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＃009「外見上の特異点」

暦の上では秋とはいえ、ここ一週間、連日の真夏日と連夜の熱帯夜を記録し続けている。

残暑が厳しくて堪らないこともあり、六人の服装は夏のままだ。

タンクトップに短パンで、虫取り少年姿の猪村。長袖シャツにジーンズで、伊達の厚着姿の獅谷。ポロシャツにチノパンで、日曜日のパパスタイルの猫柳。ティーシャツにハーフパンツで、女子力ゼロの狛田。キャミソールにミニスカートで、男受け狙いの猿渡。サマーニットにワンピースで、避暑マダムスタイルの獺見。

服装以外に六人の特異点を挙げるとすれば、猪村は脱色しすぎて黒くならない茶髪、獅谷は色白なので余計に目立つ雀斑(そばかす)、猫柳は矯正しても湿気で戻る天然パーマ、狛田は両耳に一つずつ開いたピアス、猿渡は左二の腕に貼られた揚羽蝶のタトゥーシール、獺見は極度の近視かつコンタクトレンズへの恐怖感による眼鏡、といったところだろう。