表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】日曜日のアイリス  作者: 早坂凛
第十五章 開戦
184/234

183話 変わりゆく戦況

「クレア様、戦いが激化しております。万一のことを考えて、避難なさっては?」


「必要ないわ」


「しかし……」


「この戦い、私達騎士団の勝ちよ。アイギスは見たところ単独部隊で戦っているわ。さらに学院、本部、市街地と兵力を割られてはさすがに数が足りないでしょうね」


「現在はアイギスが優勢のように見えますが……」


「そんなものは最初だけよ。あの男は戦い終盤になって疲弊したアイギスと魔族の生き残りを掃討して騎士団の手柄にするつもりでしょうね。魔族を殲滅すれば自分と魔族との繋がりは隠し通せるでしょうに」


「クレア様は……」


「何度もいうけど私は傍観するわ。もう私の時代は終わったもの。ランドールの戦いは関知しないわ」


 怪我と病に侵され、ジェノスとの政権争いにも敗れ、なにより親友を亡くした彼女はかつての志を失っていた。


(悪いわね。お前に託された夢は叶いそうにないわ……ただ責任は取るわ)


 ジーナ・フランベル。騎士団入団から苦楽を共にしてきた親友であり、戦友だった。本部将校となったふたりは主力として数多の戦場を駆け巡った。

 数年が経った頃、クレアとジーナのふたりは大佐まで昇進していた。組織の浄化も徐々に進み、世襲制から実力主義へと騎士団は生まれ変わっていった。そんなとき、ある任務でクレアとジーナは上級魔族の群れと対峙する。結果、ふたりの部隊は全滅。撤退の殿を務めたジーナは死亡。クレア自身も右足に大怪我を負い、その傷が原因で魔力欠乏症にかかる。

 志半ばで散ったジーナの分まで正義を為そうとした。だが時間と共にジェノス主導の騎士団は徐々に偏向した正義に舵を切っていく。拮抗を保つため、将官となったクレアはジェノスと対立した派閥を作り、かつての正義を取り戻そうとするも、政治力の勝るジェノスに元帥争いに敗れてしまう。

 しかしジェノスはクレアに大将の地位を与えた。その代わり正規軍の指揮権を剥奪し、事実上の飼い殺しになる。こうしてクレアの牙を折ったジェノスは古参の元帥も囲い込み、騎士団を掌握していった。



(結局私は何もできなかった。下の人間から見れば、今の私はかつて追放した老人達と同じね……)


 自虐的に鼻を鳴らし、執務室を出ていく。激化する戦いにはまるで興味がないようだ。ドランを引き連れてどこかへ向かう。










 王立魔法魔術学院。


 アリューシアとマハードは上空から魔族に対して、航空攻撃を続けている。長時間に及ぶ、魔法の連続使用で息が上がっていた。


(さすがにしんどいわね……でもこれで半分くらいは削れたかしら……)


 空から俯瞰して敵の軍勢を見る。明らかに数は減ったが、まだまだ大軍と呼べる数が健在だった。


(果てしないわね……)


 先の見えない戦いでアリューシアが僅かに俯き、隙を見せた瞬間だった。


「アリューシア!! 後ろだ!!!」


「えっ?」


 マハードの叫び声を聞き後ろを振り返ると、人間と同じサイズの飛行型の魔族がいた。振り下ろされる拳にアリューシアは反応できなかった。


「がっ!?」


 顔面を激しく殴打され、アリューシアは箒から地面に落下していく。そして魔族もアリューシアを追いかける。


「くそっ!」


 アリューシアの援護に向かおうとしたマハードを、別の飛行型魔族が遮る。


「お前の相手は俺だぜ?」


 流暢な人間の言葉を話す魔族だった。


(上級魔族か!? やはりいたのか!)


「そこをどきたまえ」


「なら俺を殺して見ろよ」


 上級魔族は挑発的な目でマハードを煽る。


「上等だ」


 上空でマハードと上級魔族の交戦が始まる。





 東門。魔法クラス陣営。


「アンデット突破されそうです!」


 生徒が叫ぶ。ロリはその言葉を聞いて、ゴーレム達を広範囲に配置しようとする。


「ロリ、待って! ゴーレムはそのままでいいわ!」


「いいの? このままでは突破されるわよ?」


「穴が空いたなら、こちらに通していいわ。全部決壊しなければまだこちらが有利よ」


「そう、わかったわ」


 そしてついにアンデットの軍勢の一部が突破され、東門に魔族が攻め込んでくる。


「はあああっ――――!!」


「オラァ!!!!」


 イサミとマードックのふたりにより、魔族は数メートルと進軍できず薙ぎ倒される。白兵戦に強いふたりを前線に置き、魔法クラス本陣が後方支援の魔法で援護射撃をする。血気盛んなふたりの荒々しい戦いぶりを見て、魔法クラスの士気は上がる。


「先陣を任されるのは武門の(ほま)れ。腕が鳴りますわ」


 イサミは不敵に笑う。刀を振り血をはらう。


「まあ悪い気はしねえな」


「さあ、次がきます!」


「おおよ!」


 もともと好戦的で実戦経験が豊富なふたりは、この修羅場において最高のパフォーマンスを見せる。大軍同士の戦いだと兵士の士気が勝敗に大きく影響することを指揮官のアリスは理解していた。


「ローラ! ルシア! マリーはイサミの前方5メートルに攻撃魔法!! ダックス、レッドはマードックの左右に援護射撃!!」


 アリスは適切な指示を飛ばしながら、敵戦力を削っていく。太陽はほぼ真上に上る、もう昼前だ。アンデット、ゴーレムは7割を失うも魔法クラスに未だ死傷者はなかった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