第1話‐ちいさなじけん
注:これは『人殺の姫』の続きです。いきなり読むと意味わからんと思うので、先にあちらを読んで下さい。
超能力……。
どう考えても異常な力だ。
あって当然、持たざる者は人間として各下。
その意識、みんな揃って狂っている。
俺も含めて。
しかし、暇だ。
俺はあくびを噛み殺し、隣で緊張した面持ちの雪見を眺める。
警備員の制服がその表情をコーティングして、職務に忠実な若者、といった雰囲気を漂わせている。
今回まわされた仕事は空港の警備だ。
密輸の摘発。
まったくもって退屈だ。
仕事といっても、俺たちはただの中継点。
アリシァの『千里眼』が犯罪者を見抜き、それを俺に送る。
隣で突っ立っている雪見は、万一物理的危険が迫ってきた時のための保険。
つまりはアリシァ待ちであり、彼女から連絡が無い場合、ただただ暇をもてあますだけのかったるい仕事だった。
『秋人さん?』 もうすぐ帰宅時間、というところで、アリシァから思念が届く。
なんですか?『緑のジャケットに金髪、白の革靴の男……見えますね?』 トイレの脇を歩いてるあいつかい?『胸にセラミックのナイフ、足首に大麻を所持しています。終わったら帰宅してください』
「……雪見」
「え? ん、何、誰?」
雪見も退屈していたらしく、瞳を輝かせてきいてくる。
「あいつだ。ナイフと麻薬……ってお、おい!」
いきなり駆け出して行く雪見。いつもは本職の人に連絡して終わり、なのに……。
「そーとー暇だったのかねぇ」
ため息をつき、雪見を追う。
『身体強化』に『感応』を能力に持つ雪見。
1対1の勝負ならまず負けは無いだろう。
たらたらと走り、
「確保しましたぁー」
遠く、勝ち誇った雪見の声が聞こえ、俺は進路をチーフの部屋に変えた。