第4話 勇者の決意
何時間、経ったのだろうか。
太陽はもうほとんど沈んでいる。王との謁見の後から気力が沸かない。私は今、王都の宿屋の2階の個室にいる。もう何時間もベットで倒れている。
「はぁ。これからどうしよう...」
魔王を討伐したら終わりだと思ってた。それなのに、いきなりそれよりも上の存在がいるなんて知らなかった。いや知れるはずもない。この情報は王とその側近、優秀な勇者しか知らなかったのだから。
私は頭についている花を思い出し、天井に掲げる。
「昔の生活に戻りたい...」
彼女は昔の自分を思い浮かべた。
勇者になる前、イレイスは冒険者をやっていた。
最初の頃はうまくいかないことが多かったけど、それでも毎日が楽しかった。冒険者ギルドで仲間を募集してダンジョンに潜ったり、人助けをしたこともあった。しかし、ダンジョンでの事件や王に呼ばれたことで、人生が変わった。
私は勇者になったのだ。
彼女は王や配下の言葉を頭の中で反芻する。
「期待してない」「貴様よりも優秀な勇者はいる」
彼女は知っていた。自分が他の勇者よりも弱いことを。でも諦めずに努力した。何年も体を鍛え、剣術も極めた。そのおかげで魔王も倒すことができた。もちろん途中で何度も諦めそうになったこともある。
でもその度に、自分を鼓舞した。
しかし今回は流石にきつい。
「勇者......やめよう」
天井に掲げた花を胸におろして、イレイスは決意した。
「勇者をやめて、自由にのんびり過ごそう」
彼女は呟き、瞼を閉じて眠りについた。
「んん」
窓の隙間からの光に気づき、彼女は起きた。
窓を開け、服を着替えて、イレイスは1階に降りる。
「おはよう、イレイス様」
宿屋の店主である中年の男が元気な声で話しかける
「おはようございます。店主さん」
「ずいぶん顔色がよくなったじゃないか」
「そうですかね?」
そんなに昨日の顔はやばかったのだろうか。
自分では特に感じないが...まぁそうだったのだろう。
「これ、宿代です」
「おう...ちょうどだな。しっかり受け取ったぜ」
「それでは、ありがとうございました」
イレイスは宿の外に向かった。
「綺麗だな」
昨日と変わらない景色なのに、昨日よりも明るく見える。心が軽い。しかし一つ疑問が浮かんだ。
「どうやって勇者ってやめられるのだろうか」
彼女は街並みを歩きながら考える。
街には相変わらずたくさんの人がいる。
夫婦で開いていると思われる、果物を売ってる商店。
獣の姿をし、装備を着ている冒険者。
仲間と一緒にダンジョンに向かっている冒険者もいる
「そういえば、私あまり冒険者以外のこと、知らないな」
彼女は昔から冒険者に憧れており、他のことについて十分な勉強はしていなかった。
「...まずは他の職業についてもっと知ろうかな」
彼女は王都の図書館を目指して、街をかけだした。