スズちゃんの手袋
スズちゃんの手袋は右手がピンクと白のシマシマで、左手が水色と白のシマシマ。
大好きなお姉ちゃんとお兄ちゃんから貰った宝物を片方ずつはめている。
ピンクの手袋には真っ白な猫がいて、首元には赤いリボンと鈴が付いている。
水色の手袋には真っ黒な猫がいて、首元には青いリボンと鈴が付いている。
「スズちゃーん、お家に帰るよー!」
「はーい!」
あ!スズちゃん忘れ物!
公園で遊んでいたスズちゃんが、お母さんに呼ばれて走って行っちゃった。
ベンチに置いたままのシマシマ手袋。
カバンから落ちちゃったみたい。
スズちゃんはそのままお母さんと帰っちゃった。
『くしゅんっ!』
くしゃみと一緒にモコモコと白い煙が上がる。
『にゃ~ん。』
チリリンと鈴鳴って、そこには真っ白な猫と真っ黒な猫が現れた。
『にゃ、にゃ~ん!まったく…スズちゃんもお姉ちゃんたちとおんなじおっちょこちょいだにゃ。クロとリンはここだにゃ。』
『本当にゃ~!スズちゃん帰っちゃってるにゃ~。リンたちが帰らなきゃスズちゃん泣いちゃうにゃ~。』
猫の絵がなくなったシマシマ手袋を真っ白なリンと真っ黒なクロが頭に被る。
『行くにゃ。』
息が白いと冷たい風。
『スズちゃん寒くないかにゃ~?』
落ち葉が風に吹かれて、カラカラ転がって行く。
ぴょこぴょこ飛びこしながら走るリンとクロ。
パリッ!
『にゃ~!踏んじゃったにゃ~。』
『にゃにゃ♪リンは不器用にゃ。』
クロは踊るようにステップを踏む。
リンはそれを真似ながら飛び跳ねるが、やっぱりちょっと苦手である。
『スズちゃんはいっつも上手に飛ぶにゃ~。』
『あ、お家にゃ!』
『どうやって中に入るにゃ~?』
『ポスト!…はムリそうにゃ…。』
『窓が開いてたら中に入れたのに…。あっ!お姉ちゃんたちにゃ~!』
『急いで戻るにゃ!』
『にゃにゃ!』
ポンッ!
「あれ?これスズちゃんの手袋だ!」
「本当だ!」
ガチャッ!
「お姉ちゃーん!スズの手袋が無くなっちゃったー!」
扉が開いて、スズちゃんが泣きながら外に出てきた。
「スズちゃん、これ落ちてたよ。」
「見付かって良かったね、スズちゃん。」
「う"んっ!」
「風邪引いちゃうよ。中に入ろう。」
スズちゃんはシマシマの手袋をぎゅっと抱き締めた。
「お帰りなさい!!」
チリリン。
『ただいまにゃ~、スズちゃん』