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《Re:第1章 第4話 風が運ぶ約束》
夜風がカーテンを揺らし、月光が白く部屋を照らしていた。
桐生ひよりは机の上のノートを見つめていた。
ページの端が微かに震え、文字が浮かび上がる。
――“僕はここにいる”。
それは誰かの筆跡。けれど、見覚えがあった。
指輪に触れると、胸の奥が痛む。
あの夢の青年。名前も、声も、すべてが遠く懐かしい。
ひよりは、窓を開けた。
夜気が流れ込み、桜の香りが広がる。
すると、不意に風が吹いた。
ノートのページが捲れ、また新しい文字が現れる。
――“約束を、思い出して”。
その瞬間、視界が一面の桜で覆われた。
校庭、屋上、並木道――
どこも満開の桜に包まれ、世界が淡く光っていた。
夢と現実の狭間で、誰かが囁く。
「君が忘れても、僕が覚えている。」
ひよりの瞳に、涙が滲んだ。
その言葉が、あまりにも優しかったから。
指輪が光る。
ひよりはそっと呟く。
「……約束、まだ終わってないんだね。」
夜空に花びらが舞う。
桜の風が、彼女の髪を撫でていった。




