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「黒塗り」




天真爛漫なシンと名乗る少年に連れられるがままに店の外に出ると、見たことのないような黒塗りのバカでかい、ごついまであるような車と外に運転手が待っていた。



もう1人、シンが出てきたのを確認した黒スーツにやや派手なネクタイの男が急ぎめに助手席から降りてきた。

すこし太めで似合わないサングラスをかけている。映画に出てくる間抜けなSPのようだ。歳は30代ぐらいだろうか。




「シン様、その方は?」


少々疑うような視線と物言いだが、悪意は感じられない。どちらかといえば心配が強い口調で心根の優しさを感じられた。



「友達だよ、コウって言うんだ。うちに連れて帰って一緒にCDを聴こうと思って。今日は新しいめぼしいのがなかったんだよね、やっぱ直で取り寄せた方がいいのかも。」




シンはまるでダメだとばかりに大袈裟に肩を落とし乗り込もうとする。



「お待ちください、コウ様と仰いましたご友人、失礼ですが、一応親御さんの名前と電話番号を控えさせていただいてもよろしいですか?」



本当に申し訳なさそうに黒スーツの男が聞いてくる。犬のような男だ。

普段は親の名前を言うのにためらいがあるが何故かこの男には普通に話すことにためらいがなかった。



「坂本江といいます。父親は坂本龍太郎、母は歳子です。」



従順に両親の名前のあとに電話番号を思い出そうとしていると、黒スーツが慌てた様子で、



「もし間違っていたら申し訳ありません、お父上の龍太郎さまは、総務大臣の坂本龍太郎様でお間違いありませんか?」



父の役職はいまいちはっきり覚えていなかった。数ヶ月前になんとか大臣への昇進だとかで豪華な晩飯が出た記憶があるので、この人がそういうのならきっとそうなのだろう。



「多分その坂本龍太郎で間違いありません。」



「知らずに大変失礼をいたしました。議員の方はみなさん連絡先を控えておりますので、電話番号はお教えいただかなくて大丈夫です。」


サングラスでこちらから目が見えない状態でも露骨にやっちまった感丸出しの表情をした男は、



「わたくし、シン様と城島家に使えるもので佐藤と申します。もしよろしければ後部座席の方へシン様とお乗りください。」



「そうだよ、早く行かないともう夕方なんだから。佐藤はそんなに質問攻めが得意なら警察にでも転職しなよ。」




待たされている間ずっと頬を膨らましていたシンが横から文句を垂れながら後部座席のドアを開ける。




「ありがとうございます、それでは失礼して。」




駆け足に言うと俺もシンに続いて乗り込んだ。



佐藤はシンの皮肉には慣れっこの様子で苦笑いすると助手席へ乗り、やっと城島家へ向かうことになった。




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