第7話 少年と勇者の道
「ふぅ」
コップに入っている葡萄酒を飲み干し、一息つく。
2人だからって、少し頼みすぎたのかもしれない。
「美味しかった...」
シュン君もジュースを飲み干して、呟く。
少しは元気になってくれたかな。
「シュン君」
「はい!?どうしましたか」
「シュン君さ、これからどうするの?」
「!...」
いきなり言われればそりゃ困惑するだろう。正直私もまだ決めきれていない。
「僕は...」
「私はさぁ、色々捨てて、王都から離れた町で自由に過ごそうと思ってるんだ」
「...」
シュン君の言葉を遮ってしまったが、なぜだか言葉が止まらない。
「今までできなかったことやしたかったこと、それを全部したいんだ。もちろん今よりはお金はなくなるとは思うし、大変だと思う」
...あぁそうか、なんで言葉が止まらないか分かった。
「それでね、最初は1人でのんびり過ごそうと思っていたんだ」
私は...シュン君に昔の自分を重ねていたんだ。
1人ぼっちで頼る人もいない。旅をしている最中も1人ぼっち。私はいつも孤独だった。多分私は諦めていた。私は1人で生きていくべきなんだって。
でも今なら言える気がする。
「でもね、1人で過ごすのはもう嫌なんだ。だからもしよければ...シュン君も一緒に行かないか」
「!?」
シュン君の顔が上がる。顔が赤くなっていた。
「え、いやだった?ごめん。いまの...」
「お願いします、、一緒に連れて行ってください」
今まで聞いたことのない一生懸命な声だった。
そしてシュン君の目から、涙が溢れた。しかし、最初に見た涙とは違い、、嬉しそうだった。安心もしたように感じられた。
「な、な、泣かないで。シュン君」
私は慌てて、シュン君の方に移動して横に座り、頭を撫でた。
「落ち着いた?シュン君」
「...うん」
「実はね、僕...」
そこからシュン君はゆっくり話始めた。私は一つ一つ丁寧に会釈しながら聞いた。
記憶を無くして、いきなりたくさんの人に見られ、罵倒され何もわからないまま、追い出されたこと。そこから王都の路地で何日も1人で過ごしていたこと。目があってもみんな見てみぬふりして、通り過ぎてしまったこと。
お腹が減り、食べ物を盗んで殴られたこと。
そして私に助けられたこと。
「イレイスさんも僕のことを見放してしまうと思っていたんだ。」
確かに、病院や移動中シュン君は元気がなかったようにも思える。
「それでイレイスさんに一緒に行こうと言われて、安心したんだ」
...やっぱり、そうだったんだ。シュン君も私も寂しかったんだ。
しばらく静けさが訪れる、しかし今までのとは違い、心地いい。
「行こうか、シュン君」
「うん」
私達はお金を払い、扉を開けて店を出る。
「とりあえず、宿屋に行こうか」
もう夜のはずなのに空は明るく見えた。
行きはただ2人で横に歩いた。でも帰りは違った。
「手、繋ごうか」
そして2人は横に並び,手を繋いで宿屋に向かうのだった。




