第33話 戦いの報酬
「すいません。リレイさんはいますか?」
「はい!ミリスさんですね。部屋にいますのでついてきてください」
このやりとりも何回目だろうか。森での出来事から何回も呼ばれている。まぁリレイさんもギルドマスターだから、後処理があるのだろう。
「失礼する」
扉を開けるといつも通り椅子に座って作業をしている男がいた。
「お!来たか。イレイスさん」
「約束したからな」
「それに坊主もいるじゃないか。いきなり倒れたときは心配したが、もう問題はなさそうだな」
「はい!ご心配をかけました」
「それで.....その獣人が例の奴か。それにしてもその服...」
「そうだ。服に関しては気にしないでくれ。」
「あのときは申し訳ございませんでした。リレイ様。改めて私の名前はシルフです。シュン様とイレイス様に仕えております。」
シルフが丁寧に挨拶をしている。それをみてリレイさんがびっくりした様子でシルフを見ていた。
「......本当に変わったな。一応イレイスさんからは聞いたが、まさかここまでとは」
前回来たときにリレイさんにはシルフをどうするかや、変化を教えていたが半信半疑だった。
「知っていると思うが一応な。俺の名前はリレイソンだ。リレイと呼んでくれ。様付けはやめてくれ、むずむずする」
「わかりました!」
「立ち話もあれだ。座ってくれ。」
「ありがとう」
無事、シルフの自己紹介も終えたし、本題に行こうじゃないか。
「それで報酬の話だ。坊主もシルフも聞いとけよ」
「はい!」
「まず、ランクの上昇だ。これからはランク3として頑張って欲しい。本当はランク1でもいいんだかな。イレイスさんに拒否されちまったからな」
そう、リレイさんの言う通り最初はランク1にしようとしていたらしい。でもそれでは私の正体がバレる可能性が上がるので拒否した。そもそもこんな早さでランク3もおかしいけどな。
「でもランクをあげたいときは言ってくれ。いつでもあげよう。それで次はシルフに関してだ。」
リレイさんの声色が低くなる。顔も厳しそうだ。
「ギルドとしては、シルフは殺さないといけない。人に危害を与えたわけだしな」
「え!絶対ダメですよ。僕は嫌です」
シュン君がシルフの方に手を伸ばして嫌がっている。
あっシルフがまたマーキングしてる。こういう状況なのに余裕あるな。
「落ち着け坊主。殺す予定ならこんな場所に呼ばないし、自己紹介なんてしない。」
「どういうことは...」
「あぁ。シルフは生かすことにした。でも条件付きでな。」
「条件?」
「そうだ。まず必ずシルフを坊主かイレイスさんの近くに置くこと。そして一般人に危害を与えないことだ。」
「シルフ、出来るよね?」
「もちろんです!主様の近くにずっっっといますね」
「抱きついてこないでよ〜」
本来ならこんな簡単に生かすことなんて出来ないはずなんだよな。色々面倒なことがあっただろうに。
私達のために相当頑張ったんだろう。
「......その様子なら大丈夫そうだ。てか、変わりすぎだろ。どんだけ怖かったんだイレイスさん...」
リレイさんが私の方を見ながら少し震えている。そんな怖い顔した記憶がないんだかな。少しやりすぎたかもだけど。
「とりあえずこれがギルドの意向だ。情報も統制したから、話が広まることはない」
流石だな。私のことについてもしっかり手を回してある。ギルドマスターに就くだけはある。
「言い忘れていたが、お前達の家の近くの森は使っていい。広範囲を開拓するのはダメだが、家の付近の森なら好きなように使っていい。」
おお!それは聞いていなかったな。でもそんな上手い話は世の中にはないんだよな。
「.....その代わり森に魔物が発生したときは町に来ないようにして欲しいと」
「...いや〜やっぱイレイスさんにはバレてるよな。
でもいい条件だろ」
確かにあの森を使えるのはありがたいし、魔物に関してもシュン君の鍛錬になる。
「受け入れよう」
「ひゅー流石だぜ」
リレイさんは相変わらず人を使うのが得意だな。いつか詐欺師にでもなりそうだ。
「俺からは以上だ。なんか質問あるか?....なさそうだな」
こうして私達は解散して帰路についた。帰り際に服について再度問われたが、シルフが選んだと言うとびっくりしだが納得したようだ。
「良かったですね!使える土地が増えましたよ」
「そうだな。何に使うか考えないとな」
とそこでシルフが話しかけてきた。真剣な顔をしている。
「あの、イレイス様」
「どうした?そんなにかしこまって」
「私も主様と一緒に稽古して欲しいです!!」
!?まさかそんなことを言うとは思っていなかった。
「何故いきなりそんなことを」
「それは...本気のイレイス様といつか戦いたいということと、もう一つは、あの顔をもう一度♡」
まさか、あのときの発言を覚えていたのか。あんなに瀕死だったのに。てかあの顔って......
「いいけど、本気では戦わないぞ。シュン君に怒られてしまうからな」
「なら本気のイレイス様と戦えるようになるためにがんばります!」
「ぼっ僕もイレイスさんを守れるようにがんばります!」
シュン君とシルフがグータッチをしている。まぁ2人で稽古をしたほうが、お互いに高めあえるからいいかな。
「わかった!なら明日から頑張るぞ」
「はい!」
こうして初めてのシルフとの買い物は終わったのだった。シルフの服に関してはメイド服を2着買ったから使い回すのだろう。一応私服も用意しておかないとなぁ




