「城島」
到着したシンの家、城島家は家というよりは城島邸と言った方が差し支えない大きさだった。
自慢じゃないが坂本家も使用人や秘書、その家族十数人が何不自由なく暮らせる巨大な家ではあるのだが、そこに住むコウですら見たことのない巨大な屋敷であった。
車が着くと自動で門が開き、鯉のいる池やら木の生い茂った林やらの巨大な庭を通過して次の門が開き、やっと邸内に車ごと入る。
そこからエレベーターで上がる間、俺は規格外すぎて失っていた言葉をやっと取り戻す。
「シン、お前の家は何の仕事をしてる家なんだ?俺こんなでかい家入ったことどころか見たこともないぞ。」
「シン様、コウ様にお伝えしていらっしゃらなかったんですか?」
佐藤がやれやれと言った表情でシンの方を見ると、バツの悪そうな顔をして佇んでいる。
「城島家は200年前までこの国の王制を行っていた皇族の末裔で、シン様は次期当主、88代目にあらせられる方なのです。」
200年前までの王制のことは俺も教科書や父親の話で知っている。
王制が行われていた千年近く前から二百年前頃は、代によって当たり外れはあったもののこの国は基本的には平和だったと言われている。
しかし海外からの知識や物資が200年前に解禁されると、知識人からデモクラシー運動が起こり、王家に悪感情まではなかった民衆もそれに乗っかった。
この国の現状最後の王である柴城王はその運動に飲み込まれる前に自ら身を引き、そこから民衆によって選挙が行われる民主主義に移行したと言われる。俺にわかるのはこれくらいだ。
それはとにかく、たまたまCDショップで出会った同い年くらいの少年が王家の末裔とは漫画みたいな話で驚きが隠せない。
「できれば知られたくなかったのに、なんですぐ話しちゃうかなあ。」
シンは頬を少し膨らませるが、いずれはバレると分かっていたのだろう、佐藤に本気では怒っていないようだ。
「とにかく僕の部屋へ行こうよ、ロックも、もし好きならジャズもいくらでもあるよ。海外の、東阿では知られてないミュージシャンも山ほどあるんだ。」
エレベーターが止まるとシンはコウの手を取り、手前の方の部屋へ引き込んだ。
佐藤は部屋の前まで2人を見送ると、笑みを浮かべてごゆっくりと言いどこかへ消えていった。
シンの部屋に入ると、この広大な家屋敷よりも大きな衝撃がコウを包んだ。
普通のサラリーマンなら一軒家でもおかしくない広さの部屋一面が棚になっており、レコードやCD、漫画でびっしりと埋め尽くされている。
ギターが三本とテレビ、何に使うのかわからない巨大なモニター、最新のゲーム機、ピアノ、ドラムセット、最新のPC。どこから見ていいかわからない。
坂本家は父親の厳しさもあり、漫画やゲームもほぼ買い与えてもらえない。楽器はピアノだけは許されたがギターもCDももってのほかだ。
「さぁ、コウが気になったものからなんでも聴いてみてよ、そのあと僕のおすすめも聴かせるね。」
シンは屈託のない笑顔でコウに笑いかけた。




