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絶滅種の獣人、冒険者になる  作者: ぶるぅここあ
【マルシェダ王国領】獣人の町ブルーメル
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馴染みの雑貨屋

ご覧いただき光栄です!!



「全部ウチで買い取れるよ。合計金額は見積れたけど、内訳は聞きたいかい?」




ラビィは首を縦に振った。一方でロムはどうでもいい様子だ。




「子供みたいに目を輝かせた俺の友人に聞かせてやってくれ。」




ロムはそう言い残すと、カウンターを離れ、棚に並べられた色とりどりの小瓶を眺め始めた。


小瓶には、傷を癒すための薬品。俗にいうポーションが並べられていた。ここは雑貨屋にしては、薬品の品ぞろえがとてもいい。小瓶にはそれぞれに値段と効能が書かれた小さな紙が、紐で括り付けられている。






ユートリアはラビィを見てほほ笑むと、奥の箪笥から棚を一段そのまま引っ張り出してきて、カウンターの上に乗せた。


硬貨と硬貨が擦れ合う鈍い金属の音。




硬貨の海だ。長方形に詰め込まれたマニー銀貨が、店の照明を反射している。


ラビィにとっては見慣れた光景とは言え、これだけの大金はやはり迫力がある。






ユートリアは袋の口を大きく開け、最初の品を取り出した。




「まずこれ。ネジマキ草ね。買取価格は1本5マニー前後。今の時期は取れにくいから、1マニーおまけしたげるさ。」




カウンターの真ん中。ラビィの正面に、数本の黄金色の小ぶりな花をつけた緑草が並べられた。薬物を扱う本でよく見かける。ラビィにも親しみのある素材だ。


すぐ横にマニー銀貨が積み上げられた。




ユートリアの声が生き生きととしている。


ただ優しそうなおばさんではない。プロの商売人の顔をしていた。





「これは珍しい。トサカトカゲのしっぽだね。よく取れたねぇ。状態も悪くないし、80マニーってところかね。」




沢山の突起が盛り上がっている青色の長いしっぽだ。紫色のラインが毒々しい印象を与える。トサカトカゲという、老樹林の森に出没魔物の一部だ。逃げる時に、しっぽを身代わりに置いていく習性があるため、一撃で仕留めないと、このように長い状態で採取できないと言われている。





「次はこのクロネズミか。恐ろしい大きさだねぇ。あとで部分別に分解させてもらうよ。普段より高めで200マニーね。」




このお店は、魔物をそのまま持って行っても買い取ってくれる。


ここまで魔物を運んでくるのは面倒だが、価値のわかるプロが余すところなくお金に変換してくれるので、自分たちで魔物の素材を分解するより儲けになる。





「あとは、木の実とか薬草とか、魔物の下級素材だね。さっきのも全部まとめて、ざっと378マニーだよ。」



ユートリアは4つのマニー銀貨の山を、手慣れた手つきで一つにまとめた。なかなかの金額だから、結構な高さがあるけど、ぐらついたりはぜず、綺麗に縦に積み上げられている。



ラビィは実際にマジックを見たことはない。けれど、手品師という器用な人がこの世にはいて、マジックというショーを行うと本の知識で知っていた。


ラビィは本で、手品師についての記述を読んだとき、思わず、ユートリアの手さばきを頭で想像してしまった。


これはそれぐらい卓越した技能だとラビィは思っている。



ラビィは感動して、ユートリアに拍手を送った。









ラビィは背後を確認した。ロムは左手にピンク色の小瓶、右手に青緑の小瓶を持って見比べている。腰の位置、棚の手前の方に、数本の小瓶がキープされていた。薬を選ぶのにまだまだ夢中な様子だ。





ラビィは胸を撫で下ろし、ユートリアに話しかけた。



「リリーはまだ帰ってきてないの?」



「そうだねぇ。ありがたいことに今回も商品が大量に確保できたからね。交渉に時間がかかっているんだろう。」


ユートリアは、先ほど買い取ったばかりの素材を木箱へと積めながらそう答えた。




「 そうなんだ、残念。」




ラビィは垂れた耳を萎れさせると、小さく眉を曲げて言った。


いつもはここで終わる会話だった。しかし今日は違った。






ラビィの白い腕がカウンターの上に乗せられる。




ユートリアに耳を貸すように指示し、普段の声より数段小さな呟きをこぼした。








「今夜、雑貨屋の三つ目の角を右に曲がったところで。」








ってリリーに伝えておいて。




ユートリアは首を傾げたが、ラビィはそう付け加え、さっと身を引いた。








「ユートリア、このポーション貰ってくぞ。」




棚の小物を物色していたロムが、薄い青緑色をした液体の入った小瓶を手に持っていた。




「この前もそれ買ってなかった?」




「ポーションは消耗品だ。良質なものがあれば買い溜めておくに限る。」




痛い目を見たことがあるのか、ロムの口調は妙な説得力を感じさせるものだった。70マニーという決して安くはない数字がタグに書かれている。




ポーションの精算を済ませ、2人は雑貨屋を出た。




また来てちょうだいねーという、明るい声が背中を押した。





ユートリア「夜にデートなんてなかなかやるわね。」

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