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《Re:第2章 第4話 継ぐものたち》

翌朝。

校舎の屋上は、まるで何事もなかったかのように穏やかだった。

空は澄み渡り、昨日の夜に舞い上がった桜の花弁の名残が、光の粒のように漂っていた。


ひよりはその中に立っていた。

制服の袖にはまだ、譜面の光がかすかに残っている。


――あの旋律の続きを、誰かが受け取る。


それが、彼女の最後の役目だと理解していた。


ポケットの中には、朋広がかつて残したメモがある。

「桜は記憶を結ぶ。

 だが、それを開く鍵は“想い”だ。」


ひよりは小さく笑った。

「……あの人らしい。」


風が吹き、髪が揺れる。

ふと視界の端に、見知らぬ男子生徒が立っているのが見えた。

彼の瞳には、桜色の光が宿っていた。


「あなた……その目……」


少年は一瞬だけ戸惑い、それから静かに頷いた。

「夢を見たんです。

 誰かが、音の中で泣いてて……

 その人が、僕に『繋げ』って。」


ひよりの胸が高鳴る。

確かに、旋律は彼へ届いていた。


「名前を、聞いてもいい?」

あらたです。——桜木 新。」


その名前を聞いた瞬間、

桜の花びらが一斉に舞い上がった。


光が弧を描き、ふたりの間に新しい譜面が浮かぶ。

それはまるで、昨日までの記憶が新たな未来へと書き換えられる瞬間のようだった。


ひよりは微笑んだ。

「継がれたんだね……桜魂。」


新は驚いたように彼女を見つめる。

「それって、何かの名前ですか?」

「うん。……想いを託す“魂”の名。

 もう、あなたの中にある。」


光が強まり、ひよりの姿が淡く透け始める。

「えっ、待って!」


「ありがとう、新くん。

 あなたなら、きっと守れる。」


その言葉を残して、ひよりは光の中に溶けていった。

桜の花弁が舞い散る中、

新はただひとり、その譜面を胸に抱いていた。


──それは、再び始まる物語の第一音だった。

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