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セカンドステージの幕開け

 日本から遠く離れたイギリスの地。


 ロンドン郊外に佇むとあるサッカーチームのホームグラウンド。


 広大な敷地面積を有したこの施設は、この国のプロサッカー1部リーグに古くから所属する強豪『ロイス』、その本拠地である。


「もっとスピードを上げろ!!もっとだ!!

 ボールと足は絶対に止めるな、常に動かせ!!

 動きを止めて何かを考えるんじゃない!!

 このヘタクソ共!!」


 六面あるサッカーコートの内、下部組織専用のグラウンドに指導者の怒号が響き渡っている。


 抜けるような青空の下、ユース年代による激しい紅白戦が行われていたのだが、彼らの見せるプレー内容は決してチームスタッフの満足を得るものではなかった。


「圧倒的にクオリティが落ちたな……

 動きにまるで計画性が感じられない」

「中盤の球離れ、テンポも悪いしせっかく生まれたスペースをさっきから随分と無駄にしてる」

「レニィがいた数日前までとはまったく違う、別のチームだ……最悪な出来だよ」


 監督を筆頭にコーチ陣も次々と不満を口にするが、それでいて皆どこか寂しそうな表情を浮かべている。

 そしてそれは、批判に晒されながらピッチに立っている選手達にとっても同様の事だった。


 活気などどこにもなく、無理矢理取り繕ってただ淡々と作業をこなしているような、そんな悲壮感の漂うグラウンドだった。

 そこにいる人間全員の心はバラバラで、チーム全体が進むべき場所を見失っているようだった。


 そんな彼らの状況を遠巻きに見ていた用具係の老人は、やれやれといった表情を見せるとボール運びを中断し、力なくその場へと座り込んだ。


 老人は深い溜め息をつくとそれからゆっくり空を見上げ、柔らかい日差しに目を細めてそっと呟いた。


「やはりレニィがこのチームに与えていた影響は大きかったか……

 長いことここで働いてるがあれほど才能に恵まれた選手は今まで見た事がなかった

 まさか一番伸びるこの時期に手放す事になるとはな……


 だがお前達、そう悲観するな……

 彼ならそう遠くない将来、またこの地に戻ってくるだろう……


 最高のファンタジスタとして」



 同時刻:ロンドン国際空港



「レニィ……ほんとに日本に帰っちゃうの?

 俺達もっとサッカー教えて欲しかったのに……」


 多くの人々で賑わう空港ロビーの一角、一人の日本人少年を地元の少年十数名程が取り囲んでいた。


「日本みたいなサッカー後進国に帰るなんてレニィは馬鹿だ!!」

「そうだよ!!それに……レニィがこのまま続けてたら絶対トップチームに昇格してたのに!!」

「レニィのプレーがもう見れなくなっちゃうなんて……」


「僕だって……できる事ならこのままチームに残りたかったんだけどね、でも無理なんだ……どうか許してくれよ」

 レニィと呼ばれた少年は少しばかり困ったようだったが、それでも優しく微笑むと自分よりもいくらか年下の少年達にそう言い聞かせた。


『……』

 少年達は自分たち以上に苦しんでいた彼の心情を知り、それ以上は何も言えなくなってしまった。


「……じゃあそろそろ行かなきゃ

 わざわざ見送りありがとう……

 それじゃ……みんな元気で……さよなら」

 そう言って少年は皆に背を向け、ゴロゴロと音を立てながらスーツケースを引き始めた。


『レニィ……』

 少年達は徐々に遠ざかっていくその背中を、ただ眺めるしかなかった。


 みんなゴメン……

 散々応援してもらったのに……

 これからって時にこの国でプレーできなくなるなんて……


 サッカー後進国か……確かにそうだ


 この国から見れば……いや、世界基準で見ても間違いなく日本サッカーは遅れてる……


 でも……



「レニィ!!日本でも頑張れ!!」



 少しばかり行ったところで突然背後から少年の声が聞こえた。

 思わず立ち止まると、今度は別の少年が大声で叫んだ。


「世界一の選手になってレニィ!!」


 胸の奥からこみ上げてくる熱いものを感じていると、すぐにまた別の声が聞こえてきた。

 それも次から次へと……


「そうだよレニイ!!君なら絶対になれるよ!!」

「そしたらもう一度この国に帰ってきて!!」

「また僕らを君のプレーでワクワクさせてよ!!」

「僕らはいつまでも君の帰りを待ってるから!!」


『またねレニィ!!』


 それはピッチに立った時に感じるあの声援のように彼の背中を強く押し、再び歩きだすための大きな力となった。


 少年は僅かに震える右手を強く握りしめると、背を向けたまま拳を高く突き掲げその声援に応えてみせた。


 みんな……ありがとう

 こんな形でこの国を去る事になるなんて僕も本当に悔しいんだ


 でもね……

 僕には帰国後、一つだけ楽しみがあるんだ


 僕のじいちゃんが言ってた事だけど……

『お前と同い年にもの凄い奴がいる』って



「姫野優か……早く会ってみたいな」



 サッカー選手とは到底思えない青白い肌と、恐ろしく澄んだ黒い瞳が特徴的な少年だった。


 そして何より……

 サッカーへの熱い情熱を持った少年だった。


 また新たな物語が幕を開ける。


物語はまだまだ続きますが、読みやすさを考慮してライトニングは一旦ここで完結させていただきます。

ですが完結と同時に続編のライトニング・セカンドステージが新作として投稿されております。

是非続編もお楽しみください。


ライトニング・セカンドステージ

https://ncode.syosetu.com/n2034hy/

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