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滅びた後の世界で  作者: 犬神
1/2

崩壊

完全不定期です。

話が思いつく限り、書いていきますが止まる時もあるので、

よろしくお願いします!

 声が聞こえた。

 殺せ、殺せ。


 声が聞こえた。

 敵を殺せ。あいつを殺せ。


 声が言った。

 殺して、敵を殺して。


 ――――――が言った。

 殺して。





 私を殺して。





 俺が生まれた年、日本は崩壊した。人によって人々は死んだ。後に残ったのは死にぞこないの化け物だった。そして、俺は―――――……





 2117年、日本は新たな時代を迎えていた。千丈大学の千川正弘せんかわまさひろ教授が新たなエネルギーを発見。ヘブン、と名付けられたそのエネルギーは、電気、ガス、その他様々なエネルギーの代替物として運用された。そして、更に改良を加えられたヘブン、は従来全てのエネルギーを超え、全てのエネルギーの頂点に立つこととなった。



 日本政府はヘブンの力を世界に見せるため、今まで、電気やガスを使用していた施設を全て、ヘブンに入れ替えることで効率が今までの200%超アップされたという結果を提示した。すると、世界中からヘブンを求める声が集まった。



 日本政府はこれを利用した。

 ヘブンを法外な値段で輸出することで、世界情勢のトップになろうと考えたのである。海外諸国は、ヘブンの価格に二の足を踏んでいたが、結局、我先にとヘブンを求めた。当然、海外の精進国は、ヘブン量産の計画を立てたが失敗。ヘブンを作り出すことができなかった。生みの親である千川教授を狙う者もいたが、教授は行方をくらまし、日本政府も把握していないと声明を伝えていた。




 そして、ヘブンは世界を文字通り変えた。

 世界の人々の生活はより快適に、より楽しく、より便利になった。日本は安定したヘブンの供給を続け、益々の発展を遂げていった。そして、その時が本格的な第二期高度経済成長期の突入の時であった……しかし、光があれば、影もできる。




 ある日、ニュースが報じられた。怪物が現れたと。世間は信じてなかった。しかし、それぞれの国のトップは把握していた。怪物の存在を……そしてそれがヘブンによるものだということも。



 夢のエネルギー、ヘブン。これを体内に入れたものがいた。名前は知られていない。何故なら、誰が最初に体内に入れたのか特定できなかったからである。



 アメリカのとある住宅街に怪物が現れた。通報を受けた警官は半信半疑で向かい、後悔した。怪物は存在していて、通報をしたであろう男性を喰っていたのだから。悲鳴を上げそうになりながらも、応援を呼んだ警官とその応援によって怪物は仕留めることが出来た。顔は人間のそれではなく、狼の様であったという。



 怪物の存在は殺された男性一人と、その場にいた警官たち、十三名が知ることとなり、警察は調査を開始することになったが、すぐに取り止めた。いや、止めさせられたのである。国際連盟研究機関と名乗ったその者たちによって。彼らはヘブンによって引き起こされた事件を揉み消したのである。



 しかし、事件は立て続けに起こった。ヨーロッパで、アフリカで、アジアで。その脅威は日本にも及んだ。隠しきれなくなった日本政府は、世界中からの批判を浴びて、声明を出した。ヘブンの直接投与による危険性を。



 海外の国々はヘブンの使用を全面的に禁止。

 自身の国を元の状態に戻すために奔走することとなった。そして、日本は今までの報いを受けることになった。日本との貿易を全面的に取りやめた海外諸国によって、日本の国力は次第に減少していった。また、日本貨幣の信用も暴落。結果、日本の貨幣は紙屑同然となった。




 国として成り立つことができなくなった日本は、海外に保護を求めた。しかし、相手をしてもらえる筈もなく、国として滅びの道を歩んでいる。




 俺が、俺たちがいるのはそんな世界。生きているのが無意味だと、腹の底から叫びだせるほどの、虚無感に追われる世界だ。

 何のために生まれて……そして死ぬのか、今を生きる俺たちには誰にも答えは出せない。誰も教えてはくれない――――――――――――――――――――





ゆう、起きなさい」

 優しい声が聞こえた。その声に目を覚ます。でも嫌な気分ではない。薄らと目を開いていくと、朝の太陽の光が差し込まれる。その明るさに再び目を閉じるけれど、眠っていた体を起こすことで無理やりにでも覚醒させた。


「おはよう。優」

「……おはよう、姉さん」

 まだぼんやりとしている意識の中、声の主の方を見る。俺が眠っていた布団の傍には、俺の姉、鷹山たかやま 麻友まゆが、正座で座っていた。


「朝ごはん、出来てるから。顔、洗ってきて」

「ああ、分かった」

 姉さんは、俺が起きたことを確認すると立ち上がって、台所のある居間の方に歩いて行った。俺も顔を洗いに洗面所に向かう。


 洗面所の鏡を見てみる。

 酷い顔だ。疲れ切った目に、表情が消えている顔。およそ人間とは思えない。こんな顔をしているのは、決まって、あの夢を見たからだ。あの夢とは言ってみたが、肝心の内容が思い出せない。余程の夢なのだろう。


 ポリタンクの中にある水を、顔を洗う分だけバケツに入れる。手で掬って水を顔にかけるとぼんやりとしていた意識が次第に覚醒し始める。顔を乾かして、姉さんのいる居間に向かうことにした。



「いただきます」

「いただきます」

 姉さんと朝食を食べる。最初の「いただきます」以外の言葉が出るのは稀である。時折、「美味しい?」とか「今日何かある?」と聞いてくるときがあるが、その会話も長くは続かない。今日も、会話はしないだろう。そう思っていたが……


「優、今日は私、行くところがあるから」

「……そう」

 初めての話題。聞いたことのない話題。新しい会話の話題。そんな話題を姉さんは口に出した。それを聞いた俺は、少し驚き、質問を返してしまう。


「……どこに行くの?」

 そんなことを返してしまう。姉さんも聞いてくるとは思わなかったみたいで驚いた顔をしている。




「―――――――よ」

 なんて言ったのだろう。もう一度……


「だから、――――――」

 姉さんはその場所を言っているはずだが俺には聞こえない。その言葉だけにノイズが混じっている。よく聞こえない……


「ふう、よく聞きなさい」

 姉さんは、口元を俺の耳元に寄せる。姉さんの吐息が耳に当たって少しくすぐったい。どこに行くの?、姉さん。







「あなたの死ぬところ」



 え?



「あぁあぁぁあぁあぁああぁぁぁぁぁぁっぁ!!!!!!!!!」

 その時、俺は身体に何かが這いずり回っている感覚を覚えた。

 感覚を認識すると、体に熱した鉄の棒を何本も突き刺されたような痛みが走る。




 熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い――――――――――――――――――――――――――……








 目を覚ます。

 辺りを見渡す。周りには、誰もいない。姉さんもいない。

 ああ、そうだ。またあの夢だ。俺にとっての幸せな日常の崩壊はあの日から始まった。《姉さんが俺を殺した》。理由は知らない。だが、知る方法もない。何故なら……








「おはよう、姉さん」

 俺が寝ていたのは、姉さんの墓の前なのだから……


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