第15話 面白れぇ女
竜崎が息を切らし、顔を真っ赤にして俺を睨む。
……はぁ、面倒なことになる予感しかしない。
「おいクソ陰キャ!! どうなってやがんだよォ!!!」
「落ち着いてくれ竜崎。これは……」
「なにテメェがなだめる側に回ってやがんだァ⁉ ふざけんじゃねぇ!!! 俺様を見下すなゴラァッ!!!!」
ダメだ。完全に話が通じない。
竜崎はクラスで見ているだけでもわかる脳筋男。
こんなのただの“輩”だ。
「フゥー……フゥー……!!!」
息が荒い竜崎。
すると隣の西海が心配そうに俺の服の袖をつかむ。
「だ、大丈夫? この人、さっくんの友達? じゃない……よね?」
「ッ⁉⁉⁉ さ、さっくんだとォ⁉⁉⁉⁉⁉」
目が血走る竜崎。
今度は西海に目を向ける。
「なんでコイツのことさっくんとか呼んでんだよォ⁉」
「なんでって、アタシがそう呼びたいから?」
「そう呼びたいからァ⁉」
反応がうるさすぎるオウムみたいだな。
「どどどどういう関係なんだよコイツとォ! そう呼びたいってことは相当ォ……」
「どういう関係って……難しいなぁ。ね、さっくん?」
「うーん、一度話したことがある人、とか?」
「友達でもなかった⁉ アタシとしては出会い方もそうだしぃ? 友達以上はさすがにあるかなって思ってたんだけどな~」
「友達以上ォ⁉⁉⁉」
西海が無邪気に笑みを浮かべる。
「だってさ、アタシさっくんに会うためにわざわざナリ高まで行ったんだよ? そんなの一度会っただけの人にしないし。そこんとこ、さっくんとしてはスペシャルな意味を感じ取ってくれてもいいと思うんだけど……ねっ?」
「えっと……」
「あぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!」
どうしたものかと思っている俺をよそに、竜崎が叫ぶ。
そして俺の肩を強く掴んだ。
「ふざけんじゃねぇよテメェ!!!!! テメェの分際で『常夏のプリンセス』とイチャイチャしてんじゃねぇ!! そんなの俺様が……俺様が……ぜってぇ許さねぇ!!!!」
「許さないって……よくわからないんだが、なんでそんなこと竜崎に言われなきゃいけないんだ?」
「……あ?」
俺の言葉に竜崎が明確に苛立つ。
「テメェ……調子乗ってやがんなァ? 『白銀の女神』にちっと気に入られて、俺たちを停学にして……いい気になってんじゃねぇぞ陰キャの分際でェッ!!!!」
竜崎の唾が顔にかかる。
「怒鳴るのやめてくれ。さっきから会話にもなってないし」
「ッ⁉ んだとォッ⁉⁉⁉」
キレる竜崎。
ふと、その後ろに怯えた様子で俺たちを見る小学生たちの姿が目に入った。
実は初めから気になっていた。
バスケコートを独占する竜崎とそれを怯えた様子で見る小学生。
そこから考えられることは一つしかない。
「というか竜崎、あの子たちはどうしたんだ? 見るからに竜崎があの子たちからコートを奪い取ったように見えるけど」
「話逸らすんじゃねぇよォ!!!! 俺様は今、『常夏のプリンセス』の話をしてェ……!!!!」
竜崎が喚き散らす。
すると小学生たちのうちの一人が、今にも泣きそうな声で言った。
「ぼくの……ボールが……」
かすかに聞こえた声。
しかし、俺にはちゃんと届いていた。
「そのボールも、あの子たちから奪い取ったのか?」
「だからァ!!! 俺様は今ッ!!!!!」
「――あの子たちから奪い取ったのか?」
「ッ!!!!!!」
一瞬、竜崎が怯む。
やがてハッと我に返ると、
「そ、そうだよ。あァ? なんか文句でもあんのかァ? 俺様によォ!」
「文句ではないけど、言いたい事ならある」
「んだとォ?」
「あの子たちにボールを返せ。そしてもし、本当にコートを勝手に独占してるなら――全部返せ」
「んだとォ⁉⁉」
またしても竜崎がキレる。
あぁ、めんどくさい。
こうも話が通じない奴を相手にするのは。
……けど、見過ごせない。
悲しそうにしているあの子たちが目に入ったのだから。
♦ ♦ ♦
※竜崎敦也視点
イライラが止まんねぇ!
なんでコイツが俺様の推しである『常夏のプリンセス』と一緒にいんだァ⁉
しかもさっくんとか呼ばれて、友達以上とか呼ばれやがってェ……!!!
しまいには俺様に注意だとォ⁉
『常夏のプリンセス』が隣にいるからってイキがりやがってェ……!!!
ふと、西海を見る。
相変わらず男を興奮させる、俺様の好みドンピシャの美少女。
そんな西海が今、俺の目の前にいる。
……ハッ!
ヒヒッwww
だったらァ……。
「返せ、かァ……いいぜぇ? ――ただ、一つ条件がある」
「条件?」
「そうだァ。お前がもし、俺様に“バスケの1on1で勝ったら”このガキ共に全部返して、謝罪までしてやるよォ」
「なるほど」
「だが、もしテメェが負けたら――西海、お前の連絡先をよこせ」
「……は? いやいや、それはおかしいだろ。無茶苦茶言ってる。第一、西海は関係……」
「うん、いいよー」
「「…………え?」」
思わず俺様も、雑魚と一緒に反応しちまう。
西海は相変わらず可愛い顔で微笑みながら言った。
「もしさっくんがキミに負けたら連絡先交換してあげる。それでいいよね?」
「ッ!!!!! ……ハッ! 面白れぇ女だぜぇ……!!!!!!」
最高の展開になってきたじゃねぇかァ……!
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
お知らせです!
新連載、
「無自覚ハイスペック男、ド田舎から都会の高校に転校したら大注目された」
連載開始しました!
よろしければこちらも併せてご覧ください!
→(https://ncode.syosetu.com/n5091ko/)




