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異世界現世、一人ぼっちの元主婦は最強能力者で、ただ幸せになりたかった  作者: 反射的な司馬懿


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星を降らせる者1

 いたい……いたい。


 腕から流れ出た血が固まり、周囲に掻痒感がある。


 ふと、触れると激痛が走る。


 放っておかなきゃ、でもこんなに痛くって、腕が腐ったら?腕がなくなっちゃったら?


 こわい、いたいよ。


 なにより、こんな所で上位能力者に襲われてしまったら。


 でも、今は人を殺せと支配するモノが消えた。


 誰かが多く殺したんだ。


 そのおかげで私は生きてる。


 くそ、帰りたい。


 いたい、帰りたい。


 帰りたい、帰りたいよ、台所に立って、料理を作って、美味しいねって彼と食べた……。


 じわりと涙が滲む。


 喉に痛みが込み上げて。


 それに耐えきれず私は声を出す。


 あの笑顔がみたい。


 もう、戻ることのない、あの時の、あの場所へ。





**********





 私はその日、ベランダに出て夜空を眺めた。


 変哲のない世界。


 見える景色は、以前の面影がある。


 破壊された街並みも、見慣れてしまったんだろう。


 でも、聞こえてこない電車の音。


 誰も運転してないし、乗っている人もいないんだろう。


 いや、車両は誰かの住処になっているのかも。


 そこに隠れてやり過ごせたらラッキーかもね。


 ふぅ、とため息が自然と出たんだ。


 その時、キラリと流れた星。


 私は、それが流れ星だったと、なにか願いが叶うのではないかと。


 一瞬の事。


 私はすぐに現実に引き戻される。


 そんな馬鹿げた気持ちを嘲笑うように、ハハっと乾いた息を吐いた。


 その瞬間だ。


 光る線が見えたと思ったらーーーー



 ドン!ドン!



 二回の音、ベランダから見通せる線路の前に、何かが降ってきたのか火柱が上がる。


 私は目を白黒させながら辺りを見回した。


 なぜ、今?


 戦闘が始まってしまったのだろうか?


 やばい、こわい。


 でも目を瞑ったら、もう私はいないかもしれないんだ。


 殺されて、なにもなくなる。


 苦しいのは嫌だ。


 怖い。


 一瞬の思考、ベランダから一目散に部屋へと戻った矢先、ガクンと膝が落ち込んで私は散らかった部屋に倒れ込んだ。


 恐ろしさに身体をうまく制御できなくて。


 でも、すぐに立ち上がる事が出来た。


 備えよう、殺されるなんてまっぴらだ。


 ふと見上げるとそこにはパチリと目を開けて重低音を奏でつつ私に頭を擦りつける『シシマル』がいた。


 無力な私を護るのは、大きいだけの毛むくじゃら。


 この猫のお化けだけ。


 とても戦ったりは出来ない、臆病な子。


 飼い主だった私は知ってる。


 でも、周囲には人を喰うモンスターにしかみえないから。


 その恐ろしいモンスターが巣食う家。


 その家として、私の家は破壊されず、侵略も受けずにいたんだ。


 その大きいだけの猫と共に私は刺身包丁を構えて、ごくりと唾を飲んだ。


 いつまで身構える?自殺の準備をしたほうがいいか?


 でも、私が死んでしまったらこの子はどうなる?


 だめだ、これ以上失いたくない。


 いやだ、死にたくない。


 ちゃんと、この子の面倒をみてあげなくっちゃ。


 彼が悲しむよ。


 瞬間、堪えようとしても涙が溢れる。


 そうだ、私はがんばらなくっちゃ。


 出来るところまで、やれる事だけ、でも、やるんだよ!



 私は震える手に握られた刺身包丁に目を落とした。


 こんなもの、奪われたら大変だ。

 

 こんな痛そうなもので刺されたくない。


 ここで襲ってくるのは人間だ。


 私の立ち振る舞いで叶うはずもない。


 冷静になれ、これはしまっておこう。


 戸棚に入れてパタリと閉じる。


 その音で私は目が覚めたような気がした。


 暗闇の中その後、なんら異変は感じられない。


 私はとうとう、緊張の糸が途切れてしまった。



「ちょっと、外もっかいさ、見てみよっか?」



 私はシシマルに聞く。


 もちろんシシは喋ったりしない。



「ね、まだ何か起こるって、分かったわけじゃないもん」



「…………」



「こわいね」



 そう完全に独り言ともいえない独り言を、口にしつつ私は再びベランダへ顔をだした。


 以前なら、ひょいと隙間を縫ってシシは脱走してしまっただろう。


 今は開け放しておいてもシシマルは、ここから出る事は叶わないんだ。


 先ほど燃え盛っていた火柱は姿を変え、煙を風に靡かせているだけだった。


 いったいなんだったんだろう……。


 ふと、空を見上げ星の瞬きを目に映す。


 変わらない、星空。


 宇宙は今どうなってるんだろう。


 そんな、分かりっこない事を思い浮かべて私は一つの星に向かって指差した。


 そして指揮者のように指を振る。


 私は何気なく、そんな事をしただけだった。


 そのはずなのに……。


 星が煌めき、燃え尽きる前に地表に降り立った。


 ドーンと音が響き、今度は線路の一部を粉々に破壊したのだった。



「……」



「……」



 私は無心で。


 全自動的に、指をかざして落とした。


 線路の先に見える人気のない道路を狙って。



 そこに落ちる。


 確かに落ちた。


 隕石のような衝撃と、響く轟音。



「や、やっちまったか?」



 私はすでに、これが自身の起こした事と理解していた。


 半信半疑でなく、殆ど信じられていた。


 ただ、想定の20倍ぐらいの大きさで私は今、破壊してしまったのだ。


 そして気付いた。


 ため息も、空笑いも、きっと星を降らせる。


 正に私は息を吐くように星を降らせるんだ。


 そんな力に私は、喜びと不安、期待と、絶望。


 猫が大きくなってから、彼が死んでしまってから、もう随分とこの世界を受け入れつつあったはずだ。


 いや、受け入れようと思ったわけじゃない。


 勝手に少しずつ順応していたんだ。


 でも、自身のこの力をどう使うのか。


 私は大いに悩んだはずだ。


 突如として、与えられた異能。


 私がこの世界で一番強いんじゃないかってくらいの、凄い力。


 漲るから感じるんだ、この全能感。


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