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第十一夜 終幕

 例え世界が貴方を嫌っても私は貴方を愛します。

 例え全てが貴方を拒んでも私は貴方を受け入れます。

 例え貴方が自身を嫌っても私は貴方を認めます。

 例え貴方がこの世を去ろうとも私は貴方の意思を継ぐ。

 私の名前は◯◯◯◯◯◯、全ては永遠なる人類の平和のために。



 ◇



「お前たち、さあ暴れろ! アウトレイジの名を世界に轟かせるのです!」


 ピチリキの声が路地に響いた。

 その声音には高揚と緊張が綯い交ぜになっており、命令を受けた部下たちは一斉に散っていく。

 作戦は単純だ。

 王族・貴族の屋敷と商会への奇襲。

 しかし動員されたのはアウトレイジの中でも名の知れた精鋭。

 ピチリキ自身も胸が熱くなるほどの、大規模な作戦だった。

(どうでもいいんだよ、世界を壊すとか、新しい秩序がどうとか…

 私が欲しいのは“幹部”の座。贅沢な暮らし、権力、金…ただそれだけ)

 しかしその期待の最高潮──。


「やあ、嬢ちゃん」


 気だるげな声がした瞬間、空気が変わった。


「冗談はいいからさ、そんな物騒なのやめて、俺らに捕まってくれない?」

「……誰だい、あんた」


 薄く笑う男が立っていた。

 ひょろりと背が高いが、緊張感のない姿勢。

 だが、身にまとった制服だけは本物だった。


「お前…騎士団か! それも隊長格だな」

「そうそう。僕の名前はストラティオ。王立騎士団の隊長をしてるよ。

 できればさ、面倒ごとは嫌なんだ。だからさっさと投降してくれると嬉しいんだけど」

「はッ、お断りだよ! 私もね、引き下がるわけにはいかないんだよ!」


 ストラティオは肩をすくめた。


「だと思った。じゃあ交渉決裂だね。部下に告げます──掃討開始。

 シノビと連携して制圧。捕縛はできれば、でいいよ」

「へえ、舐めてくれるじゃないか!」

「うん、そういうのもういいから。死ね」


 ピチリキは息を吸い、魂の奥で繋がった存在を呼び覚ます。


「《新世界 シューマッハ》──憑依!」


 淡い光が全身を包み、マナが一気に引き上がる。

(エリート貴族上がりの坊っちゃんなんかに負けるわけないんだよ…!)


「《地獄スクラッパー》!」


 地面が震えるほどのマナが前方に押し出される。

 一気に距離を取らせず潰すつもりの必殺だ。

 しかし──

 ストラティオの姿が、消えた。


「僕、残業嫌いなんですよ。だから手早く終わらせますね」


 背後から声。

 次の瞬間にはもう目前にいた。


「なっ──はや…!」


 鋭い剣筋が幾度も彼女の動きを封じる。

 斬りつけというより“崩すための打撃”に近い連撃。

 間合いに入った瞬間、マナのリズムすら乱される。


「ぐっ…!」


 距離を離そうとマナを練る。


「《バーニング・フィンガー》」


 指先から走った熱線が、ちょうど逃げ道を塞ぐ位置に走った。


「クッ、まだだ…!」

「無理だよ」


 ストラティオは淡々と言い放つ。

 その表情には、焦りも殺意もない。ただ“早く終わらせたい”という退屈さだけ。

 彼は軽い調子で言う。


「呪文ってさ、強いほど発動に時間かかるじゃん?

 本当に思うんだけど、殴ったほうが早いよね」


 ピチリキは膝をついた。

 視界がぐらつく。

 だが──諦める気はさらさらなかった。


(痛い…でも、こんなのどうってことない。

 私は何度もすべてを失った。

 それでもここまで来たんだ。生きてさえいれば──)


「ククク…私を見逃せ。

 さもなければ、お前たちが忠誠を誓う貴族どもが──」

「……勘違いも甚だしいな、我──」

「それはない」


 その声はすぐ背後から聞こえた。

 振り向くと、フードを深くかぶった銀髪の少女。

 十代後半ほどだが、その場の空気が一気に引き締まるほどの存在感があった。


「なっ、いつのま──」

「お前の部下は全員制圧した。観念して全て話せ」

「ゼロ殿、それは本当ですか?」

「ええ。部下に回収させた。詳細は後で。

 ……それにしても匂うね。陽動の可能性は?」

「貴族の屋敷は全て確認したが…王城は?」

「逆に聞くが、皇帝陛下を倒せる者がこやつらにいると思いますか?」

「まあ…それもそうか」


 ──その時だった。

 轟音。


「!! 協会本部の方向!」

「ああ、急ぎましょう!」


 二人はピチリキを部下に任せ、すぐさま駆け出した。


 ◇



 デュエル・マスターが《革命の鉄拳》で辺りを粉々にする。しかしズリエボの死体はなかった。


「ち、逃したか」


「…何が起きたの?」


 突如大男を担いだ銀髪の美少女が建物に入ってきた。


「お前さんこそ何もんだ?」


「僕がここは説明しましょう。彼女は私たちに協力していただいている裏組織、シノビの現場隊長です」

「この様子だと逃したか、はあ、お前がもっと速く走れば間に合ったのに」

「しょうがないでしょ。あれでも私の最高速度だったんですよ」


 ストラティオが手をひらひらさせて言う


「まあ、みんな生き残ったんだ。万々歳だ!お前ら!祝勝祭だ!酒飲みに行くぞ!」

「こらこら何勢いで逃げようとしているんですか?貴方には此度の件の報告の義務がありますよ」

「うっせえよ!そもそもお前らがちゃんと守っていたらこんなことならなかっただろうがよ!」

「おや?「協会は独立した機関だ!」とかなんとか言ってたのは誰でしたっけ」

「僕忙しいからさっさと終わらせようよ」

「それもそうですね、さっさと行きましょう」


 こうしてデュエル・マスターは連行されていった。まあ、決勝戦はなんだかんだあって結局逃げられたけど生き残ったんだから勝ちとしよう。


「よし!師匠も誘って飲みに行こう!」



 ◇



「ではイェネロスの優勝?を願って乾杯!」


 俺たちが今飲んでいるのは王都で5本指に入る有名酒屋「黄金の食卓」各所から周ってくる地酒やおつまみがうまいと有名な老舗だ。残念ながら用事があって試合を観ることはできなかったが駆けつけた師匠が俺が優勝?したことを聞き奢ってくれることになった。


「お前ら飲め飲め!」

「本当に私たちも奢ってもらっていいんですか?」


 とペリバが聞くも既に酔いかけの師匠が気分よく言う。


「当たり前だ!お前らも頑張ったらしいじゃないか!」


 やはり師匠は酒に弱いみたいだな。

 酒は香りが深く、後味に柔らかい甘みが残る。

 つまみの燻製肉との相性も抜群で、思わず箸が進んでしまう。


「まあこれでお前も卒業だな。よく頑張った。お前もこれで1人前だ」

「ありがとうございます」

「これからも壁にぶつかることもあるだろう。そんな時はよく悩んだり、仲間を頼ったりするんだ。お前は一人でなんでも抱えるからな」


 う、図星だ。これからはちゃんとしよう。



 ◇



「よし、お前ら、腹一杯食ったな、それじゃあ俺はそろそろ帰らせてもらうことにするよ」

「師匠、すみません、全て払って貰って」

「いいって別に。使うものもなかったしな」

「今まで本当にありがとうございました」

「ああ、それじゃあまたな」

「ええ、また」


 こうして俺はAランク決闘者(デュエリスト)として戦っていくことになったのだった

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