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ニューワールド  作者: レオナルド・エーミール・具志堅
第一章「マギルト」
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第四話「変な女の人」

第四話ですm(__)m

ガキを一人拾った。見たこともないまばら模様の服装で腰から足まで続く金属補変な装備と兜を着てたけど、女の子みてぇにめっちゃかわいくて、よく顔を観察してたら肌が綺麗だし鼻筋とか輪郭とか整っていて、そこら辺のナルシストよりもイケメン要素がある。カワイイが勝つけどな♡


サウスイートウルフに食われそうになったから助けてやったのに礼じゃなく”変な棒”を向けてきやがったから、お仕置きでちょっと弄んだら泣いちゃってさ。


だから、癒してやった。しばらく撫でてるとガキが倒れそうになったから抱きとめた。今は、ガキが涙で濡らしたウチの自慢のパイで顔をうずめながら健やかに寝てる。 マジで何だよこの生き物…このまま絞め殺


だが、数十分前に空から墜ちてきた”鉄の棺桶”とコイツには確定で関係あるということは言うまでもない。

この子が一体何者で、どっから来たのかを虱潰しみたいにキッチリと調べなけりゃならない。


しかも、まだこの世界の大半を占めるゴミを何も知らないなのは明確だ。もしこの子が一人で生きてどっかの街に辿り着いたとしても、奴隷商人に捕まえられて安い労働力として売られる。それか、見た目に愛嬌がぐっしり詰まってるせいで性奴隷にされるかもしれない―――いや、 確実にだ。


髪を梳かしながらこの小さな命の体温を感じる

こんな危ないお姉さんの温もりを感じて安心しきっている

他のガキを救ったみたいに必ず外道から守らなければ―――

でも、ホントかわいいな、コイツ♡



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


顔がない男が目の前にいた。顔は洞窟のように真っ暗でそこから赤い筋が次々と垂れていく。焼き焦げた乾燥しきれてない血だらけの中華社会主義人民連邦の軍服を着ていて、ずっと「お前のせいだ」とブツブツ呟いてくる。


ブラックホールのように暗い顔を左右に動かし手を伸ばしながらゆっくりと歩んでくる。

近づくことに段々と自分の息がはぁはぁと乱れてきた。


首の振りが激しくなる。更に息が荒くなる。近づかれるごとに心臓が異常に速くバクバクとうるさく鳴る。


目と鼻の先に立った瞬間、目が醒めた――――


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

重たらしい瞼をゆっくりと開けたが、まだぼやけていて意識がハッキリしない。視界の先が眠った時と同じだけど起きていることはハッキリ理解している。


何だか柔らかくて温かい。赤ちゃんの頃によくママの胸で眠ったときと同じとてつもない安心感のせいで更に深く顔をうずめた。


このままずっとこの温もりを感じて寝ていたい。もう何も悪いことは起こらないはず―――


「おいエロガキ」


ビクッと大きく身体が勝手に反射した。間近に聞こえた声のせいで安心感はいつの間にか消え、代わりに出てきたのは心の底から来る恥ずかしさと自分がした愚かさ、そしてどうしようもない恐怖が湧き出てきた。

冷や汗が流れてきたのはそのせいだといえる。


恐る恐る顔をスローモーションで動く物体みたいに震えながら少しずつ上げた。

映ったのはニキビひとつない綺麗な女の人の顔だ。きちんと整えられたシャープな艶やかな顎に届くか届かないボブと知的な印象を与える金縁の丸眼鏡の奥から僕を上から覗く鮮やかな青い瞳が―――

微笑みを浮かびながら僕を捉えていた。


「おはよ♡ よーく眠れたか迷える少年?」

「は、離して!離して!!」


僕はこの美人から逃げようとしたが抱きしめる力が強すぎて離れられない。

バタバタと体を動かして抵抗しても抱きしめる力は強まるばかりだ。


「なに抵抗してんだよ、そっちがふらついて勝手にパイに突っ込んだのに離せってわがまま言うのか。かわいいなお前♡」


その色気を含んだ言葉を聞いて思い出した。このお姉さんに遊ばれてた間睡魔が襲ってそのままバタリと倒れかけた刹那 優しく抱かれたことを…


恥ずかしいというどうしようもない感情がもっと増えた。今頃僕の顔はトマトみたいに真っ赤になってるに違いない。


「ほら、許可無しにパイの中でおねんねしてた罰としてな、坊やはまだ谷間の中で寝れ。いいな?」


「い、いやだ!僕は絶対に――」

そう言うとお姉さんに無理やり再び胸に閉じ込められた。本当にこの人は頭がおかしいと改めて思った。


「ふぅ…満足した。さてと、解放してやるか。」


数分後にやっと彼女の束縛から自由になった。細身な見た目に反して怪力じみた力のせいで身体中が痛い。


「坊や、初対面でベタベタ触って悪かったな。でもお前が悪いんだぞ?そんな罪すぎるかわいさがウチの母性働いちまってなぁ♡ あっ言い忘れてたけど、ずっと坊やとかエロガキとか言ってたら可哀想だもんな?だから、名前を教えろ」

反省の色無しで挙句の果てにクールな見た目なのにデリカシー皆無でペチャクチャ喋る。そして僕の名前を要求してくる。なんなんだこの人は…


「ジェ、ジェイク・フリーマン、です…」

僕は彼女の言われるままに答えた。


「ジェイク・フリーマンっか、かわいいしカッコイイ名前だな♡ じゃウチの名前を教えてやるよ、一方の名前を求めて自分だけ名前を知るのは不公平だろ?

