魔法の使えない勇者の娘は必要ですか?
トラウマを刺激されたせいで今回のカンナのメンタルは最底辺です。
...今この髭ジジイ何て言った…?
私には魔法を使う才能が無いだと...?
私が絶望していると同情の目を向けてきながら司教が口を開いた。
「正確には無属性なのですが、ブラストやウェーブと言った衝撃波を出すことが出来ません...
自分の中で作った魔力を外に出す才能がカンナ様には絶望的に無いのです…
逆に強化などは適性があるのですが…強化はその、魔法で限界を無理矢理超える魔法なので身体が強くないと使いこなすことは不可能に近い魔法なのです…」
おいおい嘘だろ...あの聖女と勇者の娘だぞ…という声が聞こえてくる、やめてくれ...もう失望されるのは嫌なんだ...
私は前世でエリートの家系に産まれている、けど私には才能が無かったんだ。
だから親に失望されて、兄弟からは馬鹿にされて生きてきて…だから今世では誰からも愛されるような憧れになれるような人間になろうって...結局私は...いや、俺はどんなに生まれ変わっても役立たずのクソ野郎ってわけだ...目の前がボヤける、ダメだ...泣くな…そう思ったときにはそこから逃げ出していた。
こんな役立たずってわかったらミリアちゃんも母さんも失望するだろう…だから今のうちに...逃げよう...役立たずでごめんなさい...
「ミリア!!」
「ねえさま!!」
走る、走る、走る、神殿をでる、街を抜ける、何処に行こうか、何処に行っても魔法適性の無い勇者の娘の私では誰も必要とはしてくれないだろう。後で知ったことだが私が入ったそこは魔獣の森という冒険者にとって危ないところでは無いが一般人が入るには凄く危険な森らしい。
「ハァッ!ハァッ!ハァッ!うぅ...うっ...」
息切れがひどい、何時間走り続けただろう...足が限界を迎え倒れ込んでしまう。
本当のことをいうと母親も父親もミリアちゃんも私のことを慰めてはくれるだろう。
元気づけようともしてくれるだろう、ミリアちゃんは私のことを養うとか言いそうだ。
でも、私の為に、私なんかの為に!家族にまで気を使わせるのは死んでも嫌だ、だから今ここで終わらせる、私という、役立たずは勇者一家にはいらない。
「ガァアアア!!」
丁度いいところに魔物がいる、そうだ、魔物に自分を食わせよう、私にふさわしい最期じゃないか、魔物に無惨に食い散らかされる...魔物も腹が膨れる、私は最期にやっと必要とされて終えることができるんだ...
「ガウッ!!」
爪で肩を抉られた、痛い、次は足に噛み付かれた、血が出て意識が朦朧としてきた…
ああ...やっぱり死にたくないなぁ…もっとミリアちゃんと遊びたかった…母親の料理をもっと食べたかった…父親に色んなところに連れていって貰いたかった...
無意識のうちに私はその魔物を払いのけようと噛まれていないほうの足で蹴りを入れていた。
ドコォッ!!
ただ、払いのけようとしただけのその蹴りはけしておかしいとこはない普通の蹴りだった。
幼女が放っていいような威力じゃない、まるでミサイルのような速さのものだったことを除けば。
「...ん?」
あまりの自体に怪我の痛みを忘れてしまっていた私は、自分の身体を見て驚愕する。
そこには赤く光り輝く、自分の足があった。
更に驚愕するのは、先ほど吹っ飛んで行った魔物がその蹴りの威力を象徴するかのようにグロテスクなことになっていることである。
「え、ええ〜...」
あまりのことに先程までのネガティブな気持ちも引っ込み、言葉もでない。
あれ?私こんなことできたっけ?どうみても人外級の怪力なんですけど…魔物がミンチになってるんですけど…と混乱していると赤い光が消えると同時に気が狂うほどの痛みが出てくる。
「ァ、ァ...ァアア...痛い...足が...」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い!蹴った足が完全に折れてる!さっき魔物につけられた傷も今になって痛くなってきてるし!やばい、これは死ぬかも!何かよく分からないけど強くなれる可能性も見えてきたのにぃ!
「ん?何かあそこにうずくまっている人間が...」
女の人の声が聞こえる…誰でも良いから助けてー!!と最初のときと真逆のことをカンナは思いながら声を振り絞る。
「助...け...て」
「うわぁぁぁ!大丈夫かい!?ていうかなんだこの魔物の死体グロッ!!どうしよどうしよ!!とりあえずボクの家に行こう!」
薄れゆく意識の中で耳の長い女性があたふたしているのが見えた...
今までのカンナは空元気や無理矢理テンション上げてる感じです、勇者の娘ということで周りからのプレッシャーでトラウマ刺激されまくり&自分のような人間は相応しくないと考えてました。
性格には基本五属性の無属性→正確には無属性
こうやって見ると本当に訳わかんないですね!すいません!ご指摘ありがとうございます!