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第51話 稽古

「頑張ってイレイスさん!」

「フェルトさんも頑張って!」

庭に2人が木刀を持って向かいながら対峙する。

なんで私はお父さんと1体1しているのだろうか。

確か、お母さんのあの言葉で......


少し時間は遡り、私がお父さんに誘われて稽古をすることになり、その準備をしていたとき。

「あれ、私の服どこだっけ...これかな」

「あ、イレイスさん。どっか行くのですか?」

カバンの中から服を探していると後ろの方からエプロンをつけているシュン君が出てきた。

「父さんに誘われてな、稽古をすることになったからその服を探していてな」

「稽古ですか!僕も見たいです」

「でも、シュン君も今なんかしている最中なんだろ?」

「そうですね。今イレイスさんのお母さんにシルフと一緒に料理を学んでいたんですけど、キリがいいところなので大丈夫だと思います。あっ、せっかくならシルフと一緒に見てもいいですか?シルフも見たいだろうし」

そんなに見たいのだろうか。でもシュン君が見たいと言うならいいだろう。

「いいけど、ちゃんと母さんにも言うんだぞ」

「はい!」

そう言うとシュン君は部屋を勢いよく飛び出して行った。私も早く準備しないとな。


太陽の光が庭の隅にある雪を照らしており、綺麗な青空と風が吹いている。そこで私と父さんは対面している。

「懐かしいな」

「.....そうだな。お前は昔はよくあそこの木に木刀を打ち付けていたな」

「それは、父さんが木を倒せるようになれって言ったからじゃないか」

「そうだっけな。」

木刀を持っている父さんを見るのは久しぶりだな。でも立ち方や剣の持ち方、変わっていないな。

「まぁそろそろ雑談は終わりにして始めようか。お前の仲間も見ているだろうし」

「分かった。いつでも準備は出来ている」

縁側の方を見ていると母さんとシルフとシュン君がお茶を飲みながら雑談をしていた。稽古なんか見て何が楽しいのだろうか。

「それじゃあ始めよう」

こうして久しぶりの父さんとの稽古が始まった。

まずは素振りをしてその後に軽く、剣を打ち合う。

木の板を何十枚も重ねてまっすぐ切ったりもした。昔は数枚しか切れなかったな。


「よし。一旦終わりにしよう」

「はい!ありがとうございました」

一礼して母さんからタオルをもらい汗を拭きながらシュン君達の方に行き座った。

「お疲れ様でした。イレイスさん」

「良い太刀筋でしたよ」

「ありがとう。2人とも」

「フェルトさんもお疲れ様でした。久しぶりに楽しそうでしたね」

「.....うるせぇ」

大きく深呼吸をして縁側に座り、外を眺める。

昔よりも所々、補強されていたり張り替えられている所がある。でも大体は昔と一緒のように見える。

そうしてお茶を飲んで休憩をしていると母さんが口を開いた。

「久しぶりに2人の稽古を見たわ。昔はレイちゃんがフェルトさんに負けて泣きついてきてたな。今はどっちが強いんだろうな〜」

「やめてくれよ、母さん。それに今も父さんの方が強いと思うよ」

「いや、イレイス様も昔よりも強くなったんですから勝てますよ!」

「シルフのいい通りですよ」

「2人とも言い過ぎだよ。ね、父さん?」

そう言って父さんを見ると木刀を持ち、立ち上がっていた。あっこのパターンは......

「イレイス。準備が出来たら一回本気でやろうか」

ですよね。父さんはこう見えて戦闘狂なんだよな。

「わ、分かりました。手加減してくださいね」

そうして私もお茶を飲み干した後、木刀を持って父さんと再度対面した。



「それじゃあレンナ。合図をしてくれ」

「はい。分かりましたよ」

そう言って母さんは懐から一枚のコインを取り出して指に乗せた。これが昔からの我が家のやり方だ。 

「そのコインは?」

「これでね戦いの合図をするの。投げて地面に落ちたら始まりってこと」

「そうなんですか!」

地面に落ちた瞬間のキンって音を聞いて一騎討ちのときはよくやっていたな。

「イレイスも準備出来たな?」

「.....はい」

大きく深呼吸をして、木刀を持ち対面する。どんな状況でも対処できるように。

「それじゃあ行くぞ!」

父さんのその声に反応して母さんが指でコインを弾いて上空に飛ばした。私も神経を一点に注いで音がするのを待った。そしてそのときは一瞬できた。


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