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Stage.5 魔の疑惑

ここで序章を区切る予定が、長くなりました。次回序章エピローグ。



ギルドへの報告、依頼の納品は済んだ。

結局フォレストハウンドに襲われたせいで俺の手元には銀貨二枚……つまり二十四束しかモミモグサを集められなかった。


長年の経験が泣くな。


しかし臨時の収入がある。フォレストハウンドの魔石が一つで半銀貨一枚。

二つなので銀貨一枚で売り払い、今回、浅い場所で深層モンスターに遭遇した報告で銅貨十枚を受け取った。


フォレストハウンドの情報については新生迷宮が関わっているとの説が強いとか。

例の迷宮は森を内包している為、俺が交戦したフォレストハウンド他、様々なモンスターが生息していると話を聞いた。


迷宮のモンスターは放置しすぎると溢れるものが出る。

都市フォールンには元々迷宮なんて無かったのだから、新生迷宮へ潜る冒険者の数が少ないという。


他の都市から人を集めているのも対応の一つだとか。


なので登録早々に魔石を取ってきたことから感心されてしまった。


「ほう、初戦でフォレストハウンドを二匹も殺るか、流石だな坊主。草集めなんてしてないでお前も迷宮に行けばいいじゃねえか」


「いえいえまだレベルが低いものでして……」


そう笑顔で問いかけてきたギルドのおっさんに謙って断りを入れる。

なんて恐ろしいことを言うのだろう。俺はレベル1だぞ。


この後も用事があるのでやけにしつこく迷宮を勧めてくるおっさんを避け、俺はギルドを後にした。


「ダンジョンはいいぞ!」


行かない。絶対に行きませんよ……。


鑑定士の場所へ急ぐ。

結局俺は最初に見てもらった方へ足を運んでいた。


都市フォールンには人物鑑定士の店は二つある、しかし片方は如何にも上流階級向けな高い店であって、俺の手持ちでは到底届かない。

それ以外を探すなら他の街や都市へ行けというわけだ。


気は進まない、が、行くしかない。


銀貨を握り締めて、俺は鑑定屋の戸を開けた。


暇そうにしている女性がいる。よくよく見れば俺と同い年くらいか。少女だ。


「いらっしゃ――あ」


向こうも俺の事を覚えていた様だった。

明るい表情が訝しげに固まり、不機嫌に染まっていく。


「また文句を言いに来たの?」


文句は言ってないが。


「いや文句を言った覚えはないな。それよりスキル鑑定をお願い出来ないか?」


「はぁ……?」


意味がわからんと首を傾げる。そりゃそうだろうな、またスキルを見てください等と、無駄な事をと考えているのだろう。


だが、俺の考えが正しければ無駄にはならない。

しかし相手は別の解釈をしたようだ。


「もしかしてスキルが分からなかったことを根に持ってるの?お金は返したわよね」


「まあまあそう言わず、他言無用でお願いしたい」


彼女の手に銀貨を握らせる。

通常の鑑定量よりも少し金額を上乗せして。


「他言無用?ん……いいけど失敗してももう返さないからね!」


不可解な様子だった少女の調子が戻った。

なんというか……わかりやすい。


金にがめついのだろうか、そう言えば不機嫌になったのも金を返してもらってからだったな。


「じゃ、動かないでね」


瞳に光が宿る。

そういえばこの鑑定とやらもスキルなのだろうか……ぼんやりと考えながら少女の視線を受け――


「はぁう!?」


何!?


素っ頓狂な声で少女が叫んだためこちらまで驚いてしまった。

彼女は光る目を丸くして、わなわなと身体を震わせている。


無言だ。

怖いな。最初もこんな感じだったから慣れてるが。

光が収まった後、無表情で彼女は席を外してカウンターの奥へ消えた。


ん?


暫くして戻ってきた。


丸めた紙を手にやってきて、今度は座ることなく手渡してくる。

あまりにも素っ気ないのでこちらも無言で受け取った。その際に彼女が帯刀していることに気が付く。


やけに警戒しているなと思いながら紙を見ると。


名前:アッシュ

レベル:Lv.1/1

スキル:

スキルテイクLv.5

剣術Lv.2

迅狼Lv.3


(増えている……それに上のは、スキルテイク?)


親切に俺自身のレベルまで書いてくれている。やはり限界は1か……。


しかし驚くべきはスキルテイクという見知らぬスキル。

Lvが5、スキルの最大レベルだ。つまりこれ以上ない破格の才能。

こんなスキルが眠っていたのか。


「ところで……何故そんなに睨むので」


「あんたがモンスターの擬態かもしれないからよ」


はあ?

警戒対象が自分だとは思わなかった。彼女が武器を構えていないのは街中だからだろう、にしてもモンスターの擬態とは。


「おいおい物騒だな」


「違うって言うなら今から神殿まで来てもらうから。ちゃんと洗礼を受けるところまでね」


「そこまで言うのか、理由は何なんだ?」


「分からないの?洗礼の後に教えてあげるわ。貴方がモンスターでなければね」


彼女がここまで疑う理由が分からなかった。

分からなかったが、別に洗礼は受けても構わない。俺はモンスターじゃないからな。


その前に。


「洗礼を受けるのは良いが教団の寄金はそっちが受け持ってくれよ」


「いいわよ。でも行くのは教会の方よ」


あっさりと承諾された。

しかし教会か、教団では駄目なのか。


「じゃ、早く出てね」


一度目と同じく店を追い出される。違いがあるとすれば背後から少女が着いてくることか。


「逃げたら憲兵を呼ぶからね」


「いやいや、逃げないって」


末恐ろしい脅しを掛けられながら俺は教会へ連行された。


俺が何をしたと言うんだ?




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