第6話 謎の少年
路地裏から助けを求める声が聞こえたイレイス。
行ってみるとそこには全身に怪我をした少年が倒れていた。周りの男達を振り払い、イレイスは少年の傷を直すために病院に向かうのだった...
痛い...痛い...誰か助けて。
「そこで...している!」
...声が聞こえる。若い女性の声だ。もしかしたら助けてくれるかもしれ...ない...
「は!」
目を覚ますと、今まで見たことのない天井があった。
ここはどこだ?体も少し痛いけどさっきよりは痛くない。僕は不思議に思い周りを見渡すと1人の若い女性が隣で座っていた。
「よかった。目が覚めたのだな」
この女性は誰だ?心配してくれているのか?
「すぐに職員を呼んでくる。少し待っていてくれ」
「あっ、ちょっと」
僕の呼びかけに答えず、彼女は部屋から飛び出していってしまった。
「もしかして彼女が助けてくれたのか」
誰もいないベットで僕は一言そう呟いた。
イレイス視点
よかった。無事目を覚ましてくれた。生きていることは分かっているが、それでも心配するのは当たり前だ。
「手を動かしてみてください」
「分かりました」
私の目の前には少年と白い服を着た女性が話している。少年の体が無事か今試しているようだ。
「イレイスさん、終わりましたよ」
「どうでしたか?」
「特に問題はありませんでした」
「そうですか。よかった」
少年は私と女性を交互にみている。
まだ起きたばかりで戸惑っているようだ。
「それでは失礼します」
「ありがとうございました」
白い服を着た女性が部屋から出ていく。
「...あの」
「えっ、はい」
少年がいきなり話しかけてきて、驚いてしまった。
「ここはどこで、あなたは誰ですか?」
それはそうか。いきなり知らない場所にきて、知らない女が隣にいるのだから。
「ここは王都の病院だよ。私の名はイレイスだ。冒険者をやっている」
本当は勇者だか、どうせ辞めるつもりだ。冒険者といっても問題はないだろう。
「冒険者...あなたが僕を助けてくれたのですか?」
「そうだ。君が路地裏で倒れていたのに気づいたからな」
「...ありがとうございました。でも僕は...」
「いい言わなくて、まだ子供なのだからしょうがない。お金は払っておいたからもう問題はない。」
「ありがとうございました」
少年が頭を下げて、感謝を伝えてきた。
多少は悪いことをしたが、あれぐらいで死にそうになるまで殴られるのはおかしいと思う。
「どういたしまして。それで君のことを教えてくれないか?」
「...わかりました。」
少年は色々なことを教えてくれた。
まず少年の名前はシュンといい、年齢は14歳だと言う。わたしよりも5歳も年下か...
しかし出身や、他の細かい情報は覚えておらず、気がついたら王都におり、たくさんの人に囲まれていたらしい。それで色々あって街に置いていかれたようだ。
「本当に、覚えてないのか」
「...はい」
「そうか...」
そこから私は色々と話した。
好きなことはあるか。から両親はどこにいるか。など
しかし何を聞いても、覚えてないやわからないと答える。しかもシュン君と話しているときに気づいたが、職業の種類や、この町のこと、魔王に支配されていたことも知らないようだ。
「そうか...記憶がないとなるとどうしようもないな」
「そうですか...」
しばらく無言の時間が流れた。
「ぐーー」
シュン君の方から音が聞こえてきた。最近聞いたことのある音でもある。
「...ご飯でも食べに行くか。私も今日は食べていないんだ。」
「...はい」
頬を少し赤らめ、恥ずかしそうにシュン君は答えた。
シュン君を連れ出し、食事を取れる場所を探す。
「何か食べたいものはあるか?」
「...ない」
「そうか..」
困ったことになったな。あまり小さい子の関わり方を知らないんだ。
2人で歩きながら、家の光が目立つ街の中を歩く。
とりあえず、ここでいいか。
2人の目の前には木で作られた平屋があった。冒険者が多いが、色々な食べ物はある。ここなら食べ物には困らないだろう。
「失礼する。2人だか大丈夫か」
「2人か。適当な席にでも座ってくれ」
「わかった。」
夜だからか、たくさんの冒険者が酒や肉を食っている。少し騒がしいがこれぐらいがちょうどいいだろう。
シュン君を座らせ、向かい合うように座る。
何が好きかわからないから適当に頼もう。
「すみませんー肉の盛り合わせとスープ、葡萄酒とジュースをくれ。」
「はいよー」
男の元気な声が聞こえてくる。
シュン君は周りを見渡している。
「落ち着かないか?」
「大丈夫です」
「...」
どうすればいいんだ。小さい子と話す機会なんて今までなかったから何を話せばいいかわからん。
早く料理きてくれ〜
「あの、イレイスさん?」
「あぁなんだ」
「あの...イレイスさんについて教えてくれませんか」
「え、私のこと?」
「はい」
そういえば私のことについて、ほとんど話していなかったな。
「いいよ」
私は自分のことについて、シュン君に伝えた。
冒険者をやっていて、用事があって王都にきたこと。
今まで忙しくて、のんびり生活を送りたいということ。それで悩んでいることなど。
「これぐらいかな」
「ありがとうございます」
あっ食事がきた。
私達の前にご飯や飲み物が置かれていく。
「冷めないうちに食べようか」
私達は目の前に置かれた食事を食べ始めた。