第四夜 会合
ちなみに火文明の住人は100人に1人が協会員、その1000人に1人がAランクです。まあ10人もいないということですねえ。
彼らは火文明、仲間の結束が強く一瞬の輝きを愛する者達。そして火文明のD・Mの称号を持ち、団長の力を勝ち取った者、その名はエパナと言った。
◇
先輩と任務をし始めて1ヶ月ほどが経った。大体の時間は任務を手伝っているか訓練をしているかで、大変過ぎて飯も口を全然通らないが、剣術はなかなか成長していると思う。最初の方は全く打ち返せずボッコボコにされていたが、今では反応できたり、ごくたまに打ち返せたりする。ちなみにクリーチャーを憑依させた状態だと歯が立たない。アガピはまた別の人に呪文の修行をしてもらっているらしい。そして俺はもっぱら戦闘訓練だ。
「この1ヶ月で随分マシになったな。だが俺たち決闘者はクリーチャーの力を使いこなしてこそだ。どうやらお前は力を1%も使いこなしていないようだ。俺の最後の試練はこれを最低でも10%にする、これができれば晴れてお前も1人前だ」
「先輩は何%なんですか?」
「30%ほどだ。まあ、そんなことはどうでもいい。お前の目標は故郷を滅ぼしたカイロスの抹殺だったはずだ。おそらくそいつらは俺と同等かそれ以上の強さを持っている。少なくともクリーチャーの力を10%以上使いこなさないと話にならん」
「それで、試練はなんですか?」
「そう急ぐな。試練はこれから3ヶ月後にあるトノア大会で優勝を掴み取れ」
トノア大会は火文明で行われる1年に一回開かれる武闘大会だ。参加資格は協会に属するbランク以下の騎士で、毎年非常に高いと言われている。また、優勝すればAランクの資格を得ることができる。
「実践は訓練の数十倍効率がいいと言われている。この大会を通して成長し、優勝してみろ。まあ、この程度の試練を突破できないようではお前の仇を倒すなんざできないだろうがな」
「任せてくださいよ、やってみせます!」
◇
・・・みたいな会話があってそのノリでペラセ支部に来たがいつ開催されてどこで申し込めばいいのかも聞いていなかった。なんていい加減なんだ。・・・お互い様だという声が聞こえてきた。
「ホント呆れるくらい将来のことを考えないのね。いつかそれが首を絞めるわよ」
アガピが言ってきた。3日に一回ぐらいは会っているのに久しぶりに会った気がする。もう少しで禁断症状が出るとこだった。そんなことを話したら引かれるので黙っておく。
「ところでアガピは何を修行していたんだ?」
「えっとね、呪文の唱え方には3つあるんだけど大体全部のやつをやったよ」
「無詠唱か詠唱するかっていうことか?他の1つはなんなんだ?無詠唱ってなんかデメリットはあるのか?」
「えっと、2つはそれであってるよ。もう1つはねカードを媒体にして発動させる方法だよ。これはマナを使うだけだから楽なんだよね」
まずい、アガピがかわいい。全く話が入ってこない。
「それでね無詠唱の話は、呪文を発動させるのはイメージが重要なんだけど、詠唱をすることでその補助をすることができるんだよ。イェネロスはどんなことをしたの?」
聞き返されて思わず俺はビクッとなる。
「俺は・・・」
というかんじでカウンターに向かって話を聞きに行っていると同じぐらいの歳の少年と少女がこちらを向いていた。
「待ちくたびれたぞ!!」
そいつはバッチリ俺の方を見ていた。面倒そうだ。
「・・・ええと、どちら様ですか?」
「隣の村に住んでいたパロスだ、覚えてんだろッ!」
誰?と俺たちは顔を見合わせる。
「あ〜そこにいるのはアガピちゃん!?久しぶりー!」
「ペリバちゃん!?久しぶりだねー!」
「私が説明するね。パロは模擬戦のリベンジがしたいのだけどそれよりも久しぶりに再開できた嬉しさが勝っちゃって喧嘩腰で話しかけないと顔がニヤけちゃうからそうしてるってワケ」
「うるせえよ、適当なこと言うんじゃねえ!」
「あら?本当のことを言ったまでですけど?」
そう、思い出した。この2人は隣の村に住んでいた幼馴染に近い存在だ。両親が仲が良かったみたいでたまに会っては模擬戦をしたりしていたのだが、隣の村の人たちは元気にしてるだろうか。
久しぶりに会ったが仲が良さそうでほっこりしているとこちらの方をパロスが向いてきた。
「前回はお前の勝ちだったからな、勝ち逃げは許さねえぜ!今では《爆山伏 リンクウッド》も扱いこなせるようになったしな!」
「ほう、いいだろう。圧倒的な実力を見せてやるッ」
こうして俺たちは3ヶ月後の大会に向けて準備するのだがまさか大会があんなことになるとは思いもしなかった。




