念願の強化魔法...と思いきや?
二年ほどたったが、私は今日も今日とて鍛錬をする、基礎体力づくりは案外上手くいっており、今ではリーンと魔獣の森を駆け抜けられる程だ。
そろそろ筋トレを始めてみようかな…とか言ってみたら、リーンが「じゃあ軽いやつから始めようか」と言ってくれたので軽く筋トレをする、腹筋三十回、腕立て伏せも三十回、背筋も同じようにしていく、それを間に休憩を挟みながら五セットする。
最初は凄いキツかったけど今では慣れたものだ。
というかこれを軽いやつってリーン...まぁあまり考えないようにする。
それが終わったらあとは実戦あるのみ、リーンが教えてくれた格闘術はどこか古武道や合気道に似ている。何でもありの殺すための格闘術、非力なものでも相手を倒せる。
だが、それじゃあつまらないだろう?
相手の力と自分の力のぶつかり合いこそが戦闘!!そこに小賢しい技術など不要!
まぁ今はまだまだ非力なので使っているけど…
とりあえず今は魔物相手に実戦だな、丁度いい奴はいないかな〜。
あ!いた!魔猪と呼ばれる猪より一回り大きいやつだ!
スタートダッシュをきる、幸い相手はまだ気づいていない、木々の間を跳ぶように駆け抜け、最短距離で近づく、そして手を掌底の形にし、魔猪の側面に
打ち抜くッ!!!
ボゴォ!!!
「プギィイイイイ!!」
ちっ...威力がまだ足りないか…だがいける!
私はすかさず魔猪の背後に周り、蹴りを入れる、しかしもう私の攻撃は見られている。
予想外のところから来る攻撃と来ると知っていて、もらう攻撃ではダメージは、天と地程の差がある。
耐える、耐える、耐える。猪は私のスタミナが底を突くときを狙っている。
私が今こいつに勝っているのはスピードと手数のみ、一発でも喰らったらあの世行き確定だ。
だから、もっとギアを上げる!!
「プギィ!?」
猪も驚いたようだ、それもそうだろう今私の手数はさっきの倍以上に増えているのだから。
だが、これは強化魔法ではない、
一時的に血流のスピードをあげ、身体能力の底を上げたのだ。
いわば擬似強化魔法と言ったところか…強化魔法よりリスクは無いが凄く疲れる。それに効果も強化魔法の十分の一以下だ、あのとき感じた強化魔法の効果はこんなものじゃなかった。
「オラオラオラァッ!!!」
あぁ...また乱暴な言葉が...リーンに怒られる...これはテンションがあがりすぎていつも言ってしまうんだよね…
「ぷ、プギィ...」
ドスゥン...!!
やっと倒れたか…疲れた…やっぱり疲れるよこれ...
「コラ!カンナまた乱暴な言葉使って!」
「ご、ごめんなさい...」
「戦闘で昂るのはわかるけどもう少し抑えなさい!」
「うん...」
「でも...強くなったねカンナ!!」
「うん!!」
「この前は熊も狩れてたし…もうそろそろ強化魔法を教えてもいい頃かな」
「え!本当!?」
「うん」
「やったー!!」
「といっても強化魔法ってそんなに教えるものでもないんだけどね」
「そうなの?」
「うん、部分強化と全体強化の違いぐらいかな」
「そうなんだ...頑張る!」
「うんじゃあ魔力を身体の中で血液と一緒に身体全体に流す感じにしてみて」
「わかった!!」
全体に流す...全体に流す...?っていうか魔力を操るのってどうやるの?
「あっ!そうか!カンナに魔力の操りかた教えるの忘れてた!カンナ、魔力っていうのはその人が持っているエネルギーみたいなものなんだ、だから集中して自分の中にある力を感じてみて...」
「うん...」
これ...かな?何か暖かくて柔らかくてでも強いエネルギー...これを身体全体に...
「カンナ...凄い...」
「何これ...」
私は今赤いエネルギーを身体全体に纏わしている。力がどんどん溢れていく、自暴自棄になって足掻いたときとは比べ物にならない、澄んだ赤い光。
「これが強化魔法?」
「あー...カンナ、よく聞いてね?」
何だろうか、リーンが微妙な顔をしている。
「確かにこれは強化魔法だろうけど、普通はこんな赤い光は出ない、だから新しい強化魔法かもしれない」
え?そうなの?凄いじゃん、じゃあ何でそんな微妙な顔をしてるの?
「いや、新しい強化魔法となるとボクから教えられることは何もないから...一応普通の強化魔法のやり方を教えとくけど...」
そう言って項垂れるリーン。別にそんなこと気にしてないのに…
「とりあえず普通の強化魔法を教えとくね」
「うん、ありがとう」
確かに普通の強化魔法は何も無いただの強化だった。私の強化魔法とどんな違いがあるんだろう…
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「やっぱりカンナはボク達と同じか...なら、カンナを守るためにボクに出来ることは...」
「リーン!ご飯出来たよー!」
「わかった、今日はなんだい?」
「さっき倒した猪のステーキだよ!」
「楽しみだね」
「うん!いっぱい食べてね!」
ボクに...出来ることは...