ウチの名前はアリエ・ルミナリア・フェルナンド、クソ長ぇから単純にアリエって呼んでくれ。」

この人は口が悪すぎし上から目線で自己紹介をしてくる。


「アリエさん、よ、よろしくおねがいします…」


「ところで、ずぅぅっぅぅぅぅぅっと気になってたことがあるんだけど

お前どこから来た?」


黙っている訳にもいかなかったのでここまでの事の成り行きを言った。


「ぼ、僕は太陽系にある地球という惑星から来ました。その…輸送船のジャンプが失敗して事故になったんです。それで、えっと…この未知の惑星に脱出ポッドで逃げたんです。」

この世界に来た経緯をアリエに説明した。

返ってきたのは――—「は?」———という間抜けた声。


「チキュウ?ジャンプ?ダッシュツポットだぁ?何言ってんだよ坊や、そんな意識高い系の魔導士みてぇな呪文を放ちやがって けどかわいいからいっか♡


とりあえず空から来たってことに解釈するわ」


アリエは一部しか理解できなかったみたいだ。それと彼女は魔導士やら呪文とやらの単語を発したからここはファンタジー世界の一種かと考えた。


「アリエ…さん。あなたはどこから来たんですか?」


「ん?ウチは南部サドのロックバレーから来たんだぜ。ちょっとアタオカのカルト集団を追っててな。なんでかって?ウチのナンバーワンで大事な物があの変態集団に盗まれちまったんだよ」


「いやあなたもアタオカでしょ!?」

「うん、そうだけど?」

すんなり認めた。幸か不幸なのか自覚はあるみたいだ。


「それは認めるんだ…」

「事実だからな」 


アリエはポンポンと軽く叩いた後、焚き火の始末をした。

彼女は満足げに腰へ手を当てた。

その顔は、なにかとんでもないことを思いついた時の笑顔だった。


僕は嫌な予感しかしなかった。


「…なに、その顔」


「うし、決めた」


「決めた、って何を」


アリエはびしっと人差し指を突きつける。


「今日からジェイクはウチ専属奴隷兼ペットな♡」


一瞬、森が一気に静まり返った気がした。


「え、え?ええええええええええ!?

何そのふざけた宣言!今すぐ撤回して!!」


「嫌だ♡」


「即答!?」


「だってお前、放っといたら森でまた魔獣のエサにされるじゃん」


「だからってそんな肩書おかしいでしょ!」


「肩書って言うなよ、それじゃ仕事みたいでクソだるいしダッサイ」


アリエはけらけら笑いながら、ずいっと顔を近づける。


「ほら、お返事は?」


「絶対やだ、ほんとやだ」


「返事は?」


「だから嫌だって…!」


「お・返・事・は?」


妙に圧がある。

笑っているのに、妙な迫力だけは紛れもなく本物だった。


「……は、はい」


「”はい”、じゃないくて?」


「まだ続くの!?ていうか”はい”が返事じゃないの!?」


「いいか、お前はペットだ。ペットが返事するとき”はい”なんて言わないだろ?そのちっちゃい頭でよーくかんがえるんだな」


「横暴すぎるよ…」


アリエは腕を組み、ニヤニヤと浮かべながら待っている。

完全に僕を面白がっている顔だ。


僕は多分顔を再び真っ赤にしながら、ぐっと拳を握った。


「……わ、ワン」


数秒の沈黙が風を通して流れる。

そして―――


「よくできました♡」

また満足げな顔を浮かべながら、ぽん、ぽんと頭を軽く撫でてくる。


「うぅ……」


「ははっ、そんな今にでも死にそうな顔をすんなよ」


「君のせいだよ…」


「アリエ、な?」


「アリエのせいだよ!」


「うん、よろしい♡」


またポンポンされる。

悔しい。

悔しいのに、手つきだけが妙に優しいのが腹立たしい、ムカつく。


「僕は絶対そんな呼び名認めないからね」


「へぇ~」


「なに」


「でもさ」


アリエは少しだけしゃがんで、僕と同じ目線になる。


「ウチのそばいりゃ、とりあえず死ぬ確率はグッと下がるぞ」


「……」


その言い方は軽い。

軽いのに、本気が孕んでた。


僕は一瞬だけ言葉を失う。声が出なかった。


アリエはすぐにいつもの調子へ戻った。


「ま、そういう訳で決定な」


「強引すぎるよ!」


「よし、ウチのペット。最初の仕事だ。荷物持て」


「ただの雑用じゃん!」


「お、元気元気」


またぽんぽん、と叩かれる。


森の朝に彼女の笑い声が響く。

僕は顔をしかめながらも、完全にはその場から離れなかった。

というか離れらない。


理不尽だ。

めちゃくちゃだ。

勝手に決めるし、距離はあまりにも近いし、口も酷い。


でも―――


その強引さの奥に、ほんの少しだけ”守る気”があるように見えた気がして、余計に調子が狂う。


「ほんと、変な女の人」


「今さらかよ」


「今さらだよ……」


アリエは満足そうに余裕そうに笑った。


「いいじゃん。この先の人生の道で退屈することはまずねぇだろ」


その言葉だけは、妙に確信に満ちていた。


そしてだぶん、そこだけは本当だった。

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