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《Re:第1章 第2話 風の声、桜の記憶》

春の雨が止み、夜の空気に混じる花の匂い。

桐生ひよりは傘を閉じ、静かに空を見上げた。

「——また、夢を見たの」

誰にともなく呟く声が、濡れた石畳に溶ける。


夢の中で、彼女は知らない青年の影を追っていた。

顔は見えない。けれど、どこかで何度も呼ばれた気がする。

——朋広。

目が覚めても、その名前だけが胸の奥に残る。


桜咲学園の旧校舎裏に立つ一本の古桜。

その下にだけ、夜風がやさしく吹いていた。


桜の花びらがひとひら、ひよりの頬に触れた瞬間——

耳の奥で声がした。


『……継げ。』


振り向いても誰もいない。

ただ、桜の根元に、淡く光る“銀の指輪”が落ちていた。

拾い上げた瞬間、視界が一瞬白く染まり——


次に見た光景は、知らない教室。

古びた黒板の前に、誰かの影が立っていた。

「また……君なの?」

その言葉は、夢か現実かもわからないほど、あたたかかった。


ひよりは唇を噛みしめながら、その名前をもう一度呼んだ。

「……朋広、さん。」


夜風が吹き抜ける。

桜がざわめく。

そして、遠くで誰かが微笑んだ気がした。

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