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第8話 最初の一歩

食事が終わり、シュン君に昔の自分を重ねていたことに気づいたイレイスはシュン君と一緒に過ごすことを決める。

「着いたぞ」

少し古ぼけた扉をあけると、今日の朝も見た顔があった

「よ、イレイス様。朝ぶりだな」

元気な宿屋の店主の声が聞こえてくる。

「あぁ。今日も泊まらせてくれ」

「もちろんいいぜ...ん、その子は?」

店主にそう言われて下を向くと、シュン君は私の後ろに隠れていた。

「この子は...」

私はシュン君のことについて軽く説明した。

路地裏に倒れていたことや一緒に過ごすことになったことなど。しかし、記憶がないことや盗みをしたことなどは隠して話した。店主には無駄な心配はかけたくないからな。

「そういうことなら、って言いたいことだけど、一つ問題があるんだ」

「ん、問題とは」

「部屋が一つしか空いていないんだ」

「それぐらいなら問題ない。シュン君もいいよな」

「...はい!大丈夫です」

シュン君が下を俯きながら答えた。

少し耳が赤い気がする。熱でもあるのだろうか。



「ふぅ。今日は疲れたな」

窓の付近の椅子に座り、冷たい風を感じながら呟く。

本当に今日は疲れた。今日は情報収集が目的で外に出たけど、まさかこんなことになるとはな。

...でもいつもよりは楽しかった気がするな。

久しぶりの人とのご飯。よかったなぁ

「イレイスさん」

「ん」

声の方に顔を向けると服を着替えたシュン君が立っていた。服を買う時間がなかったから、私の私服を着させたが、やっぱりぶかぶかだな。

「あの...どこで寝れば?」

「ん?」

私は部屋を見渡す。部屋の中には1人用のベットが一つ置かれている。昨日、私が寝ていたベットだ。

「そういうことか。シュン君はそこのベットで寝ればいい。私は床に寝るから問題ない」

「あの...」

シュン君が椅子の近くに寄ってくる。

椅子に座っているせいか、シュン君の顔がよく見える。顔が全体的に赤いし、もじもししている。

「できれば...一緒に寝たいです」

「?!」

びっくりした。まさかそんなことを言ってくるとは思っていなかった。でもそうだよな。何日も1人で過ごしていたから人肌が恋しいのだろう。

「シュン君がいいなら、別にいいぞ」

「ありがとうございます!!」

何故、そんなに感謝するのだろうか。

ふと、シュン君の顔を見ると、笑顔だった。

しっかり見ると、かわいい顔しているな。

私は心の中でそう感じ、寝る準備をするのだった。




「お前のせいで...」

「あんなことをお前が言ったせいだぞ」


ごめんなさい。ごめんなさい。全身が冷たく感じる。

私のせいで、私の...


「おはようございます!!イレイスさん」

元気な声が聞こえ、目が覚める。

全身から汗が出ている。夢だったのか...

「おはよう、シュン君」

「大丈夫でしたか?なんか、苦しそうな顔をしていましたが」

夢にうなされていたのか、心配をかけたな。

「大丈夫だ。少し怖い夢を見ていただけだ」

体を覆っている布をどかし、ベットから出る。

今日から本格的に実行する予定だ。

「シュン君、昨日話したことを今日から実行しようと思う。」

「あれですね。わかりました!!」

昨日の夜、シュン君と寝ているときに、これからどうするかを話した。


主な概要はこうだ。

まず、王都から距離の離れた都のアストラルに移動する。ここを選んだ理由はいくつかあるが、1番の理由は私の顔が広がっていないことだ。私は主に王都に顔が広がっている。しかし逆に考えれば、他の町にはあまり広がっていない。名前は広がっているがそれに関しては問題ない。

「とりあえず宿屋を出て、王都の南門に移動しよう」

「わかりました」

部屋を片付けて、荷物を背負い私達は宿屋を出た。



「たくさん店がありましたね」

「そうだ。ここは商業地区だからな。」

私達は王都の南門で列に並びながら話す。

商業地区

王都の南側に位置しており、たくさんの店がある。ここから冒険者は装備や食料を買い冒険に出るのだ。

私達も例に漏れずシュン君の服や、アストラルに向かうまでの食料を買うのだった。シュン君の服は私にはわからないから店主に決めてもらった。

「この服、少し重いです」

「数日も経てば慣れるさ」

シュン君は体を動かしながら言う。

冒険者御用達の服屋だったせいか、シュン君の服も冒険者のような感じになった。しかも身を守るための短刀もつけている。


「次の方どうぞ」

鎧をつけた騎士が呼ぶ。行きにきたときの騎士の人とは違い背丈も小さく、弱そうに見える。

「冒険者カードを」

「どうぞ」

もし何か質問されても言い訳は考えてある。問題はないはずだ

「!?勇者のイレイス様ですか。どのような要件で」

やっぱり聞いてきた。しかし問題はない。しっかり考えているのだ。そうして私がとっさに話そうとするが

「実はな...」

「あっ、すみません。王から直接のクエストですかね。」

「えっ、はいそうです!」

何か勘違いしているようだ。都合がいい。

「それでは、がんばってください。」

騎士が冒険者カードを差し出し、それを受け取る

「あぁ失礼する」

無事に王都から出ることができた。

最後に騎士がシュン君を一瞬見ていた気がするが、大丈夫だろう。

「シュン君、行こうか」

「はい!」

こうして私達は、アストラルに向けて歩き始めた。

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