医務室での会話
「凄い…」
今まさに目の前で繰り広げられた戦いを見て、私は驚愕の思いしかなかった。あんなにリーンが強いなんて...
「リーンさんってあんなに強かったんですね…」
ツキミちゃんも同じことを考えていたみたいだ。リーンは魔法を使って戦うと思っていた。
だが、あれは何だ?いきなりミリアの魔法がまるでそこに何も無かったかのように掻き消えたあの現象は?
「カンナさんは決勝でリーンさんと戦うんですよね」
あ、忘れていた、観戦に夢中になっていて何も対抗策を考えていなかった…まあ私に出来ることは真っ直ぐいって殴ることだけだし…そんな考え無くてもいいか…別に卑屈になってる訳じゃないが。
「まあ、ある意味カンナさんは相性がいいかも知れません」
「ん?どゆこと?」
「魔法が掻き消されるということは、自分の力で戦うしかありません、カンナさんは体術が優れているので懐に潜れば…」
いけるかなあ…あのリーンがそんな隙見せるかなぁ…
「何も考えず戦うよりはいいでしょう」
「まあそうだね、ありがとう」
「いえ、ご武運をお祈り致します」
と、ツキミちゃんは拝むように私に言ってきた。何だ、私は死ぬのか、生き残ることすら無理か。
「ミリアさんが運ばれていってますね…勇者の娘が負けたとなれば観客も驚きでしょう…あ、すいません、勝手なこと言って」
「いいよ、気を遣わなくても、それにミリアちゃんならまだまだ強くなれるよ。私と違って才能もあるしね」
「カンナさん...」
気を使ってくれるのは嬉しい、けどミリアちゃんなら大丈夫だと私は本気で思ってるから、そんなにショックじゃない。
「リーンに会いに行こうか」
「はい!」
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「ここは...」
真っ白な天井がみえる、私は何を...そうだ!あのエルフが私の攻撃を避けて...
「ここは医務室だよ」
「貴様...!」
「別にそんなに殺気立つことないじゃないか、別に変なことした訳じゃないし」
「何だ、あの力は!貴様は何を知っている!」
「だから言っただろう?魔法じゃ到底太刀打ちできないって」
「説明になっていない!」
「君に話す気は無いよ、せいぜい悩むんだね」
「くっ...」
「あと、負けたから君は約束守ってよ、というか、守らなきゃいけなくなるんだけどね」
あの約束か...カンナお姉様は近くにいるというのに...クソ、クソクソクソクソォ!!カナラズ、コロシテヤル...
「...気分が変わった」
「何だと...」
「少しだけ説明してあげるよ、ボクの力を」
「どういうことだ....」
「あの力はね、いわゆる神という存在がこの地上にいる生物を選別して、分け与える力なんだよ、魔法とは違う個人によって全く異なる能力」
「神が生物を選別するだと...ふざけるなよ…神はどんな存在だろうと平等だ!そんなことはありえない!」
「それは滑稽な考えだね、神が平等なわけないじゃないか、平等ならカンナは普通の暮らしが出来てた筈だけど?」
「ぐっ...」
「まあいいよ、それと、ボクの能力は『命令』だよ。特別に教えてあげる」
「...貴様が言っていたカンナお姉様が貴様と同じとはいったいどうゆうことだ...!」
「考えればわかるだろう?カンナも僕と同じ、『能力者』さ」
「カンナお姉様が!?」
「能力者には一つ特徴がある、それは魔̀法̀適̀性̀が̀ほ̀と̀ん̀ど̀無̀い̀こ̀と̀だよ」
「...!!」
「まあその中にも能力を使えるものと使えないものがいるけどね」
「だが!貴様は魔法を使っていたではないか!」
「ああ、だから『命令』したんだよ、空気中の魔力に向かってね」
デタラメだ...そんなやつがいてたまるか…だが、カンナお姉様も同じ...
「だから君達とは住んでる世界が違うんだよ、僕達は」
「...カンナお姉様は」
「ん?」
「カンナお姉様はどんな能力何だ...?」
「カンナは...『 』だよ...とびっきりのヤバい能力だ...だからボクが守らなくちゃ…」
「『 』...だと...?」
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「リーン?居る?」
「ああ、居るよ」
やはり医務室だったか、一つも怪我はしてなかったけどね。
「ミリアちゃんは...」
「さっきまでいたみたいだけど居なくなっちゃったね」
「そっか...」
「今聞いたら、君の妹は君が生きてたことを喜んでたよ」
「え?」
「けど、まだ会えない、だって」
「な、何で…」
「本来はカンナお姉様と一緒に居るべき勇者という地位にいながらあんな醜態を晒してしまい、合わせる顔がない」
「ええ...?」
そんなこと気にしなくていいのに…会えるだけでも私的には嬉しいんだけどな…
「だから」
「ん?」
「今よりもずっと強くなります、強くなって胸をはって勇者だと言えるようになれたとき、私から会いに行きます、だとさ」
「そっか...立派になったね…ミリアちゃん...」
ようし!私も決勝頑張ろうかな!リーンに勝てるとは微塵も思わないけど!
「決勝頑張ろうね!リーン!」
「そうだね…本気で来なよ?」
「うん!」
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「『勇者』は『能力者』に対抗できる唯一の存在…本当に君達姉妹は悲劇的だねぇ…」
そう言ってリーンは笑う、まるでそれが楽しいことかのように。
「ミリアちゃんがカンナが生きてて嬉しいと言っていた、なんて言うつもりは無かったんだけど…」
顔だけは本当に似てるから甘くなっちゃったかな?と言って自嘲するように笑い続ける。
「まあなるようになるか」
悪は笑う、あの妹に倒される日を待ち望んでいるかのような表情で。




