ヒット アンド アウェイ
よく考えてみれば簡単だった
勇者でも戦士でもないただの村人Aの俺が、ドラクエの初期のようなバランスのいいステータスを持っている訳がない
「職業変えないと…うん、きっと職業を変えれば…」
しかし職業を変えるには海を超え、ダーム神殿という場所に行かなければならない
勿論スライムにすら勝てない俺は海を超えるなんてことは不可能であった。
「……もう一回スライムに挑戦しに行こう」
そう、今の俺にできることは…経験をつんで強くなることだけである
「待ってろよ…スライム」
どしゅぅうぅぅぅうぅ
ばしゅぅうぅぅうぅぅぅう
「ふふ…度胸だけは勇者なみだね…君は」
乳首ぶるん、ぶるん、ぶるん
ーーーーーーー
それからの一週間は死の連続だった
スライムを追って橋を渡るとキメラとか言う恐ろしい化け物に殺され畑のおじさんに助けられる
5〜6体のスライムに囲まれ瞬殺され、畑のおじさんに助けられる
ベス スライムと言うメスのスライムが謎な事にオスよりも強く、五体をバラバラにされ畑のおじさんに助けられる
…けれど沢山の死を重ねていくにつれ、スライムの動きを見切れるようになってきた
素早い動きだが、スライムは視野が狭いらしくサイドに周るとスキが出来る
そこを狙った
ーーー街から足を踏み出してから一週間と3日 今はじめてスライムに攻撃を当てる事が出来たのだ
「う、うぉぉお!」
喜びに浸っていると体制を立て直したスライムにワンパンされ、畑のおじさんに助けられた…
「いける…いけるぜ…」
胸が高鳴る、スライムごときにダメージを与える事がこんなにも嬉しいとは
ひのきのぼうを強く握り締め再び街の外へと出る
すると俺の気持ちを読んだかのようにスライムが現れた
「来いよ…今日こそてめぇをぶっ殺してやるぜ…」
突っ込みはしない…ここ最近闘いというものを経験して学んだことがある
先に突っ込んで来る奴って大体死亡フラグだと…
するとスライムのほうから攻撃をしてきた
「すばやさだけは7もあるんだぜ俺はよ!」
ひらりと身をかわし、サイドへ周る
「ここだ!!」
ひのきのぼうを突き立てると、スライムは宙を高く舞い地面へと落下した。
「へへ…どうだよ…いてぇかよ?」
距離をとる、なるべく遠く相手の攻撃が当たらない安全な距離まで
「ん墓ぅああまぁぁぁぁあぁぁあっっ」
スライムは唸り声をあげ再び突進してくる、俺は攻撃をかわしサイドへ周りこみ、攻撃を当てる
この繰り返しである…
卑怯とは言わせん、闘いに卑怯もクソもないのだから
華麗なヒット アンド アウェイを繰り返している内に、とうとうスライムを倒した
「うおっしゃぁぁあぁぁああぁぁぁあぁ!!!!!!」
とうとう勝ったのだ…あのスライムに
俺は今までに感じたことのない喜びに身を包み込んだ。