第三話「今日は非日常」
第三話です!ヽ(^o^)丿
翌朝の早朝、明け方ながらも日光が透き通るように降る木漏れ日の森で、アリエは先ほどまで地面に伏せむっちりな尻を上げながら定期的に来る抗えない思春期での現れである人間の三大欲求の一つ、を執拗にそうかい良く満たしていた。
現在、アリエは服を脱ぎ鼻歌を口ずさみながら川で身体を洗っていた。
妖艶と引き締まった身体に着用している高級感が漂う黒レースのブラと一人遊びでの余韻があからさまに残っている食い込んだ同色のハイレグ寄りパンツが丸見えだが、彼女以外の人の気配はなかったので気に留めず細かく汚れを落としていった。
すると、異変を察知した―—
「ん?」彼女は空から轟音が響くのを耳にした。上を見上げると、凄まじい勢いで炎を出しながら落ちてくる隕石のようなものが視界に入った。
「は?…え、え?…なに今の…?」
理解するのにしばらく時間がかかった。
当然である。なんせ初めて遥か上空から堕ちてくる物体をこの目で見たからの理由以外はない。しばらく石化されたように硬直状態になった。
よく見ると、炎に包まれているそれは箱状の物体で自然形成されたものではなく人の手によって作られた落下物だということに気付いた。
彼女から溢れ出てきたのは未知に対する強い好奇心と警戒心だ。
だが、アリエにとって前者は大の大好物であり、心を躍らせていた。
「ははっ、面白そーじゃん。あん中から一体何が出てくるんだろうな、バケモンだったらぶち殺すけど、もしカワイイ子だったら…アリエ様専属のペットにしちまうか、ふふ♡」
そんなイカれたことを言い残し、服を着替え再び鼻歌を歌いながら落ちたであろう場所に向かった。
森から平原に出てしばらく歩いていると、”鉄の箱”を見つけた。アリエは改めて驚きつつも、平然を装い虱潰しに調べる。
「これ金属でできてんのか?すげえな。あとよーわからん椅子があるし、もしや乗ってた輩がいんのか?」腕を組み片手を顎に添え自問自答をしているとあることに気付いた。
「待てよ、これ足跡だな。しかもちっさい。ひょっとしてカワイイ子か?断定はできねぇがクソ楽しみだな♡」アリエは興奮気味に言うとリュックを背負い直し、足跡を辿る為再び森へと入った。
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木の根元に座ってローレンスを抱き、今一度自分の人生を焚火の火を眺めながら考えてみた。
陸軍に入った理由は地球連邦の壮大な軍の広報部の壮大な宣伝と自分自身が未だに子供扱いされるのがコンプレックスで、一人前の男になりかったからだ。後者の方が圧倒的に理由が大きかったけどね。
十歳のとき成長が止まって十六歳になっても未だ140㎝前後止まりで、見た目もあの時から変わらない。周りは余裕で160を超えていて女子ですら僕の身長を超えている。
そのせいでよく身長が平均な子と高い子にバカにされていじめられてきた。パパが僕に教わった格闘で問題解決を図ろうと決めたときがあったけどあまりよろしくないと判断し、ひたすら耐えることにした(相手の鼻が折れ曲がったら色々と面倒くさいことになる)。
先生に言うのも選択肢の一つだったがこの時の先生は全員感じの悪い持ち主の為なかなか相談しづらかった。親に関しては絶対に言えなかった。大好きな家族には迷惑をかけたくなかった。
軍隊に入隊したのは十四歳の時だ。家族とモンタノの州都ヘレナで遊びに行ったとき、デパートの中の壁に地球連邦陸軍の入隊募集動画がホログラム映像で映し出された。
『君はその小さな胸でも銀河の偉大なる地球連邦の誇り、名誉を授かり、そして君自身が名声を得られ、英雄として慕われるであろう!!』
あらかじめ録音されたスケールが大きい軍音楽が流れながらベレー帽を被った中年の男の軍人が舞台演劇にでる熟練の演者のように僕に語った。
『地球連邦陸軍に入隊し、忌々しいトカゲの差別主義者のラセルティリア帝国と未だある共産の残りカスのマルクス・レーニン主義者どもの中華社会主義人民連邦を民主主義の守護神である我ら連邦軍の片足でアリのごとく踏みつぶそう!』
その時は僕は画面の前で石像のように立ちっぱなしだった。映像には別の屈強の兵士が地球連邦の旗をラセルティリア人と中華人の死体の山の頂に深く刺し、音楽とともに勇ましい顔つきで空を見上げる。
それが僕にとって、あまりも強烈で、刺激的で、誇らしかった。
陸軍に入隊することと一人前の大人になる気力が心の底から火山のように燃え上がってくるのをはっきりと脳に伝わった。
僕はもう子供なんかじゃない!兵隊になって今までバカにしてきた人たちに見返してやるんだ――
パキィッ!!
