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隣の北の鱗魔王様  作者: 尾黒
閑話2
5/23

会議は踊る、主にブレイクダンスを。



 世界は、概ね穏やかにその時間を紡いでいく。


 平穏であるとは言わない。


 争いはそこかしこに存在していることは事実であるし、全てのものが平等であるとも言えぬ。


 だが、それが世界のあるべき姿であろう。


 身近な例で言えば、今まさに我が城で勃発している争い事と、それによって被る損害を清算する為に私が受ける精神的被害。



「北の方様のために真に必要なものは、我ら北方魔法研究所ほっぽうまほうけんきゅうしょ内、陸魚隊りくぎょたい第9支部が開発に成功した、この、『鱗ツヤピカクリーム』です! 北の方様の傷ついた鱗を再生させ、美しさを更に増します! 今以上に効果を高める為には魔力石が多量に必要であり、開発する為に、軍事費を削減し……」


「何を言うか! 我らが王の美しき鱗にそのようなものは必要ないわ! 王に最も必要とされるものは、王の生まれ育った海域と同じ海水を使用した巨大プール! 故郷と同じ水に浸かれば魔力も回復しやすく、ストレスも解消され鱗の色艶も回復するはず! 王よ、是非、城の改修の予定に組み込んでいただきたく……」


北王都きたおうと職人地区から、魔王陛下の執務用椅子の試作第5号が完成したとの連絡が……」



 陸でも魚になり隊の支部がいつのまにか魔族領各地に存在している、ということは知ってはいたが、王直属の研究所にも堂々と名を連ねているとはどういったわけなのか……、というよりも、私の鱗を治せるのならば他の魚人にも効果があるのであろうから医療用として申請するべきではないのか。


 プールは確かに嬉しいが、我が城の敷地内にはすでに数箇所プールがあるのでこれ以上は必要がないように思われるし、軍の演習用としてのものだとか領地の為になるようなものなればまだしも、私の休憩用などなおさら必要ないのではないか。


 執務用の椅子は確かに急ぎで発注してはいたが、それはこの会議の場で言うべきことなのか、いや、周りの重臣たちが深く頷いていることからして、これはもしや国家的な案件として組み込まれているのか。


 しかし、鱗の色艶の違いなど、私自身分からぬと言うのに……なぜ周知の事実のように扱われているのだ。



 様々に言いたいことが脳裏を駆け巡った。


 我が領地の重臣たちが集う議場は、熱気に包まれている。


 私は、背もたれを一時的に取り外した玉座に座ったまま、視線だけであたりを見渡した。

 提出されている重要な案件としての資料に視線を落とす。

 中身の4割が私に関することであった。


 なぜだ。会議とはこんなものであったか?

 家族会議の間違いではないのか。


 先日の中央での会議はもっと、こう、殺伐とした内容もあり、急を要する案件もあり、血生臭い報告もあり……私も立派な魔王なのだな、と再認識してきたところであったというのに。


 自領に戻っての会議がこれか。

 ギャップがありすぎる。


 確かに、経済に関して言えば、我が領地は貧乏と一言で言い表すことができるし、他領との諍いも無く、人間種族たちとも関わることが無い為に争いとは無縁。


 特色と言えば、妙に他領に比べて貧乏で、魚人の居住率や出生率が高く、領主が魚。


 ……。


 ……そうだな、私が違和感を感じること自体が間違っていたのだな。


 悪役臭満載の『魔族領の魔王』などと名乗ってはいても、所詮は私。

 私自身が違和感であったのだった。


 ならば、ここで私が言うことは決まっている。




「予算内でおさめるようにせよ」





End




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