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第五夜 前座

 男は裏切られた。 自らが救った者に。

  男は願った。 より強い力を。より強い自分を。

  だが、彼は敗れた。 他人の幸せを願う、ただの少年に。

  その男の結末は――



 ◇



 遂にこの日がきた。勝負を受けたあの日から俺はモルトの力を引き出す為にいろんなことをした。ひたすら憑依しまくったり、型を打ち込みまくったり、滝に打たれたり、etc。

 だが振り返ってみると一番力を引き出せたのはカルロスと戦ったあの日のような気がする。

 なんと言うかよく分からないがあの時はひたすらに俺の全身が勝利を願っていたと思う。もちろん剣術は今の方が断然上だから、今の方が強いとは思うが...

 ないものは願ってもしょうがないので、今持っている力を全て引き出して精一杯頑張るつもりだが果たして勝てるのだろうか?


 この大会は火文明の中央政府が主催している。 参加資格は下部組織の協会員のみ――Bランク以下。ちなみに俺はCランクだ。 予選は4グループに分かれ、各組の上位2名が本戦へ進出する。 本戦の初戦は、各組の1位と2位がぶつかり合い、そこからはトーナメント形式。 ベスト4に入ればAランク昇格。つまり、本戦で1勝すれば合格ラインだ。 ……だが、俺の目標は「優勝」。そんなラインは関係ない。

 この大会は「埋もれた強者を見つけるため」と言われている。だからこそ、ベスト4までが昇格対象なのだろう。


「どう?自信の程は!」

 アガピが可憐な顔をニコッと笑わせながら聞いてくる。俺が途中で負けるとは微塵も思ってない様子だ。普通にいやめちゃくちゃ嬉しいのだが負けたらと思うと心にダメージがえげつないほど入りそうだ。

「うーん、まぁないと言ったら嘘になるな」

 取り敢えず適当に当たり障りのないことを言っておく。

「え、楽勝じゃなかったの?ていうかもっと楽天的に答えると思ってたんだけど....」

「そりゃあ先輩厳しいんだよな。簡単な試練を出すわけがない」

 そう言ったあと、少し間が空きアガピが何か思いついたような顔をしてニヤリと笑う。やっぱりかわいいなあ。

「大変ですね、兄貴」

「いや、急にどうした」


「予選第一組目開始まで30分です。出場する方は本部まで来てください」


 アナウンスが鳴った。もうそんな時間か。

「よし、じゃあ俺行ってくる!」

「うんうん、頑張ってね!」


 俺は予選第一組でパロスは2組だ。予選で当たることはないがそれでもどんな猛者がいるかはわからないから油断は禁物だ。本部に行くと100人ぐらいの人が集まっていた。これが4組あるというのだからいかに世界の広さが分かる。


「このフィールドの中に入ってください」


 全員が来たのを確認すると役員の人は俺たちを《Dの炎闘 アリーナ・カモーネ》の中に入れた。ちなみにこの《Dの炎闘 アリーナ・カモーネ》は視界を遮る効果は消されている。簡単ではないはずなのだがこの審判兼司会のお姉さんは簡単そうに行っている。だが俺はこの手のことは全くできないのでどれほどの高みなのか全く分からない。


「ではこれより2021年度デュエル・マスターズ予選を開催いたします。では中央政府の方のお話です」

「えー今日は実に良い大会日和ですね・・・」


 ・・・長い。長すぎる。こんなの聞いて何の為になると言うのか。協会主催の大会なのだからちゃちゃっと話してほしい。


「・・・今までの日々を思い出し力を出し切ってください」

「ありがとうございました。今大会は火文明のD・M(デュエル・マスター)様もご覧になっているのでぜひ頑張ってください!」


 話が終わると同時に上にある玉座からD・M(デュエル・マスター)が手を振る。それと同時に歓声や奇声が上がる。流石の人気だ。そして他者を圧倒する覇気を醸し出している。流石D・M(デュエル・マスター)だ。


「ではこれよりA組の予選を開始します。試合、開始ッ」


「ではこれよりA組の予選を開始します。試合、開始ッ!」

 ゴングが鳴る。 ……ん?全員が俺を狙っている? どうやら《銀河大剣 ガイハート》を警戒しているようだ。

 うーん、時間制限があるし、トーナメントがあるから出来るだけ温存したかったのだがしょうがない。

 俺は《龍覇 グレンモルト》を憑依させる!

 動きが見える。見えるぞ。 襲いかかってくる者たちは歴戦の戦士のようだが、太刀筋がはっきりと見える。 ただ、数がちょっと、いやけっこう、やっぱめっちゃ多い。だが連携されると厄介だが、連携には穴がある。足跡を辿れば、突破口は見える。


「ちょっと!何バカ真面目に全員を相手取ってんのよ!」


 アガピが可憐な顔を歪めて叫ぶ。そりゃあ、傍から見れば無謀だろう。

 だが――漢には、やらねばならぬ時がある!

 十数分後、同士討ちを誘導し、なんとか全滅させた。

  ……と思ったら、目の前にゴシックドレスのツインテール黒髪美少女が現れた。 なかなか可愛いが、アガピには及ばない。

「ふふふ、お疲れのようね。外の女の子も言ってたけど、ダメよ?ちゃんと頭を使わないと」

 くねくねと体を捻らせて妖艶さを演出しようとしているが、ただのくねくねだ。 ニタニタ笑ってくる。なんだか腹が立ってきた。もしかして……オバサン?

「誰がオバサンじゃい!私はこの間まで20代だったのよ!」

 ……口に出ていたようだ。ていうか、オバサンじゃないか。

「おのれぇぇぇぇええ!!来なさい!!《百万超邪クロスファイア》!」

 怒り狂って襲いかかってくる。スピードは速いが、動きが幼い。 ただ手足をブンブン振り回しているだけ。これなら受け流してカウンターを取れる。

 フェイントを仕掛けてきた。知能はあるようだ。 だが、単純すぎて手に取るように分かる。おそらく今までゴリ押しでやってきたのだろう。だが鍛錬を真面目に積んだ俺には通用しない。

 その後は特筆すべきこともなく、《銀河大剣 ガイハート》で斬撃を浴びせていたら、彼女は泡を吹いて気絶した。 マナ切れだろう。傷はつけられなかった。 おそらく、俺が《ガイハート》や《グレンモルト》の力を引き出せていないのだ。

 このままでは、負けるかもしれない―― こうして俺の予選は終わった。さて、決勝トーナメントはどうなることやら。

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