――突然、木の枝が大きく折れる音が耳に入った。記憶の世界から現実へと一気に引き戻され、職業病で反射的にホルスターからピストルを取り出し構えた。
前方から野太い唸る鳴き声が――それがゆっくりと茂みの中から現れる。
いたのは僕よりも二倍以上高くて、黒いオオカミみたいな見た目だけど目が四つあって全部血のように真っ赤だ。しかも大きい牙がいっぱい生えている。動物というよりも昔見たホラー映画のようなバケモノだった。
涎を垂らしながら近づいてくる。多分僕のことを高級料理みたいに見えてるからかな…。
「い、いや…いやだ…お願い、来ないで…来ないで!」僕の顔は汗と涙でグチャグチャニなっていた。ローレンスを抱きしめる力も強くなっているのを感じた。
どんなに乞いでも無視してどんどん近づいてくる。
そしてバケモノは吠えながら突進してきた。もうダメかと思って瞼を閉じたその時——
ズバッ!!
恐る恐る目を開くと視界の先には化け物の首が赤い結晶をまき散らしながら落ちていた。
「え…?え…?なにが起きたの―—」
「あ~~よくもちっせえガキを本能のまま襲いやがったな、このサウスイートウルフが。」
「おいそこのヘンテコな服着てるガキんちょ、怪我ねぇか?ん?」
僕の前にこの世界で初めて見る人間の女の人が視界に現れた。白い肌、綺麗な髪と顔、そしてセクシーさに思わず彼女の綺麗さに見惚れていた…きれい…僕よりも大きくて大人で、多分170前後だと思う。でも彼女が怖い人だということは何となくでわかった。
我に返った瞬間、僕は思わず銃口を女の人に。向けたのはいいものの手は震えていて照準が正確に定まらない。
「く、来るな!僕に近寄るな!!もし近づいたら、う、撃つよ!!」
「ちぇっ、なんだよせっかく助けてやったのに変な鉄の枝みてぇなのを向けやがって…生意気にもほどがあるぜ。でも冷静に考えたらこんなイケててスタイル抜群の美人で巨乳でエ゛ッロ˝いワルいオンナがガキの目の前にいたらそりゃビビるよなぁ♡…あっそうだ、イイこと思いついた♡」
彼女は何を思ったのかニヤニヤしながら前かがみになり、なんと銃口に額をくっつけた。僕は驚きのあまり「え?」と間抜けた声を出してしまった。
「この引き金を人差し指で引けばアタシの脳みそ吹っ飛ぶんだろ?そうだろ?ほらぁ、撃ってみろよぉ…できない?ふふっ♡」
人を弄ぶような小悪魔な顔を出しながら低く甘い声で挑発してきた。この女の人はあからさまに異常だということは言うまでもない。
パパの牧場仲間のルーカスおじさんよりも頭のネジが二、三本外れてるんじゃないか。
「めちゃくちゃ泣いてんじゃんか♡ いいよ、いっぱい泣いて?アタシがちゃんと拭いてあげるから♡」
彼女はそう言うと僕のピストルをゆっくりと慎重に取り上げ地面に置いた。彼女の細長い指は優しかった。さっきまでの挑発はなく、ただ僕のグチャグチャになった顔を柔らかく温かく撫でて癒してくれた。まるで怪我をしたときに優しくしてくれたソフィアお姉ちゃんとそっくりの柔らかさだった。
この温もりはいつぶりなんだろう…
「よしよし、怖かったな?でも大丈夫。お姉さんがついてるからな♡」
しばらく頭をポンポンと叩かれると疲れたのか温もりをたくさん感じたせいなのか強烈な睡魔が襲ってきた。瞼の上に金の延べ棒を何個も重ねられるように重い感覚がする。
そのせいで魂が抜けるように僕の身体は徐々に前傾姿勢になりそのまま倒れようとしたところ―――
「おっと、急に倒れんなよガキ。まったく…」
そう言いつつも僕が地面に倒れる前に彼女は優しく抱きとめてくれた。顔が豊富な胸にうずめいてるけど羞恥心はなく、ただお姉ちゃんに抱きしめられたときと同じとてつもない安心感と白い肌から伝わる温もりで心が一杯だった。
「見ず知らずのガキめ、よくアタシのパイに顔突っ込みやがったな。でもカワイイから許す♡」と言って、僕の髪をブラシで寝癖を直すように手を左右に動かした。
「すげぇ疲れてんだろ?ほら、このパイの温かさを思い知りながらおねんねしな♡」
その言葉と撫でる手のせいで余計眠気が酷くなり、瞼は完全に世界を遮断し、甘い夢の世界へと連れてこられた―――




