名全員が「試練」へ挑むことが決まり2日が経った。今日は試練についての詳細が説明されていた。
「まず君達魔法クラスを3人1組の計9小隊に分ける。基本的にこの3人1組で行動してもらう。試練が始まったら、小隊ごとにランダムに試練の森のどこかへ飛ばされる。その後の裁量は全て君達に委ねられる。積極的に魔族を討伐するのも、ひたすら逃げ回るのも自由だ。とにかく3日間無事に生き抜けばいい」
「随分大雑把な試練ですね……」
「ええ、それに違和感がしますね……」
アイリスの言う通り、この試練は敵を倒すでもなく、目的地にたどり着くでもなく、ただ時間がくるまで生き抜けばいいと言うもの。
学院の授業では「魔法使いは気高くあれ」や「騎士道とはなんたるや」など道徳的な精神論も学んでいる。それを逃げ回ってでも生き抜けばよいというのは話が合わない。セシリアが抱いた違和感の正体はここだった。
「先生、3人1組の理由は何ですか?」
生徒の質問にヒカゲが答える。
「これは実戦を想定した試練だからね。実戦では単独よりもチームを組んで行う任務が多い。だから戦闘における部隊の最小人数である3人なんだ。何かあった時に多数決もできるだろ? またリーダーを決めて、その人に従うとかでもいいが。詳しいことは君達の判断に任せるよ」
やはり細かい部分は「生徒に任せる」だった。純粋に生き残りさえすればいいのか、別の意図があるのかはわからない。
う~んと頭をひねっていたアイリスが、何かを思いつき大きな声を上げる。
「とりあえず生き残ればいいなら私にアイデアがあります! 試練の森に飛ばされたら皆一ヶ所に集まりましょう! それで拠点を作って耐えしのげばいいんですよ! 『魔物の巣 皆で過ごせば 怖くない』 です!」
アイリスは、どや顔で五七五の句まで読んで自慢の胸を張る。アイリスの態度はともかく、アイデア事態は悪くないとクラス内で賛同の声が上がる。
「それよ! 皆一緒なら誰と組んでも同じだし!」
「さすが実戦派!」
「ふふふ、本当にキャンプみたいね」
名案に沸くクラスメイト達だが、ヒカゲが手を叩く。生徒達の視線が教壇に戻る。
「いいアイデアだね。だがサービスで情報を渡してあげると試練の森はいびつな正方形をしている。一辺は大体3キロ~4キロ、対角線なら5キロ近くある広大な森だ。9組いるから偶然他の小隊と遭遇することはあっても、意図的に出会うことは難しいと思うよ」
ヒカゲの言葉に明らかに落胆する生徒達。全員が一ヶ所に固まるという作戦は、安全に3日間生き抜く上でかなり有効な手段であったが、ヒカゲの説明を聞き望みの薄さを痛感する。
「それとある理由があって、あまり大人数での行動はお勧めしないよ」
「なによそれ……」
女子生徒から不満の声が出るも、ヒカゲはそれ以上の説明はしなかった。結論から言えば当初の説明通り3人1組で生き抜くしかないようだ。偶然の合流も考えられなくもないが、やはり可能性が薄い。
「じゃあ当日の3人1組の組み合わせを発表するよ」
そして向かえた試練当日。魔法クラス一行は、鬱蒼と木々が生い茂る試練の森入り口までやってくる。既に緻密な魔法陣が組まれており、これで生徒達を森の中へ飛ばす仕組みだ。魔法クラス担任のヒカゲだけでなく、騎士クラス担任のジーナ、そして学院長代理のシャルロットも姿を見せている。
「では森に入ったらリーダーである私の言うことをちゃんと聞いて……」
「ざけんな! 何でてめぇがリーダーなんだよ!」
「始まる前から喧嘩はやめなさい!」
魔法クラス第1小隊
アイリス・アンフィールド
セシリア・グリーングラス
ジャック・マードック
「なんでこんな組み合わせになってしまったんですかね!」
態度の悪いマードックに対して、ぷんぷんと怒るアイリス。2人の相性はあまり良くないようだ。
「どう考えても成績セシリア俺アイリスだろうが」
「誰が下ですか!」
「いい加減になさい!」
アイリスとマードックを、セシリアが仲裁するという図が早くも出来上がりつつある。
「はっはっは、楽しそうで何よりだねぇ~」
アイリス達のやり取りを見て笑うシャルロット。とてもこれから命懸けの3日間を過ごすようには見えない。
「3日かぁ~。お風呂どうしよっかな~」
命の心配でなく、風呂の心配をするのはアリスだ。完全に気分はピクニックである。しかし同じチームの2人は違うようだ。
「あう~アリスさん頼りにしてます~」
「アリスさんと組めたのは不幸中の幸いです!」
魔法クラス第5小隊
アリス・フェアリーテイル
フーラ・スノーホワイト
コリン・スーウェン
大人しいフーラと、男子だが気の弱いコリン。そして唯我独尊を地でいく才女のアリス。纏まりは全くないが、ある意味バランスの取れたチームだ。
「ではこれより試練の森に入ってもらう。各小隊、数字の振ってある魔法陣の上に立つように」
ヒカゲの指示に従って、各小隊指定の魔法陣の上に立つ。生徒達の顔が、一気に緊張と恐怖で強張る。
「いいですか、森に召喚されたらすぐに私のそばに来て下さい。防御壁を張ります」
「ああ頼むぜ」
「いきなり魔物に襲われるのはごめんですからね」
森のどこに飛ばされるかわからない以上、いきなり敵地のど真ん中という可能性もある。強襲を防ぐため、召喚されたらまず、セシリアが防衛魔法を展開し周囲を窺うという作戦だ。
「でぇ〜はぁ〜! 行ってくるがいい! 若人達よ!」
シャルロットが杖を振ると、魔法陣は明るく輝き始め激しい閃光とともに、生徒達は試練の森の中へ転送されていった。魔法クラス27名の生死を分ける3日間が始まった。




