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【完結】日曜日のアイリス  作者: 早坂凛
第三章 試練の森〜それぞれが背負うもの〜
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26話 魔法クラスの暴れん坊

 交流戦から数ヶ月後。夏のある日。


「あ~疲れましたー!」


 夏季休暇前のテストを終えて、アイリスは机に突っ伏す。頭脳労働は彼女にはかなり過酷だったようだ。


「どの口が言っているのです? あなたテスト時間の半分は寝ていたでしょう!」


「だって解ける問題がなくなったら退屈じゃないですか~」


 アイリスにはテストそのものより、解き終わった後の退屈な時間が最も苦痛だったようだ。解答欄が満足に埋まっていないアイリスには、見直しなどという概念も持ち合わせていない。


「それはあなたが普段から勉強を蔑ろにしているからでしょう! よいですか、そもそも勉学とは――――」


(だんだんマリアみたいになってきましたね……)


「まあまあ、アイリスは実戦派なんだから」


「私も早くアイリスさんのように精霊(この子)達を上級精霊にしてあげたいです」


 説教モードに入るセシリアからアイリスを擁護するステラとフーラ。

 入学直後の交流戦から数ヶ月経過した。アイリスは交流戦で目立ったことや持ち前の性格もあり、すっかりクラスの輪の中心になっていた。無尽蔵の魔力で皆の尊敬を集める一方で、学院最低レベルの学力も露呈した。学院一の魔力と問題児レベルの学力、そのアンバランスさが却って親しみやすさを生んだようだ。セシリアも級長を務め、高い学力や面倒見のよさで「頼れるお姉さん」としてクラスメイトから信頼される存在になっていた。

 一方で未だクラスに馴染めていない者もいる。イサミ・K・クローバー。交流戦では騎士クラスの生徒を圧倒した実力で、クラスメイトから一目置かれているが如何(いかん)せん、本人は周囲と馴れ合う気はないようで孤高を貫いている。話しかければ無視するようなことはないが、会話は必要最低限でイサミから話しかけてくることもない。アイリスを筆頭に、当初は皆がイサミに話しかけていたが、今では彼女に積極的に関わる者は少ない。また彼女自身もそれを望んでいるようだ。

 そしてもう1人は、ある意味アイリス以上の問題児。アリス・フェアリーテイルだ。交流戦をいきなりすっぽかし、悪意なく新入生を挑発する問題行動は以降も続き、気分次第で授業をボイコット。しかしイサミと違い人当たりはよく、当初は問題発言で邪険だったクラスメイトとも徐々に打ち解けていった。また成績は優秀で、学力もクラスではセシリアと双璧となっている。まさに「天才児」を地でいく逸材だ。

 そしてもう1人、魔法クラスの数少ない男子生徒に問題児がいた。


「しつこいぞ! マードック!」


「うるせぇ! 逃げんじゃねえ!」


 マードックという魔法クラスの男子生徒が、騎士クラスのジョージ・レスリーに絡んでいた。黒人のマードックは190センチに迫ろうかという身長に加えて、筋骨隆々とした体躯の持ち主だ。ジョージもかなり体格のよい生徒だが、マードックには見劣りする。特徴的なドレッドヘアーも相手を威圧する要素の一つだ。


「こっちはトレーニングを終えたばかりなんだ!」


「ああん? だったら、いつならできんだよ!」


 どうやら決闘の申し込みを迫っているようだ。この王立魔法魔術学院では、生徒間の決闘はよい力試しとして学院から推奨されており、場合によっては教師対生徒で行うこともある。無論、決闘を行うには両者の合意が必要である。この「合意」をマードックは迫っているようだ。

 決して頻繁に行われるものではないため、校内では決闘自体を軽いイベントとしてとらえる風潮がある。


「彼も相変わらずですね」


「ほんと血の気多いよねー」


 セシリアとステラはマードックを見て呆れたように言った。マードックがこうやって騎士クラスに絡んでいくのは、もはや日常茶飯事のようだ。


「前にミーナちゃんにフルボッコにされてませんでした?」


「そ、そんなこともありましたね……」


 マードックは過去に血気盛んにも騎士クラスの実力者、ミーナ・ランドールに挑み惨敗したことがある。善戦の余地もなく、完膚なきまでに叩きのめされた。さすがにミーナには勝てないと思ったのか、次は竜騎士のジョージ・レスリーをターゲットにしたようだ。


「よりによってあの炎竜に挑むなんて……恐ろしいです……」


 直接炎竜のアルバーナと相対した経験のあるフーラは身を震わせた。


「えー、でも強い相手から挑んでいく男気は評価できるかなー」


 ステラは、ミーナ、ジョージと強い相手から勝負を挑むマードックの姿勢に好意的なようだ。女子生徒が話している間に、マードックとジョージは決闘の合意をしたようだ。


「全く……いいかマードック、その日限りだぞ!」


「おう、逃げんじゃねーぞ!」


 どうやら土曜日の午後に決闘を行うようだ。決闘は基本的に闘技場で行われ、教師が1名、立会人になるのが通例である。


「ね、ね、どうする? 見に行く?」


「いいですね〜、テスト勉強ばかりで退屈でしたし!」


「あなたは大して勉強していないでしょう……」


 女子グループはマードックの応援に出向くようだ。このように交流戦でもそうであったように、魔法クラス、騎士クラスともに、お互いのクラスメイトには仲間意識がある。交流戦では劣勢だった魔法クラスも、アイリス、アリスの2人が頭一つ抜けた実力を見せたことにより、客観的に見た両クラスの戦力は拮抗。両クラスとも敵対心まではないものの、良きライバルとしてしのぎを削っている。

 そして向かえた土曜日。マードックとジョージの決闘が始まる。

第三章に入りました!

これからもよろしくお願い致します!


高評価★★★★★

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