女子高生の嗤い
ショートショートです。
初デートの、怖くない怪談。
こんな俺にも、彼女ができたんだ。
これまでの、俺の人生で、俺が恋愛対象にされるなんて……、いや、暗い話は、やめておこう。
とにかく、爽やかな晴れた春の日だ。恋をすると、夢のように、風景がバラ色に見えるとは、本当だったんだ。
「ありがとう!」「おめでとう!」「生きていて良かった!」そう言いながら、道行く人の、みんなと握手したい!
初デートで、初めて、アイビーを着た。
「アイビーは難しい」なんて話もあるが、初めてだから、上手ではない。愛こそはすべて!
アニメ聖地の像が見えた、あそこが待ち合わせ場所。時計を見る。まだ早いが、あと少し、あと少しで、デートが始まるぅ。
喫茶店の大きなガラスに、陽光に照らされた自分の姿が映った。ネクタイを直す。髪型も悪くない。笑顔の練習。
完璧だっ!
突然、後ろから、大きな嬌声が聞こえた。振り返るが、誰もいない。
もう一度、ガラスを見ると、2人の女子高生が、こちらを指している。待ち合わせの、アニメの像の近くだ。
振り返るが、やはり、誰もいない。
ガラスには映っている。2人は、腹を抱えるように、嘲笑し、いや、こちらを見て、こちらを指し、馬鹿にしたような嗤いだ。
ぐぬぬ……失礼だ。
何が可笑しいのか知らないが、2人の身振りから推測すると、どうやら、俺の精一杯のお洒落を、話題にしているようだ。
嘲笑はエスカレートし、下半身を触る、下品な動作の寸劇までしている。
心の中で思う。こらっ! うら若き乙女が、そんな仕草をするんじゃないっ。
2人がいる、アニメ聖地の像が、デートの待ち合わせ場所だ。ああ、困った、あの場所に行きたくない。
込み上げる感情を抑え、振り返って睨む。しかし、そこに2人はいない。現実に、いなくたって、あの場所に行くのは、気分が悪い。
その場を去る。こっちが去れば、あいつらも、いなくなるだろう。ふん、こっちは純愛なんだ。
気分を落ち着かせよう。まだ時間はある。一旦、駅のトイレに行く。まさか、男性用トイレの鏡には、あいつらは映っていないだろう。
まずは、顔を洗い、うがいをする。エチケットは、見た目だけじゃない。
良し。大丈夫だ。
そうだ、今のうちに、出すものは出して、すっきりしておこう。どうせ、もう、あいつらはいないだろう。
チャックを下ろそうとしたら、もう、下りている。
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