第5話 勇者、世界を知る
勇者をやめようと思ったイレイスは、他の職業について勉強するために、図書館を目指す。
王都、南地区
イレイスは扉を開いた
「ここが、王都第一図書館か。相変わらず広いな」
第一図書館は王都の中でも広く、様々な文献がある。
2階だてになっており、背丈の何倍もある本棚には、たくさんの本がある。
「職業についての本はここだったかな」
イレイスは背を伸ばして、1冊の本を取り出した。
「これにしようかな」
イレイスは本を手に持ち、机の上に置き読み始めた。
「職業全集」 著者 ブルク・ノール
冒険者:全職業の中でも1番多い職業
冒険者ギルドに登録することでなることができる。
ランク制度によってクエストの難易度が変わる
ランクが上がるほど、特典がつく。
商人:商人ギルドに登録することでなることができる。
旅をしながら販売する人や、町に店を置き販売する人などがいる。武器屋や食物屋、魔法用具店などが該当する。
農家:野菜、果物などを生産し、商人に売る。
直接商人に売る場合や商人ギルドに売る場合がある。商人ギルドに売る場合、税がかかるがまとめて売ることができる。
騎士:町の護衛や警備が主な仕事である。
年2回の騎士選抜試験に合格した場合になることができる。剣術や魔術を以下の条件以上に使える必要がある......
数時間後
「ふぅ。一通り読み終わったかな。」
本をとじて、窓の方を見る。
図書館の窓から夕日が差し込んでいる。
「なんとなく知っていたけど、勇者についてはのってないか...」
勇者は特別な方法でしかなることができず、一般の職業の枠を超えている。
そもそも勇者というのは2つの場合がある。
1つ目は冒険者上がりの勇者。ランク5の中でもトップクラスの実力の持ち主に、王から指名される。私もこっちの流れで勇者になった。
2つ目は異世界から呼び出される勇者だ。
主にこっちの方が割合は多い。異世界から来る勇者は身体能力や魔法適正が高いらしい。王も言っていだが、冒険者上がりの勇者よりも異世界から来る勇者の方が期待されるのは仕方ないかもしれない。
でもこんな扱いは...
「やめよう。もう終わったことだ...」
席を立ち、本を元の場所に戻す。
そして図書館の扉を開けて、外に出る
「もう、こんな時間か。お腹すいたな。」
自分が思っていた以上に時間が経っているらしい。
朝も昼もまともに食べてない。お腹から音が聞こえる気がする。
「ご飯でも、食べに行くか」
人混みを避けながら、店を探しに街を散策する。
「い...たい」
「ごめんなさい、ごめんなさい...」
ん?声が聞こえる。
もちろん周りにはたくさんの人がいる。声は聞こえるのはおかしくないのだが...
「ゆるして..ごめんなさい...」
やっぱり...気のせいじゃない。誰かが、苦しんでいる。私は街を見渡し、耳をすませた。
「今日のご飯どうしようね?」
「今なら半分の値段で売れるよ!!」
「早く、宿屋みつけねぇとな」
違う、この声じゃない。もっと若い男性の声だった。
「これをください」
「だれ...か助けて」
「おい、黙れクソガキ」
!?いた。聞こえた。路地裏か!
私は人混みを避けながら横の細い路地を目指して移動する。声の聞こえ方的に、何人か人がいる。それも怖そうな男性の声だ。
「痛い、痛い、たすけて、だれか」
声が聞こえると同時に、少し血の匂いがしてくる。
「まずい...間に合ってくれ」
私は細い路地を走り抜ける。血の匂いと声に集中する
右に左に路地を曲がる。
「近い!」
暗い路地を曲がると、そこには数人の人がいた。
「おい、クソガキ」
「早く返せ、盗人が」
「ごめんなさい...」
体ががっしりとし、怖そうな男達が1人の少年を殴っていた。少年は涙を流していた。全身には血やアザが至る所についている。このまま行けば死ぬだろう。
「お前ら、何をしている!」
私は無意識に剣を抜き、男達に向ける
「あん、なんだこの女は」
「あの姿...冒険者か?」
男達がこちらを一斉に見る
「子供を、大人が群れて暴力していいと思っているのか」
「あん?このガキが悪いんだぞ」
「そうだ、そうだ。このガキが商品を盗んだから、罰を与えてるんだよ」
「それにしてはやるすぎだ!相手は子供なんだぞ」
いくらなんでも盗人だからといって、これはやりすぎだ。このままじゃ死んでしまう。
「この女、生意気だな。」
「もしかして、このガキの仲間なんじゃないですか」
「それならこの女にも罰を与えないとな」
ダメだ。話が通じない...これぐらいの男達なら余裕で倒せるだろう。それでもいいのだが、問題になるのは困るな。しょうがない
「私は冒険者ランク5 、イレイスだ!」
「は?この女がランク5?舐めてるのか」
「嫌、でもあのカードの金色はランク5の証だ。それにイレイスってまさか、あのイレイスか...」
男達が顔を見合わせ、困惑している。
「チッ、しゃあないな」
「この女に感謝するんだな。クソガキが」
私は男達に金貨を投げ渡す。
「それを受け取れ。これぐらいあるなら足りるだろう」
「...わかった。受け取ろう。」
男達が横を通り過ぎて行く。私は倒れている少年の近くによる。
「大丈夫か少年」
少年は反応しない。
「!?」
すぐに脈を確認する。少年の胸に耳を当てる。
「......よかった。気絶しているだけか」
しっかり脈もある。魔法で傷を直してあげたいが、私は魔法は得意ではないんだ。
「とりあえず、病院に行くか」
こうして私は気絶している少年を抱き抱えて、病院に向かったのだった。