ここは何処だ?
「産まれたぞ!二人とも女の子だ!」
声が聞こえる、男の声だ、よく通る爽やかな印象を与えるいい声だと思う。アラフォーサラリーマンである俺の酒焼けした喉とは大違いだ。
「ええ...あなた...私今幸せです…」
「ああ...僕もだ...」
女の声も聞こえる、二人は夫婦のようだ、幸せを分かち合うように男が女を抱きしめている。何かおめでたいことでもあったのだろうか?
「オギャアアアアァ!」
横で凄い剣幕の叫び声も聞こえる、赤子が泣いている、ここは産婦人科か?いや、産婦人科にしては華美が過ぎる天井だ、どこかの屋敷だろう。
「ミリアは元気に泣いているのにカンナは泣かない...これは...」
「泣かなくとも大切なうちの子には変わりありませんよ」
「あぁ...そうだな...」
ミリア?カンナ?誰だそれは、というかいい加減この状況の説明を求めたほうがいいだろう。
とりあえずここはどこでこの人達は誰かを尋ねよう。
「ア、アウ...(あ、あの)」
なんだこれは!?喋れない!?というかさっきから気づかないふりをしていたが俺ちっさくなってないか!?
「見ろ!カンナが喋ろうとしている!」
そら喋ろうとするわ、この意味不明な状況を説明してほしいからな!!
「あらあら...カンナは賢いのかもしれませんね…」
「将来は何になるのかなぁ…」
「この娘達がなりたいものなら何でもいいですよ…自由に楽しく生きて欲しいものです…」
「出来ることなら僕の勇者の役目を受け継いでくれるのが一番なんだがなぁ…」
「親の期待を子に押し付けるのは関心しませんよ…」
「そうだな…」
いいお母さんとお父さんだなぁー、じゃなくて!
昨日は、やっと会社の激務から解放され、熟睡して...駄目だ、そこから何もこの状況に繋がらない。
「オギャアアアア!!」
「やはりミリアは元気だな!!」
「ええ、カンナもしっかり泣いて元気に育って欲しいですね」
「ああ!!やはり姉妹二人とも元気でないと寂しいからな!」
わかることは何故か赤ん坊に、それも女の子になっていることと、俺には妹か姉か?が今横に居るらしい。
「早く大きくなってお父さんと遊ぼうな...」
「これからが楽しみです…」
何が何だか分からない、まあ恐らく悪い夢か何かだろう、夢じゃないにしろやっとあのブラック企業から逃れられるんだ、別にいいだろう。
赤ん坊だからかまた眠くなってきた、あとのことはまた起きてから考えよう…
「お、カンナが寝始めたみたいだ、寝顔も可愛いな...」
「そうですね...まるで天使みたい...」
そのとき、両親はもちろん、当の本人であるカンナでさえも気づいていなかった、両手から少しでた煙のような赤̀い̀残̀滓̀を。