《Re:第2章 第3話 光の記譜法(スコア)》
夜の音楽室。
窓の外は月光が滲み、ピアノの黒鍵が銀に光っていた。
ひよりは一人、机の上に譜面を広げていた。
昨日、放送室で見たあの光――
符号が繋がって浮かび上がった「再会」の文字。
それがただの偶然ではないと、直感で分かっていた。
五線譜をじっと見つめる。
音符の配置、符号の位置、休符の流れ。
そのどれもがまるで桜の花びらの軌跡のように見えた。
「この譜面……光を、記録してる?」
呟いたその瞬間、机に置いたペンが微かに震えた。
ペン先から淡い光が滲み、譜面の上に文字が浮かぶ。
──“継承”。
ひよりは息をのむ。
まるでこの場所自体が、桜魂の意思を持っているかのようだった。
指先が導かれるように動く。
旋律が流れ、音が生まれ、記譜線に新しい光が宿る。
音はやがて形を変え、譜面全体が淡く輝き出した。
ひよりはその光の中で、誰かの影を見る。
優しく、静かに笑う顔。
それは間違いなく、朋広だった。
『音を繋げ。記憶を超えて。
君の旋律が次の命を呼ぶ。』
声が心の中に響く。
涙が頬を伝う。
それでもひよりは演奏を止めなかった。
ピアノの音は次第に強く、深く、光を帯びていく。
そして――その最後の一音が響いた瞬間、
譜面が風に舞い上がり、桜の花弁へと変わった。
花びらが窓の外へ流れていく。
空に散りながら、一つの光の道を描いていた。
「……これが、桜魂。」
呟いた声は震えていたが、
そこにはもう迷いはなかった。
ひよりは光を見上げる。
その先には、誰かの未来が確かに待っている。
──継承の音が、静かに鳴り始めた。




