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俺のフラれる動画がバズったら、他校で有名な美少女たちが殺到しました  作者: 本町かまくら


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第23話 嫉妬デスパレード


 俺たちの目の前に立つ太った男子生徒。


 オドオドしながらも俺と桜川のことを見ていた。


「な、なんで? どうしてそ、そんな男と一緒にいるの……?」


「それ、木村に言わなきゃいけないの~?」


「っ! い、言わなきゃいけないとかじゃな、なくて……ぼ、僕は心配なんだよ、桜子ちゃんが……! そいつな、ナリ高の奴でしょ? あ、危ないよ。あんなば、バカ高に通ってる奴と一緒にいるなんて……し、しかも二人とか……」


 男子生徒が俯く。

 桜川はあからさまにため息をついた。


「……あのさ、そういう彼氏面するのやめてくれない? 木村ってただ私と同じクラスってだけだよね~?」


「っ! ……で、でも僕にあれだけ優しくしてくれたし……さ、桜子ちゃんは僕に対して好意的に思って……」


「私、みんなに優しい女の子なんだよね~? 誰かが特別とか、そういうのないし。だって誰か一人を特別にしちゃったら、悲しい人たくさんになっちゃうでしょ? わかるよね?」


 ニコニコしながら桜川が言う。

 しかし、桜川の目は一切笑っていなかった。


 それに気が付いていないのか、男子生徒は息を漏らしながら続ける。


「そ、そんなこと言って……ぼ、僕はわかってるから。桜子ちゃんの気持ちとか、ぜ、全部……だ、だから桜子ちゃんはぼ、僕が守るし」


「木村に守られる必要ないから~」


「で、でも僕が……」




「――っていうか」




「っ!!!!」


 桜川の雰囲気が刺々しいものに変わる。

 

「最近しつこいからはっきり言うけど、ちょっと優しくしたくらいで勝手に彼氏面してくるのやめてくれない? ってかなんでここにいるの? もしかして私のことつけてきたの?」


「ち、違うよ桜子ちゃん! ぼ、僕は桜子ちゃんが心配で……それだけで……!」


「だから、そういうのやめてほしいって言ってるんだけど。わからない? あと、普通に木村のやってることストーカーだから。はっきり言っちゃうけど……気持ち悪いよ?」


「っ!!!! さ、桜子ちゃぁんぅ……」


「ちょくちょく私のことつけてるよね? ほんとにやめてくれる? これ以上つきまとうなら学校に相談するから」


「そ、それは……」


「私も別に大事にしたくないし? 優しい桜子ちゃんは当然、木村にもチャンスあげるからさ~? とにかく、これ以上私につきまとわないでくれる?」


「っ!!!!」


 顔を歪める男子生徒。

 額には汗がぶわりと滲んでいて、地面にぽたぽたと垂れていた。


 この男子生徒は、一体どうして桜川にこんな忠告をしているんだろう。

 ストーカーになってしまうほど、桜川が好きなんだろうか。

 そんな気持ちになったことがないから、全く理解できない。


「…………クッ」


 男子生徒が俺を睨むと、立ち去っていく。

 男子生徒の姿が見えなくなると、桜川は一息ついた。


「すみません、嫌なところを見せてしまって」


「いや、いいけど」


「あはは……困っちゃいますよね。校門での一件といい、みんなに好かれるのは嬉しいんですけどあぁやって度が過ぎちゃうことが多いんですよね……私」


「それは桜川が優しいからじゃないか?」


 俺が言うと、桜川は驚いたように目を見開く。

 やがてぷっと笑い始めた。


「あはははっ、その考えはなかったですね! ……でも、みんなに優しいのが私のポリシーというか、魅力だと思うので! ふふっ、そ・れ・と。私が可愛すぎるのがいけませんね~!」


 にひひっと笑う桜川。

 少しして、一瞬沈んだような表情を見せた。



「……でも、さすがにこういうのはちょっと困っちゃいますけど」



 桜川はそう呟くと、再び歩き始めるのだった。





     ♦ ♦ ♦





 翌日。


 昼休みに自販機でお茶でも買おうと廊下を歩く。

 しかし、俺はあまり気持ちのよくない視線を向けられていた。



「なぁ、アイツだろ? 『桜月の天使』も落としたっていう」

「翠高の三大美少女に校門で待たれるとか羨ましすぎね?」

「でもなんでアイツ? ただのクソ陰キャじゃん」

「さすがに見る目なさすぎね?w」

「普通にムカつくよな、なんでアイツが……」

「絶対調子乗ってるよな」

「惨めな動画バズったと思ったら、急に……」

「マジでキメェわ。あんな奴より絶対俺の方がカッコいいだろ」

「桜川ちゃん俺の推しなのに……ムカつくぅ……」

「俺の『白銀の女神』が……」

「『常夏のプリンセス』だって、アイツと仲よくして……!」



 どうやら俺は嫌われ者になったらしい。

 今まで誰も存在を認識していないような、空気みたいな存在だっただけにこの変化は著しい。


 でも、よくわからなかった。

 俺にそこまで憎悪の感情を抱く理由が。

 ただ単純に羨ましいんだろうか。

 容姿の優れた雪宮たちと話していることが。

 でも、だからってこんな……。


 思考を巡らせていると、前から足音が聞こえてくる。

 俺の目の前で止まると、薄ら笑いを浮かべながら俺のことを見下ろしてきた。


「よぉ、クソ陰キャくんwww」


「こないだは随分と俺たちのことをコケにしてくれたなww」


 チャラそうな姿を見てようやく思い出す。

 この人たちは昨日、校門で桜川をナンパしていた上級生三人組だ。


「別にコケにしてないです」


「っ! その余裕そうな表情……調子乗ってやがんな? お前」


「調子にも乗ってないです」


「ッ!!!!」


 イラついたように顔を歪める三人。

 やがて余裕そうにニヤリと口角を上げると、後ろを指さしながら言った。




「……お前、今からちょっと付き合え。わからせてやるよ……お前がどれだけちっさい人間なのかっていうことをよwww」




 

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