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【完結】日曜日のアイリス  作者: 早坂凛
十八章 懺悔、そして
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230話 アイリスのその後

 コリン・スーウェン


 入学後に大きく力を伸ばしたひとり。過酷な経験を次に繋げる心の強さと、飽くなき探求心を秘めた生徒である。自身の進路を最後まで悩んでいたが「厳しい環境に身を置きたい」とアイギスを志願した。実力的には本部に配属してもよかったが、指揮官としての才能を伸ばすため支部に配属。「弱い人間」の気持ちを理解できる彼は良きリーダーとなるだろう。



 ステラ・アンサンブル


 アイギス本部主力戦闘部隊8番隊所属。王立魔法魔術学院を中途退学。しかし将来的な可能性を考慮して、書類上は卒業扱いとする。戦闘能力で抜きん出た実力はないものの、情報収集や斥候では重宝する存在。入隊に至る経緯から、当初は腫れ物のように扱われていたが任務に忠実で瞬く間に隊員からの信頼を得る。折衝スキルも高く、今後は責任ある立場に就かせたい。



 アリス・フェアリーテイル


 精霊の細胞を持つ造られた天才児。入学以後、圧倒的な才能を様々な場面で発揮するも、その才能故に物事を軽んじる傾向があった。しかし試練の森や学院防衛戦において精神的に大きく成長した。心技体が揃った彼女が今後どのような人間に成長するのか、一教育者としてこの上ない楽しみである。卒業後は「やりたいことを探す」と称して旅に出るようだ。



 セシリア・グリーングラス


 アイギス本部主力戦闘部隊8番隊所属。王立魔法魔術学院を飛び級扱いで卒業。光のない人生を歩んでいたが、友人に触発され本来の人間性を取り戻した。実力、知性、人間性、いずれもアイギス副隊長として申し分ない人材である。いずれは8番隊を率いる後継者として、彼女を育て導くことは隊長としての使命である。仄暗い道を歩いていただけに、彼女の今後に幸多からんことを切に願う。





 シャロンは一頻り、目を通すと屋外ではしゃぐ生徒達を眺める。


「おや、マスターいかが致しましたか?」


 学院長室に入ってきたシャルロットが尋ねる。


「ああ、うふふ……大したことではありませんよ」


「なんだか嬉しそうですが」


「少しだけ充足感に浸っていただけですよ」


「充足感?」


「ええ。シャルロットは想像できましたか? あの子達のこれ程の成長を」


「う〜ん。まあ少しばかり想定外な部分もありましたかね」


「その『少し』が大切なのですよ」


「?」


 シャルロットはやはり、理解できないという顔をする。仕方ないだろう、彼女はシャロンが造り出したホムンクルス。人間の心の機微はいつまで経ってもシャルロットには理解できないものだった。


「ふふふ。これだから教育者は止められません」


「う〜ん、よくわからないが楽しそうで何よりです。あっはっは〜」


 ふたりは生徒達の健やかな成長を喜んだ。そして評価表最後のひとり、アイリス・アンフィールドの欄は――――


















 精霊界。玉座


「くおぉぉーーーらぁ!! ベルちゃん待ちやがれですよ!!」


 精霊界にある精霊王の住処である神殿ではアイリスとベルによる壮絶な追いかけっこが行われていた。


「わーい!」


 ベルは口にドーナツをくわえ、神殿の中に流れる小川に飛び込む。


「その最後のドーナツは私の分って言ったじゃないですか!」


 どうやらベルがアイリスのおやつを奪い逃走したようだ。


「あっ! ルギアちゃん! ちょっとベルちゃん捕まえるの手伝って下さい!」


「わかった」


 ルギアが右手を差し出すと、小川の水が凄まじい速度で凍りつく。


「ぴえっ――――」


 当然、小川を泳いでいたベルは一瞬で氷の彫刻となる。


「捕まえた」


「のああああっ!! ベルちゃん!?」


「? 捕まえろと言われたから捕まえたけど?」


「やり過ぎです! 直ぐに溶かして下さい!」


「えー。プロミネンスお願い」


「よいのか? 今度は焼き魚になるぞ?」


「あなた達は限度を知らないんですかー!!」


 アイリスとプロミネンス達のやり取りを、玉座に備え付けたサイドテーブルを片付けながらマリアがぼやく。


「全く何をやっているんだか……」


 精霊界に来て、ふた月が流れた。この間にアイリスを取り巻く環境は大きく変わった。戦いが終わったあの日、コロナはプロミネンス達を連れて精霊界へ帰っていった。

 人間界では彼女らの関わりは全てなかったことにしたため、人間のルールで彼女達を裁くことはなかった。アイリスの「命以外で償え」という言葉は彼女らにも響いたようでこれから償いの日々が始まるのだろう。

 夏を過ぎる辺りまでは戦いの影響で学院も騒がしかったが、夏季休暇には学院周辺の破壊された場所が直されていたり、リリィとジークの墓に花が添えられていたりと『反省』が窺える場面がいくつか見受けられた。

 そして新学期が始まる頃には、学院も日常を取り戻していき、アイリスも一生徒として勉学に励んだ。だが、冬の始まりにアイリス達は精霊界へ呼び出された。


「なんでもコロナから話があるらしい」


「話ですか?」


「うむ。姫も含めた我等に精霊界へ来てほしいそうだ」


 コロナから言伝を預かったユグドラシルがアイリスに知らせる。ユグドラシルはコロナ達と和解し、精霊界へ戻れるようになり、魔力もある程度戻り頻繁に召喚できるようになった。


「精霊界……って私行ってもいいんですか?」


 アイリスは懐疑的な目でエレノラを見る。精霊は下級精霊であっても、簡単に人間界と精霊界を行き来できるが、人間は話が違う。精霊界に行くことができる人間は高位の魔力を持つ者だけだ。それでも長期間滞在することは難しいらしい。しかしアイリスは例外のようだ。


「問題ないと思うよ? アイリスはほとんどリリィの魔力を継いでいるし、人工精霊である私も行き来はできたからね」


「そ、そうなんですか?」


 アイリス自身、普段マリア達がいる精霊界に興味はあった。また四大精霊からの呼び出しを無視するわけにもいかず、早々に決断する。


「それではいっちょ行ってみますか!」


お読みいただきありがとうございます!

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