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「出会い」



中学2年生、思春期真っ只中だった当時の俺、坂本江少年は、そこそこ大物議員の父親のおかげで普通の人間はなかなか足を踏み入れることのないであろう高級住宅地に住んでいた。



しかし彼自身の教育方針により、周りの子どもが通う名門私立中学に受験することなく、公立の中学校に通っていた。



中学に上がる前の俺からすると受験しなくていいと喜んだ覚えがあるが、いざ入ってみると親父の政党とは別の党の支持者の親から何か言われたのであろう子供からの嫌悪の目や、逆に支持者なのであろう家の子や、何か欲深い目をした教師からの謎の特別扱いがあったり、とにかく不愉快な場所だった。



もちろん友達もおらず、家族の中でも妹の清華と違い長男ということで家庭教師やら帝王学やらを押し付けられていた自分にとって、



心が震える瞬間は、ラジオから流れてくる音楽しかなかった。





当時自分の好きないわゆる「退廃音楽」は国営放送では放送されておらず、民放のラジオでしか聞くことができなかった。



また、数少ない有料の音楽配信やCDの購入を議員の父親に許可されるはずもなく、基本的に気に入った曲が再び流れるまでラジオに齧り付き、バンドの名前や曲名をメモするぐらいしか能がなかった。



ところで、ラジオのパーソナリティって生き物はなんであんなにもエセ外国人みたいな聞き取りづらい発音で話す必要があるのだろうか。



そこで必死に聞き取った曲名やバンドの名前をたよりに、別の名目で母親からせしめたCD1、2枚分にあたるであろう金額を握りしめ、当時立ち入りが禁止されていたCDショップに1人で入っていった時の衝撃、全能感は忘れることができないだろう。




周りの目を気にしながらも必死に目当てのバンドの名前を探し、そのCDの表面から曲目を探し当てようとして段々と注意が散漫になる中、後ろから肩を叩かれて仰け反ったのをよく覚えている。



「君もそのバンド好きなの?歌詞がめちゃくちゃに刺さるよねぇ、最新はそこまでだったけど一個前のアルバムが最高だった。」



そういきなりまくしたてる、俺と歳もそう変わらないであろう少年は、地元の名門私立中学の制服を着ている。



髪は染めてはいないのだろうが赤っぽい茶髪で、ハンサムとまではいかないが高貴なオーラを感じさせる、目が細まった福々しい笑顔をしている。



「僕はシン。城島心。よかったらうちに音楽聴きに来ない?外国のから最近のまでいっぱいあるんだ。同い年でロック好きな人はあんまり見ないから嬉しいな。」



一瞬無視して店から出ようか、無視したまま目当てのCDを買って帰ろうか悩んだが、屈託のない笑顔に当てられて無視は見事に失敗した。



「俺はコウ。坂本江。そんなに来て欲しいなら行ってやらないこともないよ。」



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