12 終わりに ~ある休日
ある休日。
「誕生日おめでとうございます、フェイリーン」
「えっ今日!?」
とても自然な動作で背後から抱きついてきたグレアス。
それを、豊富すぎる経験から軽やかに避けてみせたフェイリーンだったが、予想外のセリフに避難先で振りかえり、グレアスを見て、何故か背中に「嫌な予感」が走った。
なんだろう?
ここのところ外れた事のない予感に、祝われた事を忘れて僅かに後ずさる。
「どうして分かったの?」
「忘れもしない、私がレイメと同化した日ですから」
「うっ……」
「ようやく25歳ですね、待ちかねました……このまま結婚しましょう」
これ以上ないほどうっとりとグレアスが微笑んだ。
(き、危険な笑顔ー!!)
これは、彼の良くないスイッチが入っている証だ。主にフェイリーンにとって良くないタイプの。
じりじりと爪先の方向を退路へ向けつつ確認する。
「ちょっとした冗談よね?」
「一言「はい」と言うだけで良いのですから、簡単でしょう?」
「いや、昨日婚約したばっかりなのに早すぎるし」
「明日までもつれ込んだら既成事実も辞さない覚悟です」
「だからいつも言うけど怖い!!ていうか、なんなの、その手は」
「ここにきて焦らすだなんて、いけない人ですね」
「い、いやいやいや、ちょっ、落ち着きなさいってば………きゃー!!」
翌日、これ以上ないくらい上機嫌なレイメの四足スキップが確認されたとか―――
これにて一旦完結といたします。お付き合いいただきありがとうございました。




