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俺のフラれる動画がバズったら、他校で有名な美少女たちが殺到しました  作者: 本町かまくら


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第30話 壊れたプライド即回復


 ※海藤葉月視点



 膝から崩れ落ちる。


 心にぽっかりと穴が開いたような喪失感。

 そして重力のように降り注いでくる絶望感は、感じたことがないほどに重かった。


「な……」


 あ、ありえない。

 三人が俺ではなくあの水樹を選んだこと。

 そして俺に向かって「クソブス」とか「つまんなそう」とか、「興味ない」とか遠慮のない暴言を吐いてきたこと。


 そのすべてが信じられなかった。

 

 これまでの人生で、俺は常に誰かに求められてきた。

 それほどに自分容姿は優れていて、ぶっちゃけそこら辺の芸能人よりはイケメンだと思ってる。


 だからこと女の子関係において、俺が誰かに負けたことなんてなかった。

 俺が付き合いたいと思えばその子と必ず付き合えた。

 街で逆ナンされたことだってあるし、対戦校のマネージャーに連絡先を聞かれたこともある。

 そんなの日常茶飯事だ。


 そんな俺が……。


「……負けた? あのクソ陰キャに? お、俺が……?」


 三人に全く相手にされなかった。

 正直、三人の噂を聞いてそのうち手を出すつもりだった。

 だから今がいい機会だと思って、陰キャの仕返しついでに落とそうと思ったのに……嘘だろ?


「あ、あはははは……」


 乾いた笑みがこぼれる。


「は、葉月っち大丈夫ぅ……?」


 由美が俺の顔を心配そうにのぞき込む。

 

 俺が心配されてる?

 は?

 俺だぞ? 海藤葉月だぞ?

 女子の憧れ。注目の的。

 常に誰かに羨ましがられて、引く手あまたの俺が、あんな奴に……!







「――ッ!!!!!!!!!!!!!!」







 思いきり鞄を殴りつける。

 拳がひりひりと痛んだ。


「は、葉月っち……」


「は、葉月ィ……だ、大丈夫かァ?」


 必死に怒りを鎮める。

 今苛立っても仕方がない。


 ……けど。

 俺のプライドが傷つけられた。

 その事実が、俺には到底受け入れられなかった。


「………うん、大丈夫」


 そう答えるも、頭の中は水樹に対する苛立ちに支配されていたのだった。





     ♦ ♦ ♦





 ※海藤葉月視点



 翌日。


 パックのストローをガミガミと噛みながら廊下を歩く。

 俺の苛立ちと屈辱感はまだ拭えていなかった。

 

「(俺の方が絶対イケメンなのに、絶対男として優れてるのに……)」


 割れかかったプライドが心を締め付ける。

 俺は常に冷静沈着で、落ち着いていて、大人で。

 余裕があってとにかくイケメンで、みんなの憧れのはずなのに……。


「……チッ」


 何とか苛立ちを沈めようとジュースを吸い上げる。

 するとふと、視線を感じた。

 それは前の方の教室から出てきた女の子二人組からで。


 俺を見ながらキャッキャッしており、アンテナがビビっと立つ。

 この感じを、俺はよく知っている。


「俺に何か用かな?」


「「っ!!!!!」」


 爽やかな笑みを浮かべてすかさず話しかける。

 二人は驚いたように目を見開き、やがて表情をパーッと明るくさせた。


「え、えっと……か、海藤先輩ですよね⁉」


「うん、そうだよ」


「じ、実は私、こないだの試合見てて……か、カッコよかったなって……!」


「わ、私も見てました! 海藤先輩抜群に上手くて、一番輝いてて……やっぱりカッコいいなって思いました!」


「っ!!!」


 心がふっと軽くなる。

 

 ……これだよ、これ。

 これなんだよ!

 俺のあるべき姿はこれだ!


「あはははっ、ありがとう」


「「キャーーーーー!!!」」


 明らかに俺に好意を持った視線と声。

 あぁーヤバい。

 壊れかかってたプライドが一気に修復される。


 そうだよ、俺はモテるんだよ。

 イケメンなんだよ。

 

 アイツがどれだけ時間をかけても追いつけないほどに、群を抜いてイケメンなんだよ!

 俺は水樹より上!

 間違いなく上なんだ!


「あの……れ、連絡先とか聞いても……」


「うん、いいよ」


「いいんですか⁉ じゃ、じゃあ……」


 人から向けられる好意が気持ちいい。

 あぁ……最高だぁ……。





     ♦ ♦ ♦





 自販機でお茶を買い、教室に戻る道中。


 スマホが二回振動し、見てみると桜川からのメッセージだった。

 トーク画面を開き、内容を確認する。


「……ん?」


 一つ目はメッセージではなく、まさかの桜川の自撮り写真。

 昼ご飯を食べているのだろうか。

 サンドイッチを手に持って、上からのアングルで撮られた写真は桜川のあざと可愛さが詰まっていた。

 ……が。


「なんだこれ」


 意図が全くわからない。

 

 そして二つ目は、ボイスメッセージ。

 三角をタップし、再生する。



『あ、先輩。今、私の自撮り写真見て可愛いって思いました? 思いましたよね? そういえば男の人って、可愛い女の子の食事シーンに興奮しちゃうらしいですよ? ……先輩、興奮してますね? ふふっ♡ いけない先輩ですねぇ~』



「……なんだこれ」


 さらに訳が分からない。

 一体桜川は、どういう意図があって俺にこの二つを送ってきたんだろう。

 一度真剣に考えてみるも、見当もつかなかった。


「…………まぁ、いいか」


 なんて返すのが正解かわからなかったので、何も返さずスマホをポケットに戻す。

 そしてペットボトルのキャップをひねっていると、




「あ、水樹!」




 声を掛けられる。

 声の方を見ると、そこにはニコニコの海藤と興奮気味の女子生徒二人が立っていた。





――――おまけ――――



「…………」


「…………」


「…………」


「………………あ、あれ⁉ せ、先輩から返信がない⁉ しかも既読スルー⁉」


「…………………………な、なんで⁉⁉⁉」


 一人、スマホと睨めっこしながら大焦りの桜子だった。




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