奇妙な告白
「わかってるから、いいの」
告白をしてきた子が、断った瞬間、そう言って微笑んだ。
「え?」
予想しなかった返事に、思わずそう返すと、彼女は更に微笑みを深くした。
「だから。江藤君が、奈那子のことが好きなことは知ってるから。だから、いいの。奈那子のこと好きなままでいいから、付き合わない?」
奈那子というのは、俺の幼馴染で。俺は、ずっと彼女のことが好きなのだけど、彼女には、もう、数年ほど付き合っている奴がいる。
その相手というのが、これまた俺の年上の幼馴染で。
彼らの邪魔をする気は一切ないから、俺はいつ終わるともしれない片思いを続けてるわけだけど。
「神崎は、それでいいわけ?」
そんな俺に、先ほど告白なんてものをしてくれたのが、目の前にいる少女。
奈那子の親友の神崎伊智花だった。
「うん。いいよ。……だって、もう無理でしょう? 江藤君ってば、奈那子のこと愛しちゃってるもの」
それに気づかれないように、最近一緒にいないんでしょ?
そう続けられて、ぐっと詰まる。
(なんで、そんなこと知ってるんだよ)
思ったことが顔に出たのか、神崎は苦笑して、言葉を続けた。
「そんなの、わたしが江藤君のこと好きだからに決まってるじゃない」
カモフラージュ。
表面を取り繕って、ごまかす。
そんな関係でいい。
「遊びでいいってこと?」
「『遊び』じゃ困るよ。私は『本気』なんだから」
「それって、俺にとってはすごく重荷じゃない?」
「『遊び』だって言っておいて『本気』になるより、ずっとマシだと思うけど?」
それに、見返り求めて返ってこなくても、わたしはそんなに辛いと思わないの。
「どういうこと?」
「一緒にいて、少しでも江藤君が幸せになる手伝いが出来たらいいな、って思うだけ」
恋人ってより、ラッキーアイテムみたいな感じで、傍に居させてよ。
そんな言葉から、俺らの関係は始まった。