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俺のフラれる動画がバズったら、他校で有名な美少女たちが殺到しました  作者: 本町かまくら


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第40話 弁当以下のビッチ


 片瀬が上目遣いで俺のことを見てくる。


「なにしてるのぉ~?」


 ニコッと微笑む片瀬に視線をやりながら、白米を箸でつまむ。

 冷えててもちゃんと美味しかった。


「む、無視しないでほしいかなぁ~?」


「あ、悪い。昼ご飯食べてたから」


「お昼ご飯食べてたんだぁ~……って、なんかすっごい豪華じゃなぁい?」


「そうだな」


 俺もそれに関しては同感だ。


「ふふっ、童貞くんのママはお料理上手なんだねぇ~」


 そう言いながら、片瀬が俺の隣に座ってくる。

 鼻腔をくすぐる甘い香り。おそらく香水だろうか。

 しかし、あまりにつけすぎていて匂いがかなりキツい。


「ねぇ、童貞くぅん。君、本当に童貞くんなのぉ?」


「え?」


「ふふっ、心配しなくても大丈夫だよぉ?」


 クスッと笑うと、片瀬が俺の耳元で囁いた。



「由美は、童貞の方が好きだからさぁ?」



 片瀬の生暖かい吐息が耳にかかる。


「そうか」


 俺は短く答えると弁当を食べるのに集中し始めた。

 それにしても、弁当に入ってるもの全部が美味しいな。


「……へ?」


 ひたすら弁当を頬張る俺に、ぽかんと口を開ける片瀬。


「そ、それだけぇ?」


「それだけって、なんだ?」


「……あ、あれかなぁ? 前に由美たちが動画上げちゃったこと怒ってるぅ? 怒ってるよねぇ?」


 俺が咀嚼していると、片瀬が「そっかぁ」と呟き、俺との距離を縮めながら言い始める。


「あのときはごめんねぇ? 由美たちも魔が差しちゃったっていうかさぁ? でも、もう童貞くんのこといじめたりしないしぃ? 少なくとも、由美は童貞くんのこと馬鹿にしたりなんか……」



「動画の件はこれっぽっちも気にしてない」



「…………へ?」


 またしても間抜け面で口を開ける片瀬。

 俺は再び弁当に集中する。それにしても美味しいな。


 味付けの感じからして、雪宮が作ってくれたんだろう。

 さすがお嬢様と言うべきか。料理も完璧なんて本当にすごい。


「(う、嘘でしょぉ……全然由美に見向きもしてくれないんだけどぉ……でも、こうなったらぁ……)」


 片瀬がさらに近づいてくる。

 短いスカートからさらけ出された太ももが俺の太ももにピタリと触れていた。


「ねぇ、童貞くぅんっ」


「?」


 片瀬の顔が、俺に密着する勢いで距離を縮めてくる。

 さらに片瀬が俺の太ももに手を置いた。

 そしてゆっくりと撫でまわしてくる。


「由美ねぇ? 童貞くぅんにお詫びしたいなってずっと思っててさぁ?」


 片瀬がさらに身を乗り出す。

 俺がのけぞらなければ間違いなく顔と顔がくっついていた。


 そんな状態で、片瀬が色っぽく呟いた。





「由美が童貞、捨てさせてあげようかぁ?♡」





 片瀬が魅惑的に俺の目をじっと見てくる。

 俺の太ももに触れていた片瀬の指が際どいところへスライドしていった――そのとき。



「ごちそうさまでした」



 手を合わせ、重箱弁当の蓋を閉める。


「…………へ?」


 呆然とする片瀬をよそに、完食した弁当を三つ持って立ち上がった。


「じゃ、俺戻るから」


 片瀬の返事を待たず、その場から立ち去る。

 片瀬は口を開けたまま、何も言わずに俺の背中をじっと見ているのだった。





     ♦ ♦ ♦





 ※片瀬由美視点



 立ち去っていく童貞くん。


 由美はただただ童貞くんの背中を見ていることしかできない。

 だってあまりにも予想外すぎて、衝撃が抜けないから。


「嘘、でしょぉ……」


 由美はちゃんと童貞くんのことを誘惑した。

 男の子が大好きな香水だっていつも以上につけてきたし、スキンシップからお誘いの流れは正直完璧だった。


 あれでいっつも男の子は由美に落ちて、ただ由美に腰を振るだけの獣さんになるだけなのに……。

 しかも、経験上、童貞なら食いつきは二倍……いや、五倍以上だ。


 なのに……。


「な、なんでぇ⁉」


 ありえない!

 ありえないよぉ!


 だって由美だよ⁉

 こんなに可愛い子に迫られたら、獣さんになるしかないでしょぉ⁉


 それなのに、童貞くんは由美に見向きもしなくて、何なら弁当の方に集中してたしぃ……!


「おかしいぃ!」


 こんなのおかしいよぉ!

 由美は可愛いのに……。

 こうやって何人もの男を落としてきたのにぃ!


「……童貞くんのくせにぃ」


 由美のプライドを傷つけるなんてほんと、許せないよぉ……。


 でも、ここで諦めるほど由美はただか弱くて可愛いだけの女の子じゃない。


「ふふっ、俄然燃えてきちゃったぁ」


 二度と由美以外の女の子のこと好きになれないように、由美を童貞くんに刻み込んであげる。

 覚悟してね……ふふっ、童貞くぅんっ♡










 放課後。


 由美ったらいっけなぁい。

 ボーっとしてたら童貞くんのこと見逃しちゃってたぁ!


 だから慌てて教室を出て、童貞くんを追いかける。

 そしたら校門前で童貞くんに追いつけて、由美は可愛く声をかけてあげた。


「待ってよぉ~! 童貞くぅん!」


 由美の掛け声に、童貞くんが止まる。


 やっと由美の魅力に気が付いたんだねぇ。

 さっきのは照れてるだけだったのかなぁ?

 ふふっ、仕方ないよね。だって童貞なんだし……と、思ってたんだけど。



「誰ですか~? この化粧が濃いおばさんビッチは」



 童貞くんの前に割り込んでくる女子生徒。


「なっ……」


「どうも! 水樹先輩の正妻こと、桜川桜子で~す!」


「正妻?」


「そこは疑問持たないでくださいよ~!」


 童貞くんに仲睦まじげに言う、由美でも知ってる翠高の有名人――『桜月の天使』。


「っ……!!!」


 やがて桜川ちゃんは私を見てニヤリと小悪魔的な笑みを浮かべると、挑発するように言ってきた。



「ってか何の用ですか? 私の水樹先輩に」



「ッ!!!!!!!!!!!!!!」


 こ、このぉ……!!!




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